きょうのできごと a day on the planet
(2003年 日本 110分)
2004年10月23日から10月29日まで上映
■監督・脚本 行定勲
■原作 柴崎友香
■脚本 益子昌一
■出演 田中麗奈/妻夫木聡/伊藤歩/柏原収史/三浦誠己/石野敦士/松尾敏伸/池脇千鶴/山本太郎/椎名英姫/北村一輝
(C)コムストック京都の大学院に進学した正道の引っ越し祝いに集まった友人たち。酔っぱらう者、能天気な者、それぞれの一日が終わり、始まろうとしている…。
「何も起こらない、どこにでもある日常がいかに豊かであるかということを感じていただけたら」行定監督のこの言葉がこの映画のすべてを物語っている様に思える。
いわゆるドラマティックな展開は、この作品にはない。ただ日常の風景が淡々と流れていく。誰もが経験したことのある普通の一日。それ故に、妻夫木聡、田中麗奈、池脇千鶴ら日本映画界を代表する若手俳優たちのアンサンブルが活きてくる。
演技にも、演出にも、あざとさは見られず、観ているこちらが、あたかもその場にいる様な感覚を覚える。しかし、本作を観終わった時、あるいは観ている最中に、普段当たり前すぎて見過ごしがちな事柄や言葉の貴重さに気付かされる。
非日常の映画の中で、本来あるべき日常にどっぷりとつかることができる。ある意味、最高に贅沢な映画であるといえるだろう。
(マコト)
エレファント
ELEPHANT
(2003年 アメリカ 81分 )
2004年10月23日から10月29日まで上映
■監督・脚本・編集 ガス・ヴァン・サント
■出演 アレックス・フロスト/エリック・デューレン/イライアス・マッコネル/ジョン・ロビンソン/ジョーダン・テイラー
■2003年カンヌ国際映画祭パルムドール・監督賞受賞ほか
★本編はカラーです
(C)2003 HOME BOX OFFICE,Inc.ALL RIGHTS RESERVED「詩的で、絵画的なようで、ドラマというよりもドキュメンタリーに近い。ベートーベンの音楽がトーンを決め、ヴァン・サントは底知れない悲劇の魔の手から美の瞬間を救出しようとしながら、音と光に形を与える。」(スクリーン・インターナショナル)
これは本作に対しての批評である。この文章を読んで、誰が「あの事件」を題材にした映画の批評であると思うだろう?そう、この映画は素晴らしいカメラワーク、美しい照明、計算され尽くした音響デザイン等、映画のあらゆる手法が動員され、様式美に満ち溢れているのだ。ジャーナリスティックな野望など微塵もない、「映画芸術上の傑作」(仏リベラシオン誌)なのである。
全米を揺るがせたコロラド州コロンバイン高校での銃乱射事件は、『ボウリング・フォー・コロンバイン』を初め、多くのアーティストやジャーナリストが取り上げてきた。この映画が他と一線を画しているのは、あえて声高に問題点を指摘せず、少年たちの苛立ちの矛先等に、無理に答えを導き出そうとしていない点だ。
ただ誰もが知るクライマックスに到達するまでの登場人物たちのいつもと変わらぬ一日を淡々と描写し、ひたすら子供たち(とくに弱者)を見つめる事に徹している。
『マイ・プライベート・アイダホ』『ドラッグストア・カウボーイ』『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』と、少年が世界の中で居場所を見つけようとすることがどういうことなのかを捜し求めてきたガス・ヴァン・サント監督の最高傑作でありマスターピースの誕生である。
2003年カンヌ国際映画祭史上初のパルムドール&監督賞W受賞。
(マコト)