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今回お届けするのは、アメリカ発の地獄のサクセスストーリー二本立てだ。『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』のアベルと、『ナイトクローラー』のルイス。ふたりの主人公の境遇や信条はまるで異なるが、それぞれの歩みはアメリカンドリームを巡る闇を鋭くえぐり出していく。

「A Most Violent Year」という、印象的な原題をもつ『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』。舞台は1981年のニューヨーク。ヒスパニック移民の実業家アベルは、オイル事業での大成功一歩手前だったが、度重なるトラブルの連続により、破産の寸前まで転落していく。必至に立ち上がろうとするアベルだが、崩れゆく成功のヴィジョンの影から、彼が今まで見ようとしなかった非情な現実が露呈されていく。

俊英J・C・チャンダー監督は、歴史上、最も犯罪発生率が高かったという81年のNY(前年の12月にはこの都市でジョン・レノンが殺害されている)で苦闘する理想主義の青年の姿を通して、【アメリカンドリーム】神話の内実を暴き出していく。

終盤、理想が潰えた先に生き残ることを選ぶアベルの姿には、様々な矛盾や問題を抱えながらも世界一の大国であろうとする、アメリカという国のありかたそのものが重なって見える。クールで乾いたスタイルが全編に貫かれているが、苦渋と逡巡に満ちたアベルの表情には、監督自身の静かな怒りと諦念が込められているように思う。

夢と現実の狭間に苦しむアベルと反対に、現実を強引に自分の夢そのものに変えていってしまうのが『ナイトクローラー』のルイスだ。職にあぶれた青年・ルイスは偶然知った報道パパラッチの世界に自らの天職を見出し、過激な映像のためにLAの夜を徘徊していく。狙ったスクープのためなら手段を選ばないルイスの行動はどんどんエスカレートし、倫理的な一線を軽々と越えていく。

自分の出世のために他人を蹴落とし、利用し尽くしても罪の呵責を感じず、お咎めもないどころか賞賛されてしまうルイス。彼にとっての理想の【アメリカンドリーム】をあっけらかんと実現していく姿には、呆れを通り越して感動すら覚えてしまう。

不謹慎の極みなのに思わず引き込まれてしまうプロットの面白さもさることながら、本作の見所はやはりルイス役のジェイク・ギレンホールの圧倒的怪演だろう。独得の人間離れした狂気を放つ相貌から目が離せない。この役づくりのために撮影の2か月前から昼夜逆転の生活と12キロの減量を自らに課したというのも納得の大変貌ぶりだ。

知られざる大都市のナイトカルチャーを通してアメリカの闇を撃つ本作は、現代版『タクシードライバー』であり、『時計じかけのオレンジ』にも通じるポップな毒に満ちた寓話である。

(ルー)

アメリカン・ドリーマー 理想の代償
A Most Violent Year
(2015年 アメリカ 125分 DCP PG12 シネスコ) pic 2016年3月5日から3月11日まで上映 ■監督・製作・脚本 J・C・チャンダー
■製作 ニール・ドッドソン/アナ・ゲルブ
■撮影 ブラッドフォード・ヤング
■美術 ジョン・ゴールドスミス
■編集 ロン・パテイン
■音楽 アレクサンダー・イーバート

■出演 オスカー・アイザック/ジェシカ・チャステイン/デヴィッド・オイェロウォ/アレッサンドロ・ニヴォラ/アルバート・ブルックス

■2014年ナショナル・ボード・オブ・レビュー作品賞・主演男優賞・助演女優賞受賞/ゴールデン・グローブ賞助演女優賞ノミネート ほか多数受賞、ノミネート

成功こそが正義なのか?
信じた夢を追う先に、男が手にし、失ったものとは――?

pic1981年、NY。犯罪と暴力にまみれたこの街で、クリーンなビジネスを信条にオイルカンパニーを築きあげた移民のアベルとその妻アナ。しかし、事業拡大のための土地購入の頭金として全財産を投入した直後、彼の成功を阻止しようとする何者かの手によって、積荷のオイルの強奪、脱税の嫌疑、家族へ脅威…次々にトラブルがのしかかる。悪い噂は一気に広まり、ついに銀行からの融資を断られ、信頼していた妻との間にも亀裂が。 刻一刻と破産が迫るなか、孤立無援のアベルはトラブル解決のために奔走する。期限はわずか30日――。

登る時は一歩ずつ、落ちる時は一瞬――
ハリウッドの次世代の旗手が放つ
緊迫の社会派ヒューマンドラマ!

picビジネスの現場で経営者が強いられる壮絶な危機を、圧倒的クオリティと息もつかせぬ緊迫感で描き、本年度映画賞を席巻した本作。 監督は『オール・イズ・ロスト〜最後の手紙〜』のJ・C・チャンダー監督。主演は『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名も無き男の歌』や、『スター・ウォーズ』新シリーズへの出演でも注目される、オスカー・アイザック。さらに、アカデミー賞に2度ノミネートされた『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステイン、『グローリー/明日への行進』のデヴィッド・オイェロウォが競演。その実力への評価が今まさに最高潮を迎える才能たちが集結し、40もの映画賞にノミネートされるという栄誉を分かち合った。

成功一歩手前で奈落の底に突き落とされ、必死に這い上がろうとする青年実業家――アメリカン・ドリームを叶えようとした「正しい道を行くこと」が信条の男に迫られる苦渋の選択とは。成功か破滅か、白か黒か、緊迫の駆け引きとリアルな葛藤が、観る者に「本当の成功とは何か?」を突きつける社会派ヒューマンドラマの傑作が生まれた。

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ナイトクローラー
NIGHTCRAWLER
(2014年 アメリカ 118分 DCP シネスコ)
pic 2016年3月5日から3月11日まで上映 ■監督・脚本 ダン・ギルロイ
■製作 ジェニファー・フォックス/トニー・ギルロイ/ジェイク・ギレンホール/デヴィッド・ランカスター/マイケル・リトヴァク
■撮影 ロバート・エルスウィット
■プロダクション・デザイン ケヴィン・カヴァナー
■編集 ジョン・ギルロイ
■音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード

■出演 ジェイク・ギレンホール/レネ・ルッソ/リズ・アーメッド/ビル・パクストン

■2014年アカデミー賞脚本賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞男優賞ノミネート/英国アカデミー賞主演男優賞ほか3部門ノミネート/インディペンデント・スピリット賞脚本賞・第一回作品賞受賞 ほか多数受賞、ノミネート

他人の<破滅>の瞬間に、
カメラを持って現れる――

pic学歴もコネもなく、仕事にあぶれたルーは、ある日、事故現場を通りかかり、テレビ局に悲惨な映像を売るカメラマンたちの存在を知る。さっそくビデオカメラを手に入れたルーは<ナイトクローラー>となり、夜のL.A.を這いまわる。良心の呵責など1秒たりとも感じないルーの過激な映像は高く売れ評価されるが、高視聴率を狙うテレビ局の要求はさらにエスカレートしていき、遂にルーは一線を超える――。

全米興行収入No.1!
恐るべき怪演に絶賛の悲鳴!
視聴率至上主義が生んだ戦慄の報道パパラッチ

pic L.A.では街が眠りにつく間、傍受した警察無線から情報を得るや、猛スピードで車を走らせ、事件・事故現場に駆け付けて被害者にカメラを向ける者たちがいる。通称<ナイトクローラー>だ。彼らは死臭を求めるハイエナのごとく貪欲に、刺激的な映像を求めて夜な夜な街を這いまわる。そして手に入れた映像をテレビ局に売り捌き、カネを得る。本作は、視聴率のために倫理をも踏み外した映像を欲しがるテレビ業界の裏側と、それを非難しながらも求める現代社会の闇に迫った一作だ。

主演は『ブロークバック・マウンテン』でアカデミー賞にノミネートされたジェイク・ギレンホール。我々の隣にもいるごく普通の男に潜む底なしの狂気を、恐ろしくも見事に演じきる。監督・脚本は本作が監督デビュー作となるダン・ギルロイ。全米No.1映画評サイト【ロッテン・トマト】で驚異の満足度95%を叩き出した映画史上かつてない“戦慄のハッピーエンド”を体験せよ!

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