2022/2/26(土)~3/6(金) 『Summer of 85』『トムボーイ』//特別モーニング&レイトショー『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』

おまる

誰かを好きになるとき、性別は関係ありません。そんなことを考える暇もなく、相手のことがもっと知りたくなったり、一緒に過ごしたくなったり。自分でも気づかないうちに好きになっているものです。今週は、誰もが持っているそんなシンプルな気持ちを思い出させてくれる、フランスから届いたひと夏の成長&青春映画をお送りします。

『トムボーイ』のロールは、引っ越し先で出会った女の子リザに自分のことを「ミカエル」と名乗り、男の子になりすましてしまいます。どうしてそんな嘘を?でも男の子と見間違ってしまうくらい、ロール/ミカエルは中性的でイノセントな魅力を放っているのです。その魅力に惹かれていくリザと、遊んでいるうちにどんどん仲良くなっていくミカエル。でも、家に帰れば妊娠中のお母さんに代わって妹の世話をする優しいお姉さんのロール。この作品が素敵なのは、ロール/ミカエルがそのふたつの日常を飄々と過ごす姿を見せてくれるところです。あくまで10歳の子供の目線で軽やかに描いています。

『Summer of 85』のアレックスは、ある日ヨットでセーリングを楽しんでいると、急な嵐で転覆してしまいます。そのとき助けてくれたのが、2つ年上のダヴィドでした。こんなドラマティックな出会い方をしたら誰だって運命を感じちゃいます。夏のフランスというキラキラした最高のロケーションの中で、あっという間に距離が縮まっていくふたり。これぞ恋愛映画の王道ど真ん中みたいな展開ですが、だからこそアレックスのまっすぐさや未熟さ、危うさがハートにビシビシと伝わってくるのです。

『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』のクラスキーが場末の酒場で出会ったのは、店主に罵声を浴びせられながら働くジョニーでした。男性なのかなと思う名前で、髪もショートなジョニー。ゲイであるクラスキーは、不思議とジョニーに惹かれてしまいます。描かれる世界はゴミ捨て場や茶色い海、蔓延する暴力など、荒んだ醜いものばかり。その中で愛を求めるふたりが、あまりに美しく感じてしまうのです。

これらは、いわゆるLGBT映画という枠に収められそうな作品。でも、わざわざその枠に入れる必要はないのかもしれません。セクシャリティに関係なく、ただただ人が人を好きになることの素晴らしさ、人と人とがつながることの難しさを描いた純粋な青春映画や恋愛映画として、主人公たちの揺れ動く気持ちをシンプルに映し出しています。まぶしい夏の光のように煌めく、彼らの心のゆらめきを感じられる1週間です。

トムボーイ
Tomboy

セリーヌ・シアマ 監督作品/2011年/フランス/82分/DCP/PG12/ビスタ

■監督・脚本 セリーヌ・シアマ
■撮影 クリステル・フォルニエ
■編集 ジュリアン・ラシュレー

■出演 ゾエ・エラン/マロン・レヴァナ/ジャンヌ・ディソン/ソフィー・カッターニ/マチュー・ドゥミ

■第61回ベルリン国際映画祭テディ賞審査員特別賞受賞

© Hold-Up Films & Productions/ Lilies Films / Arte France Cinéma 2011

【2022年2月26日から3月4日まで上映】

きみの名前は?

夏休み、家族と共に新しい街に引っ越してきた10歳のロール。引っ越し先で「ミカエル」と名乗り、新たに知り合った少女リザたちに自分を男の子だと思い込ませることに成功する。やがてリザとは2人きりでも遊ぶようになり、ミカエルとしての自分に好意を抱かれていることに葛藤しつつも、お互いに距離を縮めていく。しかし、もうすぐ新学期。夏の終わりはすぐそこまで近づいているのだった…。

『燃ゆる女の肖像』で世界を席巻したフランスの俊英、セリーヌ・シアマ監督の長編2作目

『トムボーイ』は2019年のカンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞を受賞した『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督の長編2作目。長編デビュー作『水の中のつぼみ』が高い評価を得た監督が、「前作とは別の方法を試したい」という志のもと20日間で撮影を行った。ベルリン国際映画祭でのプレミア上映では絶賛と共に迎えられ、テディ賞審査員特別賞を受賞。低予算のインディペンデント作品ながら、本国フランスでの劇場公開時には30万人を動員する大ヒットを記録した。

主人公のロール/ミカエルを演じるのはゾエ・エラン。オーディションの初日に彼女と出会った監督をして「逸材だった」と言わしめる、唯一無二の存在感でスクリーン中を駆け回り、我々を魅了する。「女の子が男の子になりすます」という物語は、監督の頭の中に長年あったものだという。ジェンダーとアイデンティティーを行き来する主人公に寄り添った目線とユーモアを以て、ひと夏の挑戦が描かれる。

Summer of 85
Summer of 85

フランソワ・オゾン監督作品/2020年/フランス/101分/DCP/PG12/ビスタ

■監督・脚本 フランソワ・オゾン
■原作 エイダン・チェンバーズ「おれの墓で踊れ」(徳間書店刊)
■撮影 イシャーム・アラウィエ
■編集 ロール・ガルデット
■音楽 ジャン=ブノワ・ダンケル

■出演 フェリックス・ルフェーヴル/バンジャマン・ヴォワザン/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/イザベル・ナンティ/フィリッピーヌ・ヴェルジュ/メルヴィル・プポー

■2020年カンヌ国際映画祭オフィシャル・セレクション/セザール賞11部門12ノミネート

© 2020 Mandarin Production, Foz, France 2 Cinema, Playtime Production, Scope Pictures.

【2022年2月26日から3月4日まで上映】

あの夏の君を、心に刻んだ

セーリングを楽しもうとヨットで一人沖に出た16歳のアレックス。突然の嵐に見舞われ転覆した彼を救助したのは、18歳のダヴィド。二人は急速に惹かれ合い、友情を超えやがて恋愛感情で結ばれる。アレックスにとってはこれが初めての恋だった。お互いに深く想い合う中、ダヴィドの提案で「どちらが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てる二人。しかし、ダヴィドが不慮の事故に遭い、恋焦がれた日々は突如終わりを迎える。悲しみと絶望に暮れ、生きる希望を失ったアレックスを突き動かしたのは、ダヴィドとあの夜に交わした誓いだった――。

恋する喜びと痛みを知った少年が守ろうとした、あの夏の誓い─フランソワ・オゾンが辿り着いた、愛の原点

世界三大映画祭の常連であるフランス映画界の巨匠フランソワ・オゾン。監督最新作は、自身が17歳の時に出会い深く影響を受けたエイダン・チェンバーズの小説「おれの墓で踊れ」の映画化。原作小説に感銘を受けた自身の10代当時の感情を投影しながら、少年たちの忘れられないひと夏の恋物語を鮮やかに映し出す。

16歳と18歳の2人の少年を、危うさと繊細さをもって熱演したのは、フェリックス・ルフェーヴルとバンジャマン・ヴォワザン。いずれもオゾン自らオーディションで見出した注目の若手俳優だ。色鮮やかでノスタルジックな映像美と、80年代ヒットソングの数々で彩られた、少年たちの美しくも儚い夏。愛する喜びと苦しさに身を焦がす彼らの姿が、甘く切ない初恋の衝動を呼び起こす。

【特別モーニング&レイトショー】ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ 4K完全無修正版
【Morning & Late Show】Je t'aime moi non plus

開映時間 10:20(~終映11:50)
セルジュ・ゲンズブール監督作品/1975→2019年/フランス/90分/DCP/R18+ /ヨーロピアンビスタ

■監督・脚本・音楽 セルジュ・ゲンズブール
■撮影 ウィリー・クラント
■カメラマン ヤン・ル・マッソ
■編集 ケヌー・ペルティエ

■出演 ジェーン・バーキン/ジョー・ダレッサンドロ/ユーグ・ケステル/ジェラール・ドパルデュー/ミシェル・ブラン

© 1976 STUDIOCANAL – HERMES SYNCHRON All rights reserved

【2022年2月26日から3月4日まで上映】

殺伐とした、暴力が満ち溢れた世界。運命の愛は、すべてを超える――

トラックでゴミ回収を生業とするポーランド人のクラスキーと、イタリア人のパドヴァン。2人は仕事仲間以上の強い絆で結ばれていた。ある日彼らは立ち寄ったカフェバーで、男の子かと見間違うほどのショートカットでボーイッシュな女の子・ジョニーと出会う。彼女は飲んだくれでパワハラ気質の主人に反発しながらも、ほかに行き場もなく働いていた。

その夜、クラスキーとジョニーはダンスパーティで意気投合。しかし、実はクラスキーはゲイだった。それでも惹かれ合う二人は身体を重ねるが…

不朽の名曲が彩る恋愛映画の傑作 ボリス・ヴィアンに捧げられたゲンズブール初監督作品

セルジュ・ゲンズブールの代表曲で、ジェーン・バーキンとのデュエットソング「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」。あまりにも官能的で大胆な内容に当時のローマ法王が激怒するなど、ヨーロッパのほとんどでは放送が禁止となったが、それにも関わらず世界的に大ヒットした。

映画『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』は同楽曲をモチーフに、ゲンズブール自身が初めてメガホンを取り映画化した作品。マイノリティが虐げられ、暴力が蔓延する世の中。そこに生きる、愛を求める人々。随所に「ジュ・テーム~」のインストゥルメンタル版を使用し、愛の素晴らしさを美しく描き出した。

公開時は、ロングヘアから短髪になったジェーン・バーキンの衝撃的なルックスや赤裸々な同性愛の描写ばかりが強調され、描かれた本質的な部分やユーモアは理解されなかった。しかしその後、リバイバル上映時には大ヒットを記録。上映されるたびに多くのファンに賞賛されてきた本作が、ゲンズブール没後30年となる今年、待望の4K完全無修正版となり、オリジナル版で鮮やかに美しくよみがえる。