ドルフィン・グライド
DOLPHIN GLIDE
(2005年 オーストラリア 21分+メイキング26分)
2006年4月1日から4月7日まで上映
■監督・製作 ジョージ・グリノー
『メイキング・オブ・ドルフィン・グライド』
■監督・製作 スコット・ウォルシュ
『ビッグ・ウェンズデー』『クリスタル・ボイジャー』といった、伝説のサーフィン映画の水中撮影で知られ、60〜70年代において有数のサーファーでもあったジョージ・グリノー。社会のシステムから離れ、靴を履かずに裸足で生活していたり、自分の興味のあること以外にはまったく何の関心も示さなかったり、無愛想だけど無垢で純粋、ユニークな男である。そんな彼の生き方は、原始的でシンプルだ。
この作品も、彼のように、いたってシンプルである。説明的ではなく、癒し効果をねらったわけでもない。海があり、イルカがいて、それを撮影することに夢中になっているウォーターマン、ジョージ・グリノーがいる。そんな映画である。それで充分なのだ。
***イルカ豆知識***
○イルカはクジラの仲間。
○イルカの目から見た世界は人間と同じ色で見えている。
○イルカの鼻(呼吸孔)は頭の上。水中生活に適応する過程で移動した。
○イルカは喋る。人間のような言葉ではないが、自らが発した音で会話をしている。
○イルカの耳は発見しづらい。目の後方にある小さなくぼみが耳の穴。しかし、実は耳の穴から音を聞くのではなく、(水中での振動を)アゴの骨で聞く。
○イルカが眠る時。右脳と左脳を交互に休ませ、常に意識を絶やさないようにしている。これは完全に眠ってしまうと、窒息してしまうから、なのだそう。
さあ、イルカと共にグライドです。(ロバ)
皇帝ペンギン
LA MARCHE DE L'EMPEREUR
(2005年 フランス 86分)
2006年3月25日から3月31日まで上映
■監督・脚本 リュック・ジャケ
■脚本 ミシェル・フェスレール
■声の出演 ロマーヌ・ボーランジェ / シャルル・ベルリング / ジュール・シトリュク
■声の出演(日本語吹替版) 石田ひかり / 大沢たかお / 神木隆之介
■2005年アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞
ジャック=イヴ・クストーの『沈黙の世界』から『ディープ・ブルー』『WATARIDORI』とつらなるフランス製ドキュメンタリーは、その度に我々に大きな感動をもたらしてきた。そして今作『皇帝ペンギン』。上記作品を遥かに凌ぐ大ヒットを記録した傑作ドキュメンタリーである。
3月。冬の兆しが訪れた南極に燕尾服の長い列が出来る。それは<呪われた民族(リュック・ジャケ監督談)>・皇帝ペンギンの命をつなぐ行進だ。エサが豊富で住み慣れた海を離れ、営巣地となる場所へと歩き出したペンギンたち。その距離実に約100キロ。20日間の長い長い行進の末、やっとたどりついた営巣地ではパートナー探しの儀式・求愛のダンスがはじまる。
そして5月の終わり。ようやく産み落とされた愛の結晶。出産を終え、体力を使い果たしたメスペンギンたちは、生まれくる命と自らの為に再び100キロ離れた海へとエサをとりに行く。卵を託されるオスペンギンたちは海をはなれてからおよそ120日間の絶食をしながら、時速250kmで吹きすさぶブリザードや氷点下40℃という寒さから卵を守らなければならない。メスの帰りと、命の誕生を待ちながら、オスペンギンたちは身を寄せ合う。
もともとTVの企画としてはじまり、スケールを増して映画となったこの作品は、実に8880時間にも及ぶ撮影のたまものである。スタッフは13ヶ月南極に滞在し、凍傷に悩まされながら撮影を行なった。その特異な撮影の日々から、「日常生活に復帰するまでに一年もかかってしまった」と語る監督のリュック・ジャケは動物行動学の研究者。数々の科学ドキュメンタリーを手掛けた手腕で、皇帝ペンギンたちの生態をことこまかに捉えている。
また、今作では従来のドキュメンタリーとは異なった台詞的なナレーションが使用され、ストーリー性を増しながら時に詩的に美しく観客をひきこんでいく。大ヒットの要因は皇帝ペンギン自体の魅力だけでなく、作り手の積極的な工夫によるものでもあるといえるだろう。
平均時速0.5キロで身体を揺すりながら歩いていく様の可愛らしさとはうらはらに、過酷な環境を生き、新たな命を繋いでいく皇帝ペンギンのたくましさは、癒しを越えて勇気さえ与えてくれる。
(Sicky)