北の零年
YEAR ONE IN THE NORTH
(2004年 日本 168分)
2005年8月6日から8月12日まで上映
■監督 行定勲(『世界の中心で、愛をさけぶ』『きょうのできごと a day on the planet』)
■脚本 那須真知子(『デビルマン』)
■出演 吉永小百合/渡辺謙/豊川悦司/柳葉俊郎/石田ゆり子/香川照之/石原さとみ
(C)2005『北の零年』製作委員会「命」は時に凛々しく
いつの日かという希望を企む
寂しさから優しさを産み
苦しみから強さを創り
悩みからは嬉し涙を演出する…
美しさは宿る
その「命」を愛しむ人に
その命の歌を聴く人に
その命の舞を視る人に
(命を愛しむ詩 小椋 佳)
260年に渡る江戸時代が終焉し、日本が大きく変わった明治維新。移ろう時代の波に翻弄されてゆく、侍たちの悲哀がそこにはあった。故郷を追われ、北海道移住を命じられた淡路・稲田家の武士とその家族たち主従546名は、四国の豊潤温暖な美しい島から、半月に及ぶ船旅の末に、言葉も凍てつく荒涼とした北の原野・北海道静内へたどりつく。そこには想像をはるかに絶する、苦難の数々が待ち受けていた。
開拓前の北海道、果てしなく続く大地を舞台に、自分たちの国をつくろうという希望に燃え、過酷な生をひたすら前へ進んだ人々の姿を描いた壮大な物語が誕生した。北海道開拓という知られざるテーマに、武士という過去の身分を捨てて未来を切り開いていく男たち、また真摯に生きる日本女性とその周囲の人々を描き出す。日本が誇る映画女優、吉永小百合の記念すべき映画111本目の作品でもある。ハリウッドでも実力を認められる渡辺謙ら、多彩な登場人物によるダイナミックな群像ドラマ。日本映画史に残るであろう豪華俳優陣が見ものだ。
(mana)
長崎ぶらぶら節
(2000年 日本 115分)
2005年8月6日から8月12日まで上映
■監督 深町幸男
■原作 なかにし礼
■脚本 市川森一
■出演 吉永小百合 /渡哲也/高島礼子/原田知世/藤村志保/いしだあゆみ
(C)2000『長崎ぶらぶら節』製作委員会吉原・島原と並び、日本三大花街と称された長崎は丸山。三味線の腕の誉れ高く、自腹を切って人助けをする程の気風のよさで名妓と呼ばれた愛八。五十台を手前に、盛りを過ぎ円熟の域に達していた彼女に運命の出会いが訪れる。
とある大宴会の席。犬猿の仲である街芸者との喧嘩をはじめた愛八の前に一人の男が現れた。長崎の大店の主人であり、長崎きっての風俗研究家でもある古賀十二郎である。
後日、沈められることになった戦艦「土佐」への思いを歌った愛八に、古賀の心は激しく動かされる。「さまざまな想いの込められた唄を誰かがのこしていかねば」、と古賀。「おいと一緒に、長崎の古き唄を探してあるかんかね」。古賀と愛八の旅が始まる。 それぞれの、そしてそれぞれへの熱い思いを抱きながら、それでも静かに淡々と三年の月日をかけて旅する二人。やがて、旅の終わり、二人はある唄と出会う。そしてその先には別れも…。
1966年の『愛と死の記録』で初競演して以来、1998年『時雨の記』、そして今作で3本目となる吉永小百合と渡哲也の競演。落ち着きと、可愛らしさ、そして強さを持った愛八はまさに吉永のはまり役といえるだろう。大店主人であり、学者という子供っぽさと落ち着きを持った古賀を、渡哲也が嫌味なく演じ、それゆえにラストの哀しみが増す。
異国情緒あふれる長崎の景色や史実に基づいて実に丁寧に作られたセット。華やかな芸者の衣装から、日常着にいたるまで、季節を感じさせる美しい着物たちを背景にした、吉永・渡の佇まいは、近年の日本映画に稀な絵画的な美しさといえる。 なかにし礼による第122回直木賞受賞作の同名小説の映画化。
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