【2022/4/2(土)~4/8(金)】『やさしい女』『ピクニック』 // レイトショー『女と男のいる舗道』

ピクニック デジタルリマスター版
A Day in the Country

ジャン・ルノワール監督作品/1936年/フランス/40分/DCP/スタンダード

■監督・脚本・台詞 ジャン・ルノワール
■原作 ギィ・ド・モーパッサン「野あそび」
■製作 ピエール・ブロンベルジェ
■助監督 ジャック・ベッケル/アンリ・カルティエ=ブレッソン/ルキーノ・ヴィスコンティ/イヴ・アレグレ/ジャック・B・ブリュニウス/クロード・エマン
■撮影 クロード・ルノワール
■編集 マルグリット・ルノワール/マリネット・カディス
■音楽 ジョゼフ・コスマ

■出演 シルヴィア・バタイユ/ジャーヌ・マルカン/アンドレ・ガブリエロ/ジョルジュ・サン=サーンス/ジャック・B・ブリュニウス/ポール・タン/ガブリエル・フォンタン

【2022年4月2日から4月8日まで上映】

光が踊っている

夏のある晴れた日。輝く太陽、匂い立つ草、穏やかな水面、幸せなピクニックの一日はきらきらと輝いていた。結婚を控えた娘アンリエットは自然に導かれるように、現地で出会った青年アンリと結ばれる。永遠に消えることのない一瞬の輝き。そして待ち受ける別れと再会――。

印象派の画家、父ルノワールから受け継がれた美の真髄。祝福を受けた奇跡の映画!

画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの息子であるジャン・ルノワール監督の『ピクニック』は印象派絵画を越える美しさにあふれた奇跡の映画だ。トリュフォー、ゴダールをはじめヌーヴェルヴァーグの作家たちから映画の父として敬愛されたルノワール。本作でも助監督には、アンリ・カルティエ=ブレッソン(スチール写真も担当)やジャック・ベッケル、ルキーノ・ヴィスコンティらそうそうたる名前が並ぶ。ヒロインを演じたのは、当時ジョルジュ・バタイユ夫人であったシルヴィア・バタイユがつとめた。

1936年に撮影された本作のプリントは完成を待つ前に大戦が勃発しドイツ軍によって破棄。ところがオリジナルネガはシネマテーク・フランセーズの創設者アンリ・ラングロワによって救出されていた。そしてプロデューサーのピエール・ブロンベルジェの執念により、当時アメリカへ亡命していたルノワール監督の了承を得て編集作業が進められついに完成、1946年にパリで公開となった。

出会いと別れ。喜びと悲しみ。調和と崩壊。人生に起こるドラマのすべてが凝縮された40分。一瞬の愛のきらめきを得ながらも結ばれることのない男女のドラマから、人生の歓びや切なさが浮き彫りになっていく。

やさしい女 デジタル・リマスター版
A Gentle Woman

ロベール・ブレッソン監督作品/1969年/フランス/89分/DCP/ヨーロピアンビスタ

■監督・脚色・脚本・台詞 ロベール・ブレッソン
■原作 フョードル・ドストエフスキー「やさしい女 幻想的な物語」
■撮影 ギスラン・クロケ
■音楽 ジャン・ウィエネル

■出演 ドミニク・サンダ/ギイ・フライジャン/ジャン・ロブレ

【2022年4月2日から4月8日まで上映】

一組の夫婦に起きた悲劇――人を愛するとは、どういうことか。

「彼女は16歳ぐらいに見えた」。質屋を営む中年男は妻との初めての出会いをそう回想する。安物のカメラやキリスト像を質に出す、若く美しいがひどく貧しい女と出会った男は、「あなたの望みは愛ではなく結婚だわ」と指摘する彼女を説き伏せ結婚する。質素ながらも順調そうに見えた結婚生活だったが、妻のまなざしの変化に気づいたとき、夫の胸に嫉妬と不安がよぎる…。

原作ドストエフスキー×監督ロベール・ブレッソン ドミニク・サンダ、17歳のデビュー作!

衝撃的なオープニングから始まる本作は、一組の夫婦に起こる感情の変化と微妙なすれ違いを丹念に描き、夫婦とは、愛とは何かという根源的な問いを投げかける。原作は、ドストエフスキーの短篇のなかでも最高傑作と呼ばれる「やさしい女 幻想的な物語」。ブレッソンは原作のプロットを守りながらも、物語の舞台をロシアから現代(60年代後半)のパリへと移し、大胆な翻案を施した。

孤独な女を演じるのは、ベルナルド・ベルトルッチ監督『暗殺の森』『1900年』で知られるフランスの女優ドミニク・サンダ。ファッション雑誌VOGUEでモデルをしていたところをブレッソン監督に見出され、本作で映画デビュー。自らも15歳で年上の男と結婚するも数カ月で離婚という経歴を持つサンダは、映画初出演ながら、年上の夫を翻弄しながらも苦悩する女を見事に演じてみせた。

モノクロの厳格な画面作りを続けてきたブレッソンの初カラー作品としても知られる本作が、この度ドストエフスキー生誕200年を記念して、6年ぶりにリバイバルロードショーされる。

【特別レイトショー】女と男のいる舗道
【Late Show】Vivre Sa Vie

ジャン=リュック・ゴダール監督作品/1962年/フランス/85分/DCP/スタンダード

■監督・脚本 ジャン=リュック・ゴダール
■製作 ピエール・ブロンベルジェ
■撮影 ラウル・クタール
■編集 アニエス・ギュモ
■音楽 ミシェル・ルグラン

■出演 アンナ・カリーナ/サディ・レボ/アンドレ・S・ラバルト/ギレーヌ・シュランベルジェ/ペテ・カソヴィッツ

■1962年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞受賞

★レイトショー上映はどなた様も一律1000円でご鑑賞いただけます。
★チケットは、朝の開場時刻より受付にて販売いたします(当日券のみ)。

©1962.LES FILMS DE LA PLEIADE.Paris

【2022年4月2日から4月8日まで上映】

「『女と男のいる舗道』は数多くの頭、数多くの目、数多くの心のうえを通り過ぎる。これは純粋な傑作であり、 初の完全無欠なゴダール映画である」 ――ジャン・ドゥーシェ

パリのあるカフェ。ナナは別れた夫と疲れきった人生を語りあっている。現在の報告をしあって別れる。夢も希望もない。ナナはそんなある日、舗道で男に誘われ、体を与えてその代償を得た。そして彼女は古い女友達イヴェットに会う。彼女は街の女達に客を紹介してはピンはねする商売の女だ。ナナは完全な売春婦になった――。

『女と男のいる舗道』はゴダールの長編4作目にあたり、当時監督夫人だったアンナ・カリーナの代表作でもある不朽の名作である。そして最も素直な、ヒロインに対する愛情に満ちた作品だ。全体は十二の断章に分けられ、夫と別れた女主人公がアパート代に困って娼婦になるという簡潔なストーリーが順を追って淡々と語られてゆく。ゴダール映画の中でも最もわかりやすい作品とも言えるだろう。

主人公ナナの名は、巨匠ジャン・ルノワールのサイレント映画『女優ナナ』、そしてエミール・ゾラのヒロインの名の記憶を踏まえているのだろうか。

『小さな兵隊』『女は女である』に続いてゴダール映画に主演したアンナ・カリーナは撮影時21歳。ゴダールとカリーナは当時、結婚してからほぼ1年を迎える新婚夫婦だったが、既に二人の仲には深刻な亀裂が入り始めていたという。そうした精神状況を反映してか、カラー・シネマスコープ作品で陽気なミュージカルコメディだった『女は女である』とは一転し、本作は白黒・スタンダードで、全編が虚無と悲しみにつつまれている。

(94年公開時のパンフレットより一部抜粋)