ディープ・ブルー
DEEP BLUE
(2003年 イギリス・ドイツ 91分)
2005年4月16日から4月22日まで上映
■監督・脚本 アラステア・フォザーギル/アンディ・バイヤット
■撮影 ダグ・アラン/ピーター・スクーンズ他
■音楽 ジョージ・フェントン
■演奏 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
■ナレーション マイケル・ガンボン
地球の70%は海で出来ている。にもかかわらず、海について人間が知っていることなんてほんの一握りにすぎない。今だ解明出来ないことの多い海の世界、科学者さえ見ることの出来なかった海底5000メートルの未知の世界。ディープ・ブルーは、普段見ることも叶わない神秘の世界へ私達を連れて行ってくれる。
食うか食われるかの弱肉強食の世界の中で身に付けた生物たちの知恵に驚かされ、すべてが生き延びるために、と言うあたりまえの本能にハッ、となった。海の世界は厳しい。思わず目を伏せたくなるような惨酷で悲しい場面もある。けれど、そのだれも抗うことのできない生命の連鎖の中に光る美しさを見た。
そんな美しさや厳しさ、尊さをカメラは淡々と「あるがまま」に映す。しかし、その撮影は実に根気がいる作業で、本当に海の生物を熟知し、愛していなければできない作業だったことだろう。
制作に7年、撮影に四年半という長い年月をかけて、危険を顧みず、同じ場所で最高の一瞬を待ちつづけ、広大な生命と向き合い素晴らしいドキュメンタリーを創り上げたのだ。
ナレーションには『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』に出演のマイケル・ガンボンが起用され、音楽にはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が映画音楽で初めて演奏を引き受けており、映像と絡み合った素晴らしい演奏をしている。
(cotd)
らくだの涙
DIE GESCHICHTE VOM WEINENDEN KAMEL
THE STORY OF THE WEEPING CAMEL
(2003年 ドイツ 91分)
2005年4月16日から4月22日まで上映
■監督・脚本 ビャンバスレン・ダバー/ルイジ・ファロルニ
■製作 トビアス・N・シーバー
■撮影 ルイジ・ファロルニ
■出演 インゲン・テメー(母らくだ)/ボトック(子らくだ)
青く澄み切った高い空と、どこまでも続くモンゴルの大地。季節は春。この大自然に暮らす遊牧民の大家族に、一頭の白い子らくだが誕生した。
しかし母らくだは、難産の末、産み落とした赤ん坊らくだに愛情を示すことができず、子育てを拒否してしまうのだった。このままでは赤ん坊らくだは死んでしまう。
一家は、すさんでしまった母らくだの心を解きほぐすため街から音楽家を呼び寄せる事にした。そのメッセンジャーを務めるのは、大家族のちいさな兄弟。幼いふたりは音楽家を招くため、らくだにまたがり、遠く離れた街へと出かけて行く。
このドキュメンタリーは、モンゴル生まれのビャンバスレン・ダバーが、子供に愛情を持てない母らくだの心を解きほぐす音楽家の風習を聞き、イタリア生まれのルイジ・ファロルニと共に、春のモンゴルに向かい、わずか一ヶ月の撮影で完成させた作品だ。
いいようのない感情、かたくなな心が自然と解かされてゆく、音楽にはその力がある。淡々と撮られる遊牧民の日常の中に、共に暮らしている存在への敬意を感じ、自分の日常と重ね合わせ、何かを思う。
(ロバ)