2024.03.05
【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。
第31回『“推し”がいる生活』
突然ですが、皆様に“推し”はいますか? これまで自分には縁がないと思っていた推し活ですが、数年前からサッカーチームを応援するようになり、毎試合の観戦はもちろん、日常でもチームカラーを身に付けるようになりました。推し活はこんなにも生活に彩りを与えてくれるのだと知った今では、その楽しさにどっぷり浸かっています。
“推し”といえどもアイドルや役者、キャラクターなど対象は様々ですが、今回ご紹介するユーロス・リン監督作『ドリーム・ホース』(20)で“推し”となるのは、そう…馬! イギリス・ウェールズにある⼩さな村の主婦が一から馬を育て、その馬がやがて村一番の競走馬となった実話をもとに描かれるヒューマンドラマ。鑑賞後、競馬=ギャンブルといったイメージが薄れ、圧倒的な推し活映画として楽しめる1本です。
日々の仕事に加え両親の介護を担うジャン(トニ・コレット)は無気力な夫と二人暮らし。人生が単調でつまらないと感じており、その空気は彼女だけでなく村全体に漂っています。ある日、ジャンは馬主経験のあるハワード(ダミアン・ルイス)から何人かで共同出資をして競走馬の馬主となれる「組合馬主」の話を聞き興味を持ちます。もともと動物を飼うのが好きで鳩レースでも優勝経験のある彼女は、ついに貯金をはたいて馬を購入! 立派なサラブレッド“ドリームアライアンス”を育てるため奔走するジャンの行動力に引っ張られるように、組合になった村人たちまでも人生の輝きを取り戻していくのです。
この物語で強調されるのは、村人たちがレースに求めるものはお金儲けではなく、胸の高鳴り(ホウィル)。「朝、目覚めた時に、ワクワクするものが欲しい。人生が変わると思わせてくれるような何かが」というジャンの言葉は、推しができたことによって世界が広がった今の私にとても響きます。
そして、個人的な注目ポイントは皆の“推し”ドリームアライアンスが初出場するレースへ向かう準備のシーン。各々が気合を入れておめかしする中、蹄柄の靴下を箪笥からとりだしニコニコ顔なおじさまがいるではありませんか! サッカー観戦のときにチームカラーの靴下を履いていく私は思わず、「やっぱり推しが活躍する日に身に着けるファッションアイテムってあるよねぇ~。」と心の中で話しかけてしまいました。ちなみに映画の終盤、ドリームアライアンスが怪我を乗り越え一世一代の大きなレースに出場する際には、蹄柄の靴下がカラフルな色合いに変化しています。推し活ファッションに抜かりないおじさまに釘付けとなり、それはどこで売っているのか、それとも映画のために作られた一足なのかがとても気になる、しかまる。なのでした。
(しかまる。)