【2024/3/9(土)~3/15(金)】『BLUE GIANT』『白鍵と黒鍵の間に』 // 特別モーニング&レイトショー『真夏の夜のジャズ』

ジャック

空気を伝わるただの振動であるはずの音が、どうして音楽になるとこんなにも気持ちを高揚させるのだろう。

『BLUE GIANT』では「ジャズは感情の音楽」という。『白鍵と黒鍵の間に』で描かれる主人公も演奏技術ではないものを得るために銀座の街をさまよう。

映画の中の彼らが必死に表現しようとする音楽に宿る何か。喜怒哀楽では表しきれないより複雑で抽象的な思いが、私たちの体に届き、心を震わせる。

もし音楽が抑えきれずあふれ出てしまう気持ちの表れなのだとしたら、音楽から受け取ったものに呼応するように、涙してしまうのは当然のことなのかもしれない。そういった意味では音楽と涙は似ている。

今週上映するのはジャズをテーマにした作品たち。これらの映画にはまさに音楽の始まりが描かれているのだと思う。今から何かが起ころうとするその瞬間をぜひ体験してください!

白鍵と黒鍵の間に
Between the White Key and the Black Key

冨永昌敬監督作品/2023年/日本/94分/DCP/シネスコ

■監督 冨永昌敬
■脚本 冨永昌敬 /高橋知由
■原作 南博「白鍵と黒鍵の間に」(小学館文庫刊)
■撮影 三村和弘
■編集 堀切基和
■音楽 魚返明未
 
■出演  池松壮亮/仲里依紗/森田剛/クリスタル・ケイ/松丸契/川瀬陽太/杉山ひこひこ/中山来未/福津健創/日高ボブ美/佐野史郎/洞口依子/松尾貴史/高橋和也

© 2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会

【2024/3/9(土)~3/15(金)上映】

人生の隙間を音楽が埋める 人生が変わる”一夜”のジャズ・セッション

昭和63年の年の瀬。夜の街・銀座では、ジャズピアニスト志望の博が場末のキャバレーでピアノを弾いていた。博はふらりと現れた謎の男にリクエストされて、“あの曲”こと「ゴッドファーザー 愛のテーマ」を演奏するが、その曲が大きな災いを招くとは知る由もなかった。“あの曲”をリクエストしていいのは銀座界隈を牛耳る熊野会長だけ、演奏を許されているのも会長お気に入りの敏腕ピアニスト、南だけだった。夢を追う博と夢を見失った南。二人の運命はもつれ合い、先輩ピアニストの千香子、銀座のクラブバンドを仕切るバンマス・三木、アメリカ人のジャズ・シンガー、リサ、サックス奏者のK助らを巻き込みながら、予測不可能な“一夜”を迎えることに…。

「ゴッドファーザー 愛のテーマ」の旋律が二人のジャズピアニストの運命を狂わせるーー。

原作は現役のジャズミュージシャンで、エッセイストとしても才能を発揮する南博の『白鍵と黒鍵の間に -ジャズピアニスト・エレジー銀座編-』。ピアニストとしてキャバレーや高級クラブを渡り歩いた青春の日々を綴った回想録を、共同脚本を手がけた冨永昌敬監督と高橋知由が大胆にアレンジ。南博がモデルの主人公を“南”と“博”という2人の人物に分けて、3年におよぶタイムラインがメビウスの輪のようにつながる一夜へと誘い、観る者を翻弄する。未来に夢を見る博と夢を見失っている南。同じ池松壮亮によって演じられる2人の主人公は、時にすれ違い、時にシンクロするカードの裏表のような関係で、池松が繊細に演じ分けてみせた。

南と博を取り巻く面々もすこぶる付きのクセ者ばかり。博の大学時代の先輩で、クラブでは南のバンド仲間でもあるピアニスト千香子役には、幅広いジャンルで活躍している仲里依紗。刑務所からシャバに出てきたばかりの謎の男“あいつ”役には、『ヒメアノ~ル』『前科者』の森田剛が扮し、飄々かつ危険な香りを作品に注入している。さらに、高橋和也、クリスタル・ケイ、松尾貴史、佐野史郎、洞口依子と、濃厚な顔ぶれのアンサンブルによって群像劇としての面白さも増している。

また、気鋭のサックス奏者・松丸契がK助役で映画初出演し、本職がミュージシャンであるクリスタル・ケイも参加する演奏シーンは、作中のハイライトのひとつ。劇中の音楽はジャズ・ミュージシャンでもある魚返明未が担当。そして、エンドロールの楽曲は原作者の南博によるピアノ演奏曲が使用されており、本作の余韻を一層引き立たせている。

BLUE GIANT
Blue Giant

立川譲監督作品/2023年/日本/120分/DCP/ビスタ

■監督 立川譲
■原作 石塚真一「BLUE GIANT」(小学館「ビックコミック」連載)
■脚本 NUMBER 8
■キャラクターデザイン・総作画監督 高橋裕一
■メインアニメーター 小丸敏之/牧孝雄
■編集 廣瀬清志
■撮影監督 東郷香澄
■音楽 上原ひろみ
■演奏 馬場智章(サックス)/上原ひろみ(ピアノ)/石若駿(ドラム)
 
■声の出演 山田裕貴/間宮祥太朗/岡山天音/木下紗華/青山穣/乃村健次/木内秀信/東地宏樹

■第47回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞・ 優秀音楽賞ノミネート

©2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 ©2013 石塚真一/小学館

【2024/3/9(土)~3/15(金)上映】

二度とないこの瞬間を 全力で鳴らせ

ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大。雨の日も風の日も、毎日たったひとりで何年も河原でテナーサックスを吹き続けた。卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と出会う。「組もう。」大は雪祈をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、二人はバンドを組むことに。そこへ大の熱さに感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は“JASS”を結成する。

楽譜も読めず、ジャズの知識もなかったが、ひたすらに、全力で吹いてきた大。幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈。初心者の玉田。トリオの目標は、日本最高のジャズクラブ「So Blue」に出演し、日本のジャズシーンを変えること。 無謀と思われる目標に、必死に挑みながら成長していく “JASS”は、次第に注目を集めるようになるのだが…。

原作:石塚真一×監督:立川譲×音楽:上原ひろみ 熱くて激しい青春がスクリーンで鳴り響く!

2013年に石塚真一が「ビッグコミック」(小学館)で連載を開始した漫画「BLUE GIANT」。その圧倒的表現力は多くの読者を魅了し、“音が聞こえてくる漫画”とも評され、ブルーノート東京でのライブイベントの開催など、現実のジャズシーンにも影響を与えている。その「BLUE GIANT」が、「最大の音量、最高の音質で、本物のジャズを届けたい」という想いから、満を持して初めて映像化。

監督は「モブサイコ100」シリーズや劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』で注目を集める立川譲。脚本は連載開始前からの担当編集者で、現在はstory directorとして作品に名を連ねるNUMBER 8。アニメーション制作は「幼女戦記」などで注目を集めるスタジオ・NUTが手掛ける。主人公・宮本大の声には、ひたむきに夢を追う大の姿にシンパシーを感じていたという山田裕貴。大が東京で出会うピアニスト・沢辺雪祈に間宮祥太朗、そして大に感化されドラムを始める玉田俊二を岡山天音と、数々の話題作に出演し、目覚ましい活躍をみせる豪華俳優陣がキャラクターに命を吹き込む。

“音”の面でも最高のスタッフが集結。音楽は、世界的ピアニストの上原ひろみが担当し、主人公たちのオリジナル楽曲の書き下ろしをはじめ、劇中曲含めた作品全体の音楽も制作。また、主人公たちのバンド・JASSの演奏を支えるアーティスト陣も豪華なメンバーが揃った。サックス(宮本大)は国内外のトップアーティストが集まるオーディションを経て選ばれた馬場智章。ピアノ(沢辺雪祈)は、音楽の上原ひろみ自身が演奏し、ドラム(玉田俊二)の演奏はmillennium parade等、多数のアーティストから支持を集める石若駿が担当。最高のジャズトリオの演奏が作品を彩る。

【モーニング&レイトショー】真夏の夜のジャズ 4K
【Morning & Late Show】Jazz on a Summer's Day

バート・スターン監督作品/1959年/アメリカ/82分/DCP/スタンダード

■監督・製作 バート・スターン
■撮影 バート・スターン/コートニー・ハフェラ/レイ・フィーラン
■編集 アラム・A・アバキャン 
■音楽 ジョージ・アバキャン
 
■出演 ルイ・アームストロング/セロニアス・モンク/アニタ・オデイ/チャック・ベリー/マヘリア・ジャクソン/ジミー・ジュフリー/ソニー・スティットジョージ・シアリング/ダイナ・ワシントン/ジェリー・マリガン/ビッグ・メイベル・スミス/チコ・ハミルトン

■1999年アメリカ国立フィルム登録簿新規登録作品


★本作品は特別レイトショー上映です。
☟入場料金
一律1000円(割引なし)
★チケットは、朝の開場時刻より受付にて販売いたします(当日券のみ)。
★当館では2K上映となります。

【2024/3/9(土)~3/15(金)上映】

©1960-2019 The Bert Stern Trust All Rights Reserved.

永遠に続く夢をお見せしましょう――

アメリカ合衆国の東北部に位置するロードアイランド州ニューポート市で開催された、1954年から現在も続く、伝統ある恒例の夏フェス「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」。本作は1958年7月3日から6日まで、真夏に開催された第5回フェスと、同時期に開催されたアメリカズカップの模様を撮った〝熱い“ドキュメンタリー。

ルイ・アームストロング(サッチモ)、セロニアス・モンク、アニタ・オデイ、チャック・ベリーなど、伝説のミュージシャンたちが魅せる圧倒的迫力のパフォーマンスと、それを楽しむおしゃれな観客たちの姿をカメラに収めたのは当時新進気鋭の写真家として有名だったバート・スターン。まるで場面のひとつひとつが完成された1枚の写真のような、不思議な魅力に溢れた“熱い”作品となっている。その後の日本のジャズシーンの方向性を決定づけたとも言われ、おしゃれな港町で、真夏の夜に繰り広げられたミュージシャンと観客の夢のようなコラボが見るものの心を躍らせる!

アメリカ最大級の夏フェスで 伝説のミュージャンたちが魅せる 奇跡の音楽ドキュメンタリー

本作は1958年7月3日から7月6日まで開催された「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」を中心に撮影が行われ、それを1日の夏の夜の出来事としてわずか83分の作品にまとめられている。翌1959年ヴェネチア国際映画祭で招待上映されるや、その大胆な撮影手法や映像の美しさが関係者に衝撃を与えた。音楽と直接関係のないイメージを作品の随所に使用、観客にフォーカスしたシーン(映画全体の半分ほど)やアメリカズカップのヨットシーンなど、まるでビデオクリップのような映像は50年代のアメリカ文化を鮮烈に伝える、単なる音楽ドキュメンタリーにはとどまらない魅力に溢れている。

監督のバート・スターンは撮影時弱冠28。一流企業の広告や有名雑誌の特集など広い分野で活躍する当時ニューヨークで最も人気のある写真家のひとりだった。スタンリー・キューブリック監督の映画『ロリータ』のポスターやオードリー・ヘプバーン、ブリジット・バルドー、マドンナのほか、 死去6週間前のマリリン・モンローを撮影した写真集で大きな話題を呼び、大御所写真家として多くの作品を残した。撮影当時は新進気鋭の写真家で、映画は未知の分野だったバート・スターンに白羽の矢を立てたのが、ニューポート・ジャズ・フェスティバルの発起人であるロリラードの夫人・エレインだった。熱狂的なジャズファンであったスターン監督はこれを快諾した、と言われている。本作は新進気鋭の写真家らしい、どこを切り取っても美しい写真のような場面が大きな見どころのひとつである。