2017.11.23

【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック

「ピーター・アイヴァースの映画音楽」

デヴィッド・リンチ監督の『イレイザーヘッド』で、ラジエーターの中で女性が歌うシーンがあります。そこで歌われる曲は素敵なメロディでもあり、ほんのりぬくもりを感じる歌でもありながら、それと同時にただならぬ不気味な感触を持っています。それは外見はどうみても変なところがないのに、わずかな仕草や挙動に「何かが違う」、と妙に気になってしまう感覚に似ていると思います。

そんな劇中曲「In Heaven」は映画のために作られた曲であり、その作者こそ知る人ぞ知るカルトミュージシャン、ピーター・アイヴァースなのです。ハーバード大学出身のインテリで、ハーモニカの名手でもある彼の演奏、ポップさと異端さを体感できる名アルバム「Terminal Love」はいつ聴いてもすばらしいです。「Terminal Love」の楽曲は劇中曲「In Heaven」と比べると、色鮮やかなアレンジや多数の楽器の音で構成されています。しかし喜怒哀楽という言葉だけでは表現できない複雑さは、どちらも同じだと思っています。

さてピーター・アイヴァースファンなら、『イレイザーヘッド』の劇中曲が彼の曲であるのは知っているかもしれませんが、実はロン・ハワードの監督第一作目『バニシングIN TURBO』という映画のテーマソングにもかかわっているのはご存知でしょうか。ちなみに、駆け落ちするために親のロールスロイスを盗んで走り続ける(派手なカーアクションあり)という内容のこの映画には、もともと役者でもあった監督自身が主演しています。ここで使われている「Love In Flight」というテーマ曲はピーター・アイヴァースの中では比較的クセがなく、とても聴きやすいのですが、しっかり彼の醍醐味を感じることができます。

この「Love In Flight」という曲、私が調べる限りでは音源になっていないように思います。どうやらサウンドトラックCDも出ていないようなので、この曲を聴くためには映画を観るしかないようです。でも『ガン・ホー』(1986)や『僕が結婚を決めたワケ』(2010)『ラッシュ/プライドと友情』(2013)と近年でも自動車が大好きなロン・ハワード監督のデビュー作のカーチェイス映画と、ピーター・アイヴァースの楽曲が一緒に聴けるなんて、なんだかお得だと私は思います。

「Terminal Love」Peter Ivers

(ジャック)