WATARIDORI
LE PEUPLE MIGRATEUR
(2001年 フランス 99分)
2003年9月6日から9月12日まで上映
■総監督・製作・ナレーション ジャック・ペラン
■共同監督 ジャック・クルーゾ/ミッシェル・デバ
■音楽監督 ブリュノ・クレール
■2002年アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞ノミネート
(C)日本ヘラルド映画私達は渡り鳥の存在は知っている。けれど世界中に散らばる渡り鳥たちが、どんなルートを辿り、どんな経験を積み重ねているかを想像できるだろうか。映画『WATARIDORI』は、それを克明かつ壮大に描いた世界で唯一の映像作品だ。
北半球に春が訪れると、鳥たちは生まれ故郷である北極を目指して飛び立つ。昼夜を問わず、休む暇なく飛び続ける鳥たちもいれば、宿泊地を定めながら、はるか彼方約束の土地を目指す鳥もいる。
やっと親鳥の元を離れた幼い鳥たちも、時には親鳥からはぐれて、たったひとりで見知らぬルートを羽ばたかねばならない。一度も経験したことのない数千キロにも及ぶ空の道を間違えることなく飛び続け、約束の地に到着する神秘、これはいったい何か?
やがて北半球に新しい春が訪れると、渡り鳥は多くの困難や試練を乗り越えて、あの空のルートを再び辿って、今年もまた「戻って来る」という約束をする。
この物語の主役は100種を超える渡り鳥。そして物語の主軸を成す鳥たちに関しては、フランス郊外に約40種類、1000羽を集めてトレーニングを行ったという。
といっても調教というレベルではなく、スタッフたちは鳥たちがいざ撮影の時、自然に動けるようにと、なんと卵の頃から人の声や機器の音に慣れさせたのだ。
鳥たちと感情的な繋がりを築いた上で撮影に挑んだ彼らは、鳥たちが、人間や機材をまるで自分の仲間のように捉えていることを感じて、感動を抑えきれなかったと告白している。
撮影期間は3年、世界20ヶ国以上を渡り鳥と共に旅したこの物語は、CGを一切使用していない。にも関わらず、鳥たちの目からみた世界がダイナミックに展開していく。その映像をニック・ケイヴやロバート・ワイアットの曲が彩り、叙情豊かに私たちの胸に迫ってくる。
ボウリング・フォー・コロンバイン
BOWLING FOR COLUMBINE
(2002年 カナダ 120分)
2003年9月6日から9月12日まで上映
■監督・脚本・製作・主演 マイケル・ムーア
■登場人物 チャールトン・へストン/マリリン・マンソン/マット・ストーン/ジョージ・W・ブッシュ
■2002年アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞/2002年カンヌ国際映画祭55周年記念特別賞受賞・パルムドールノミネート
(C)ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループコロンバイン高校における銃乱射事件等々、アメリカで銃による犯罪が多発しているのは誰もが知るところである。しかし銃が許されている他国(カナダなど)と比較しても、抜きん出た数の銃犯罪を抱えているのはなぜゆえか?
銃犯罪が多発するアメリカ社会にはどんな脅威の力が内在しているのか。そんな重いテーマのもとに、アメリカで最も影響力をもつジャーナリストのマイケル・ムーアが、マイク片手にアポなし突撃取材、という独自のスタイルで、全米を震撼させたコロンバイン高校銃乱射事件を入り口に、アメリカ銃社会を独特のユーモアを交え、斬っていく。
彼は問う。なぜコロンバイン事件は起きたのか?なぜアメリカで銃撃事件が多発するのか?こんなアメリカに誰がした?
ドキュメンタリーの登場人物であるマリリン・マンソンやチャールトン・へストンによる、興味深い言動の数々も見逃せない。
2002年のカンヌ国際映画祭で、作品に一目ぼれした審査委員長のデヴィット・リンチは急遽この作品のために「カンヌ国際映画祭55周年記念特別賞」を設け、授与した。上映終了後、カンヌでは前例のない20分にも及ぶスタンディングオベーションを巻き起こし、上映館に人々が押しかけ大騒動になるという事態にまで発展した。最高のドキュメンタリーにして、最高のエンタティンメント作品である。