2016.08.11

【スタッフコラム】日々是好日(ときどき鉱石) byちゅんこ

雲の峰、という言葉をわたしが初めて知ったのは、超有名老舗メーカー、虎屋さんのお菓子からでした。透き通った水色の空に、むくむくと盛り上がった白い積乱雲。まさしく夏の空を思わせる美しいお菓子は、息を呑むほどに美しく、思わずぼうっと見惚れてしまったのを覚えています。目で見て楽しい、食べても美味しい和菓子。それまでもっぱら洋菓子派だったわたしが、そんな和菓子に初めて心惹かれたのは、谷崎潤一郎のエッセイ『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』を読んでからです。

「玉のように半透明に曇った肌が、奥の方まで日の光を吸い取って夢みる如きほの明るさを啣(ふく)んでいる感じ、あの色あいの深さ、複雑さは、西洋の菓子には絶対に見られない。…(中略)…だがその羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。人はあの冷たく滑らかなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融(と)けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う」。

このちょっと大袈裟とも思える一文は、すべて羊羹に対する描写です。単純なわたしはこの文章ですっかり和菓子にはまってしまい、いまでも『陰翳礼讃』を読み返すたびに、「あ、羊羹を買いにいこう!」と和菓子屋さんへ走るのでした。ちなみに、この雲の峰というお菓子は、一部お菓子好きさんの間ではかなりの人気商品。予約をしないと入手困難です。うっかり者のわたしはいつも予約の期間が過ぎてようやく思い出し、後悔するハメになるのですが、果たして食べられるのはいつになることやら…。

さて、今回紹介します石は、虎屋さんの雲の峰…ではなくて、まるで晴れ渡った空のような色が美しい、天青石(てんせいせき)という石です。名前の通り、淡灰青色のものが多く産出しますが、無色や白色のものも存在します。表面はガラスまたは真珠のような光沢をもち、燃えると赤い光を出すのが特徴です。その性質を利用して、花火や照明弾などにも利用されるそう。

★ちゅんこオススメ今月の切手★

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(ちゅんこ)