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みなさん、今年の夏はどんな映画を見て過ごしましたか?
9月に入って、夏の目玉映画の盛り上がりも落ち着いてきた今日この頃。
ここでじっくりとアニメーション作品なんていかがでしょうか。
それもただのアニメ作品じゃございません。
今年もたくさんのアニメーション映画が公開されていますが、
今回は、その中でも一際異彩を放ったコマ撮りアニメーション二本立てを上映します!

一つはオーストラリアに住む8歳の女の子と、
アメリカに住む中年男との20年以上にも渡る文通のお話。
住んでいる国も、年齢も、性別も違う二人のなんとも不思議なカンケイですが、
なんと監督自身の実体験に基づいて描かれているというから驚きです!
作品の二人は、他人から見ても決して幸せとはいえない日々を送り、それぞれに「孤独」を抱えています。
お互いの孤独を慰めあうのではなく、相手の文章に一喜一憂し、
ただ自分のできる限りの範囲で相手のことを思う二人。その不器用さが微笑ましく、痛々しくもあります。
現代のネット社会に拡がっているようなバーチャルな関係ではない、
相手から届く「手紙」という物質のリアルな重みや、二人の壮絶な境遇を、
クレイアニメという温かさが包み込んでいます。

*ちなみにオーストラリアからアメリカにエアメールを出すと、2.35ドル=約200円かかるそうです。(参考:Australia Post)
8歳の女の子にはギリギリのお値段ですかね。

もう一つは、『ダージリン急行』のウェス・アンダーソン監督が送る、底抜けに愉快なパペットアニメーション。
原作は「チョコレート工場の秘密」などで知られる異才作家、ロアルド・ダールの「すばらしき父さん狐」。
監督はこどもの頃に初めて原作を読んだ瞬間、恋に落ち、いつか映画化したいと願い続けていたそう。

その気合いの入りようは、作品のそこかしこに散りばめられているのですが、
何と言っても登場するキャラクターみんなが、最高にファンタスティックなんです!
監督の作品と言えば、セリフのやりとりに漂う独特な空気感や軽妙な動き、
役者の表情で物語を語る部分が多いですが、それはコマ撮りアニメになっても活きています。
手作りの素朴さと妙な野性味を持った人形は、アップのシーンでも全く見劣りしない精巧さで、
動物たち一人一人(一匹一匹?)が実に魅力的です。お気に入りの動物を見つけるのも楽しみのひとつです。
(個人的にはMr.FOXの息子アッシュがお気に入りです♪)

picそんな動物たちに命を吹き込んだ声優陣も、これでもかというほど豪華。
主人公のMr.FOXにはオトナの色気たっぷりのジョージ・クルーニー、その妻役にはメリル・ストリープ、ウェス・アンダーソン映画の常連ビル・マーレイに、「アンチクライスト」で怪演したウィリアム・デフォーなど…。いやー、実にファンタスティックなキャストです。

通常のアニメと違い、コマ撮りアニメーションは映像に映る全てを作らなくてはいけません。全くのゼロの状態から作品の世界をスタッフの手で創り出して、それからやっと一コマ一コマ撮影していくのだから、その努力と情熱はもはや未知の領域でしょう。キャラクターたちの生きている街や生活風景、当然のように部屋に置かれた小物に至る全てに作り手のセンスと愛情を感じずにはいられません。
実写ともアニメとも一味違う存在感と説得力は、余計な疑念や違和感も取っ払って
ファンタスティックな世界に連れて行ってくれること間違いなし!

(おまる)

メアリー&マックス
MARY AND MAX
(2008年 オーストラリア 94分 ビスタ/SR) 2011年9月10日から9月16日まで上映 ■監督・脚本・プロダクションデザイン アダム・エリオット
■撮影 ジェラルド・トンプソン

■声の出演 トニ・コレット/フィリップ・シーモア・ホフマン/エリック・バナ

■2009年アヌシー国際アニメーション映画祭最優秀長編映画賞/2009年ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門最優秀長編映画賞/2009年オタワ国際アニメーション映画祭グランプリ(最優秀長編映画賞)

ある日、しあわせの手紙がやってきた――
これは、まだ携帯もネットもメールも当たり前ではない頃のお話

picオーストラリア・メルボルン在住の8歳の少女メアリーは、シェリー酒中毒で万引きに夢中な母親と、死んだ鳥で剥製を作るのが趣味の父親と暮らす空想好きな女の子。ある日メアリーは、アメリカに住む“誰かさん”に手紙を送ろうと思い立つ。分厚い電話帳からひときわ風変わりな名前の“マックス・ホロウィッツさん”を選び出し、さっそく鉛筆を走らせた。

一方、アメリカ・ニューヨークで暮らす44歳のマックスは、肥満体の中年男。社会にうまくなじめず、極端に人づきあいを苦手とする彼は、大都会で一人孤独な日々を送っていた。そんな彼のもとに、はるかオーストラリアから一通の手紙が届く。それは、メアリーとマックスの、2つの大陸をまたいだ20年以上に渡る深い交流のはじまりだった…。

年齢、性別、大陸を超えて繋がれた20年にわたる“親愛なる絆”
アカデミー賞受賞監督が贈る、珠玉のクレイ・アニメーション

2004年の『ハーヴィー・クランペット』でアカデミー賞短編アニメーション部門のオスカーをを獲得したアダム・エリオット。監督自身の実体験に基づいた『メアリー&マックス』は、その独特で強力な世界観はこれまでのアニメでは成し得なかった新鮮で特別な感動をもたらしてくれる。本作は製作費に約6億円をかけ、コマ撮りで1日にわずか4秒の撮影により完成までに5年を費やした。撮影のために作られた人形は212体、ミニチュアの道具は475個にものぼる。これらはすべて手作業で制作されており、多くの優秀なスタッフの途方もない繊細さと粘り強さで完成した究極のハンドメイドアニメである。

そんな情熱の詰まった作品に豪華キャストが集結した。空想好きの少女から自立した女性へと成長をとげる主人公メアリーに扮したのは、『リトル・ミス・サンシャイン』のトニ・コレット。大都会で孤独に暮らす中年男マックスには、『カポーティ』で数々の賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマンが初声優に挑戦。また、メアリーが憧れを抱く男性ダミアンをエリック・バナが演じた。豪華俳優陣が息を吹き込む個性あふれるキャラクターが織りなす本作は、人生におけるたくさんの驚きや悲しみや喜び、そして深い感動を探る旅へと私たちをいざなってくれるだろう。


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ファンタスティック Mr.FOX
FANTASTIC MR. FOX
(2009年 アメリカ/イギリス 87分 ビスタ/SRD) 2011年9月10日から9月16日まで上映 ■監督・製作・脚本 ウェス・アンダーソン
■原作 ロアルド・ダール「すばらしき父さん狐」(評論社刊)
■撮影 トリスタン・オリヴァー
■音楽 アレクサンドル・デスプラ

■出演 ジョージ・クルーニー/メリル・ストリープ/ジェイソン・シュワルツマン/ビル・マーレイ/ウィレム・デフォー/オーウェン・ウィルソン

■第82回アカデミー賞ノミネート(長編アニメ映画賞・作曲賞)/第81回ナショナル・ボード・オブ・レビュー特別映画製作作業績受賞/第61回ゴールデングローブ賞アニメ映画賞ノミネート/第75回ニューヨーク映画批評家協会賞最優秀男優賞

ファンタスティックに、生き残る――。

pic野生のキツネMr.FOXは以前は盗みをして暮らしていたが、妻のMrs.FOXとちょっと変わり者の息子アッシュのために足を洗い、今は新聞記者として働く日々。けれど穴暮らしの質素な生活に飽き始めていた彼は、もっといい暮らしを求めて丘の家を購入することに。しかし丘の向こうには、意地の悪い3人の農場主が住んでいた。仲間の忠告を無視して憧れの家に引っ越し、人間に近づいたMr.FOXは、野生の本能が目覚めてしまう。

人間たちの飼育場から昔のように獲物を盗むことに熱をあげるようになったMr.FOX。一方日々盗みに入られる人間たちの怒りは頂点に達し、ついに彼らはトラクターを使って根こそぎ丘を掘り返し始めた!一家の主として“ファンタスティック”に生きたいMr.FOXと彼を支える妻、父親に認められたい息子、土の中で生活するすべての仲間たちは、野生の本能と誇りをかけ、人間たちと戦い始める!

ウェス・アンダーソンがどうしても撮りたかった最新作――
CG時代にあえて挑んだこだわりのストップモーション・ピクチャー!

pic時代を超えて愛される奇才作家・「チョコレート工場の秘密」のロアルド・ダール。ユーモアとイマジネーションに満ちた彼の代表作「すばらしき父さん狐」の映画化に挑んだのは、『ザ・ロイヤル・テネンバウムス』『ダージリン急行』の異才・ウェス・アンダーソンである。幼い頃から大好きだったこの原作をいつか映画化したいと願い続け、ついに、構想10年、撮影期間2年、総コマ数125,280という気の遠くなるような時間と手間をかけて本作を完成させた。

pic主人公Mr.FOXの声は、『オーシャンズ』シリーズから社会派ドラマ『シリアナ』や『フィクサー』まで幅広く活躍するジョージ・クルーニー。妻のMrs.FOXには2度のアカデミー賞受賞(ノミネートはなんと15回!)の演技派女優メリル・ストリープ。さらにアンダーソン作品常連のビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソンに、ジェイソン・シュワルツマン、ウィレム・デフォーなど、個性派で知られる豪華ハリウッドスターたちが勢ぞろい。すばらしきキャスト陣たちが人形たちにリアルな息吹を与えている。


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