混み合った山手線に揺られ、高田馬場の駅で降りる。今ならまだ出席票だけは提出できるか…。そう思いながらどうしても目の前のバスに乗る気がしない。古本屋をニ、三軒ひやかして、結局は映画館へ…。そんな、十代のぜいたくな、忘れられない時間。
当時はACTミニシアターをはじめ、駅前のビルに東映パラス、反対側にパール座があって、これに真打ちの早稲田松竹を加えた映画街を、僕は大学の教室を移動するように歩き回っていたわけです。そんな青春の場所で、今回僕の近作『誰も知らない』と『花よりもなほ』を上映していただけるとのこと。本当に感慨深いです。映画は映画館で出会うものだという実感は当時も今も変わりません。その出会いの場を今も提供し続けてくれる早稲田松竹さんに心からのエールを送ります。そして、この劇場に足を運んでいただいた映画ファンのみなさん。ありがとうございます。楽しんでください。