2024.08.22

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。

第33回「憧れの悪役-ヴィラン-」

私は幼い頃、ディズニー作品を多く観て育ったのですが、プリンセスに憧れると同時に、悪役“ヴィランズ”にも心惹かれていました。数多くいる魅力的なヴィランズの中でも私が一番好きなのは、アニメ『101匹わんちゃん』のクルエラ・ド・ヴィルです。ダルメシアンの毛皮で上等なコートを仕立てたいという強欲さから犬の誘拐を企てる悪女。白と黒に分かれた特徴的な髪に、モノトーン+赤という王道の組み合わせを堂々と着こなすファッションデザイナー クルエラは、幼心にもカッコいいと感じていました。今回はそんなクルエラが誕生するまでのストーリーを新しい視点を交えて描いた実写映画『クルエラ』(2021)をご紹介したいと思います。

主人公エステラ(後のクルエラ)を演じるのは話題作に引っ張りだこのエマ・ストーン。監督は当館でも上映した『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)のクレイグ・ギレスピー。そして衣装デザインには本作でアカデミー賞を受賞したジェニー・ビーヴァンという豪華な布陣です。物語の舞台は1970年代のイギリス・ロンドン。幼い頃から我の強かったエステラは学校でもトラブルばかり。ある出来事がきっかけで母を亡くし、孤児となったエステラは反骨精神と独創性を活かしてファッションデザイナーになることを決意します。伝説的なカリスマ・デザイナーのバロネスと出会い、才能を見出され活躍するも手柄はすべてバロネスのもの。ある日、彼女が母の死に深く関係していると知り、これまで抑えてきた残忍で凶暴な一面“クルエラ様”へと染まっていくのです。

エステラがクルエラ様へと覚醒し、宿敵バロネスのショーをぶち壊しに行く様はとても痛快! 大胆不敵で神出鬼没。世間の話題をさらう“クルエラ様”が纏うパンクテイストな衣装の数々もこの作品の見どころの一つ。衣装デザインを担当したジェニー・ビーヴァンが1970年代のパンクシーンを牽引したヴィヴィアン・ウエストウッドに影響を受けたと言う通り、その時代性を大きく反映した素晴らしいルックだけでも楽しめます。特に度肝を抜かれたのは、ゴミ収集車から大量のゴミ袋が落とされ、その山から現れるクルエラ様。なんとそのゴミが全てドレスに変身!! 布の切れ端をつなぎ合わせて作られた長いトレーンをなびかせ颯爽と去っていくクルエラ様の美しさに思わず見とれてしまいます。バロネスや社会からゴミ同然の扱いを受けてきたエステラの悔しい、悲しい、怒り、そうした負の感情をファッションデザインとショーに昇華し民衆を魅了するクルエラ様の圧巻のパフォーマンスに憧れを抱かずにはいられません。

最高にクールでダークな世界観で、私をより一層クルエラ様信者にさせた実写映画『クルエラ』。すでに続編の製作が決まっているそうで、オリジナルアニメのクルエラ様に近づくのか、それともダークヒーロー的な新しいクルエラ様になるのか期待が高まります。

(しかまる。)