2024.04.25
【スタッフコラム】馬場・オブ・ザ・デッド by牛
現在当館で上映中の「カラオケ行こ!」は、男子中学生とヤクザの奇妙な友情を描いた青春コメディ作品。普段は激しめの作品を好んで選びがちな私ですが、ほのぼのとした作品も大好き。作中で私が気に入っているポイントのひとつは、綾野剛さん演じるヤクザ・狂児。ヘラヘラしつつも時折見せる“怖い人”のギャップがたまりません。見た目と言動のギャップがある人って、魅力的ですよね。
恐怖映画の中だと、怖そうな人がまんま怖い! ということが多いですが、個人的には、優しそうな人が実は怖い…という時のほうが、怖さが倍増するような気がします。そこで今回は、甘いマスクと怖さのギャップが魅力的な男、ロバート・ミッチャムの出演作から『狩人の夜』『恐怖の岬』をご紹介いたします。
がっしりとした体格に、一番の特徴である眠たそうなお顔立ち。「スリーピング・アイ」の愛称も頷けるセクシー系(?)俳優として様々なジャンルの作品に出演したミッチャムさん。『帰らざる河』(1954)ではマリリン・モンローのお相手役として出演の他、正統派ヒーロー役も多かった一方で、殺人鬼や犯罪者といった悪役もまた似合ってしまう…いや、むしろそんな怖い人間であって欲しいという想いが勝ってしまうのです。
『狩人の夜』(1955)では、ニセの宣教師として行く先々で殺人を犯すシリアルキラー役として圧倒的な存在感を放っています。巧みな話術と物腰の柔らかい風体で、町の人々はどんどん騙されてしまいます。両手の指に刻まれた「LOVE」と「HATE」のタトゥーがこの男の危険さを物語っているのですが、この事実に気付いているのは主人公の少年だけ…。その後、少年は妹と共にこの殺人鬼に追われることになるのですが、歌を歌いながらじわじわと少年たちを追い詰めていくシーンはトラウマ必至。監督は名優チャールズ・ロートンが務め、恐ろしくも美しいモノクロの画面も見どころです。
『恐怖の岬』(1962)では、粘着系ストーカーとしてこれまた強烈な悪役を演じています。8年の刑期を終えたのちに釈放されたミッチャム演じる元受刑者は、自分を刑務所送りにした弁護士に逆恨みし、彼とその家族たちに執着していく…というお話。当の本人だけでなく、奥さんや娘にまで魔の手が伸びる恐ろしさは『狩人の夜』でも見せた狂気そのもの。しかも、今作ではチャームポイントであるムキムキの肉体を惜しげもなく披露。フィジカルでも彼らを追い詰めていくパワフルな恐怖に圧倒されます。ちなみに、のちに『ケープ・フィアー』(1991)というタイトルでリメイクされ、こちらも違った良さを楽しめてオススメです。(監督はマーティン・スコセッシ!)
生涯で数多くの作品に出演してきたロバート・ミッチャム。彼の他の顔も知りたくて出演作を漁ってしまうミッチャムファンの牛なのでした…。あなたはどの顔のミッチャムがお好きですか?
(牛)