2016.10.06
【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック
「和製ミュージカルについて」
突然ですがマキノ正博監督の『鴛鴦(おしどり)歌合戦』が大好きなんです! シネマヴェーラ渋谷で観たのが数年前、それからすぐにDVDを購入。自宅で何度観ようとも変わらぬ幸福感に満たされます。ディック・ミネさんの歌はもちろん、「さ~てさてさて、この茶碗~」と志村喬さんが歌う骨董品紹介ソングも耳に残ります。この歌が一番好きかもしれません。あまりにも好きなので、いつか私に息子が生まれたら喬(たかし)という名前を頂きたいとさえ思っています。
他にも和製ミュージカルで印象的だった作品がいくつかあります。岡本喜八監督の『ああ爆弾』はなんと冒頭から登場人物たちが狂言のような言葉遣いで立ち回ります。そこから続く独特なテンポと拍子抜けするようなユーモアが癖になります。名バイプレイヤー・砂塚秀夫さんの演技も必見です。羽仁進監督の『恋の大冒険』は、ピンキーとキラーズの今陽子(ピンキー)さんのなんだか放っておけないような魅力が全開です。それから映画を彩る楽曲もやはり素敵です。個人的には劇中に登場する動物園を脱走するカバにとてつもない衝撃を受けました。衝撃といえば、鈴木清順監督の『オペレッタ狸御殿』。その自由奔放さに、底知れない映画の力を思い知らされます。私の映画の見方が広がるきっかけになった作品でもあります。
どの作品も、突然人が歌って踊るという普通だったらありえないシチュエーションと相まって、不思議でおかしな世界観を作り出しています。「そんなバカな!」と思うことも、歌と踊りの魅力でさらりと受け入れることができるのです。さて、なぜこんなに和製ミュージカル映画熱が高まっているかというと、観る機会は何度もあったにもかかわらず、タイミングを逃してしまっていた、須川栄三監督の『君も出世ができる』が近々ラピュタ阿佐ヶ谷で上映されるからです! 主演がフランキー堺さんということだけでも傑作の予感がします。
『鴛鴦歌合戦』に出会うまで、あんまり印象になかった和製ミュージカルも、こんなに面白いものがあるのだと気づいた今日この頃。まだまだ観ていない作品もたくさんあるので、私のひそかな楽しみとして少しずつ鑑賞していこうと思います。
(ジャック)