【2021/11/20(土)~11/26(金)】『フリー・ガイ』『ジャングル・クルーズ』

パズー

今週の上映作品『フリー・ガイ』『ジャングル・クルーズ』は、“ゲームのなか”と“アマゾンのジャングル”のお話。どちらもこれまで何度も映画の舞台となってきた設定です。

共通するのは「非現実」、そして「理想郷」。ゲームのなかでは誰もが自分の思い通りのキャラクターになって、好きな時に好きなことができます。アマゾンに来た探検家たちは、まだ見ぬエル・ド・ラド(黄金郷)に思いを馳せ、ジャングルの奥深くへ進むのです。

『フリー・ガイ』の主人公ガイはオンラインアクションゲームのモブ(背景)キャラ。自分がゲームのプログラムに組み込まれた背景の一部だとは知りもせず、プレイヤーたちの犯罪や暴力にさらされながら平凡な毎日を繰り返すだけ。そのことに疑問すら感じたことのなかった彼ですが、謎の魅力的な女性に出会ったことから全てが変わります。彼女の手助けをしながら、もともと争いを好まない良い人であるガイは、この世界のおかしさに気づき、自分なりの「やさしい世界」を作ろうと立ち上がります。

『フリー・ガイ』は、何でもありの過激なゲームの世界という設定を逆手に取った、「今までの価値観を捨て自分の意志で行動しよう」「戦いはやめてみんなで幸せになろう」という、差別や争いがはびこる現代社会へのアンチテーゼを提示している面白さがあります。“ただただ良い人”であるガイのキャラクターも、今までだったらヒーローとは縁遠い存在だったでしょう。そして、現実とVR(仮想現実)、人間とAIといった、これまで二項対立として描かれたテーマが、その垣根や優劣がもはやなく、ほとんど平等に扱われているところがとても今らしい作品です。

ディズニーランドの人気アトラクション・ジャングルクルーズから生まれた映画『ジャングル・クルーズ』。乗ったことがある人なら、なんとなく「こんな映画なんじゃないかなぁ~」と予想するかもしれません。しかし本作はその予想をいい意味で裏切りながら、ディズニー映画としての王道の雰囲気も持ち合わせた、満足度200%の出来栄えとなっています。

まずすごいのがジャングルへの並々ならぬこだわり。限りなく本物のジャングルを作り上げたセット撮影はディズニー史上最大とも言われているそう。ジャングル映画といえば、かつて当館でも上映したヴェルナー・ヘルツォーク監督の『フィツカラルド』や『アギーレ/神の怒り』やフランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』などを思い出す方もいるでしょう。『ジャングル・クルーズ』は、そんなジャングル映画の傑作たちに引けをとらない、生々しい自然の迫力があり、時に怖さを感じさせるほどです。監督に抜擢されたジャウム・コレット=セラが得意とするハラハラするアクション・スリラーの魅力が存分に活きていると言えます。特に『アギーレ』を意識しているのは明らかで、というのも、重要な役で伝説の冒険家・アギーレが出てくるのだから驚きです…どんな役どころかはお楽しみに。

そして本作もまた『フリーガイ』同様に、今作られる意味を持っている作品でもあります。過酷なジャングルを訪れるのは、未開の地を制圧しようとする屈強な西洋の男性ばかりでした。しかしこの物語で船に乗り込むのは聡明な女性のリリー博士とお洒落が大好きな弟のマクレガーなのです。男ばかりの学会から見向きもされない姉弟と、ムキムキマッチョだけど愛嬌のあるドウェイン・ジョンソン演じる案内人の船長フランクの、凸凹トリオが繰り広げる冒険譚は新鮮な発見ばかり。アマゾンの動植物や先住民への敬意を忘れない彼らの誠実さに感動させられます。

ユートピアへの憧れと未知の世界への好奇心をビッグスケールで表現しながら、現代社会への鋭い目配せも忘れない良質のエンターテインメントである今週の二本立て。いま観てほしい娯楽映画の傑作です!

ジャングル・クルーズ(2D・字幕)
Jungle Cruise(2D)

ジャウム・コレット=セラ監督作品/2021年/アメリカ/127分/DCP/シネスコ

■監督 ジャウム・コレット=セラ
■脚本 マイケル・グリーン/グレン・フィカーラ/ジョン・レクア
■撮影 フラビオ・ラビアーノ
■編集 ジョエル・ネグロン
■音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード

■出演 ドウェイン・ジョンソン/エミリー・ブラント/エドガー・ラミレス/ジャック・ホワイトホール/ジェシー・プレモンス/ポール・ジアマッティ

© 2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

【2021年11月20日から11月26日まで上映】

ジャングルでは目にしたもの全てに命を狙われる――

アマゾンに伝わる不老不死の伝説──<奇跡の花>を手にした者は、永遠の命を手にすると伝えられていた。抜群の行動力と探究心を兼ね備えた博士のリリーは、この秘宝を求めて危険に満ちたアマゾンの旅へ出発する。彼女が相棒に選んだのは、ジャングルに生息する珍しい動物や、スリルあふれる先住民の村、“滝の裏側”などの名所の数々を、ジョーク(ときにヤラセも…)を交えながら観光客相手にガイドする、クルーズ・ツアーの船長フランク。彼にもまた<奇跡の花>を探す“ある理由”があった…。目的地は、「伝説に近づく者は全て呪われる」と言われる、アマゾンの上流奥深くの“クリスタルの涙”。はたして、そこで彼らを待ち受ける、謎に包まれた《恐るべき真実》とは…?

ディズニーのアトラクションを映画化! スリルと興奮に満ちたアクション大作!

ウォルト・ディズニーによる世界で最初のディズニーランドのオープンと同時に作られた“ジャングル・クルーズ”ーーこの超人気アトラクションから生まれた史上空前のスペクタクル・アドベンチャーが誕生した。ミステリアスなジャングルを舞台に、不老不死の力を秘めた<奇跡の花>をめぐる、壮大なスケールの争奪戦が始まる!

フランク船長には『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のドウェイン・ジョンソン。共に冒険するリリー博士を『ボーダーライン』『クワイエット・プレイス』シリーズのエミリー・ブラントが演じる。監督は『フライト・ゲーム』『ロスト・バケーション』のジャウム・コレット=セラ。ドウェイン・ジョンソンとコレット=セラ監督は今年全米公開予定のDCコミック大作『ブラック・アダム』でも再びタッグを組んでいる。

フリー・ガイ(2D・字幕)
Free Guy(2D)

開映時間 10:20 / 15:15 / 20:10(~終映22:05)
ショーン・レヴィ監督作品/2021年/アメリカ/115分/DCP/シネスコ

■監督 ショーン・レヴィ
■原案 マット・リーバーマン
■脚本 マット・リーバーマン/ザック・ペン
■撮影 ジョージ・リッチモンド
■編集 ディーン・ジマーマン
■音楽 クリストフ・ベック

■出演 ライアン・レイノルズ/ジョディ・カマー/ジョー・キーリー/リル・レル・ハウリー/ウトカルシュ・アンブドゥカル/タイカ・ワイティティ

©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

【2021年11月20日から11月26日まで上映】

主人公(ヒーロー)になりたい、すべてのただの人(フリー・ガイ)へ。

ルール無用のオンライン参加型アクション・ゲーム‟フリー・シティ”のモブ(背景)キャラとして、平凡で退屈な毎日を繰り返すガイ。ある日、彼は新しい自分に生まれ変わるため、ありえないほど“いい人”すぎるヒーローとして、プログラムや設定を完全に無視して自分勝手に立ち上がる。ゲーム史上最大の危機が待ち受ける中、はたしてガイに世界は救えるのか…!?

モブキャラが世界を救う?! 全米No.1大ヒットの新感覚アクション・エンターテイメント!

『デットプール』で世界中を虜にしたライアン・レイノルズが、『ナイトミュージアム』「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のショーン・レヴィ監督とタッグを組み、新たな時代が求めるニュー・ヒーローに挑む!

共演は『最後の決闘裁判』「キリング・イヴ」シリーズのジョディ・カマー、『スプリー』「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シリーズのジョー・キーリー、『ゲット・アウト』のリル・レル・ハウリー、『ジョジョ・ラビット』のタイカ・ワイティティ。