2016.12.15

【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック

「ジャケ買いからの思わぬ出会い」

ある日ディスクユニオン高田馬場店で気になるCDを見つけました。ジャケットの表には黄土色の背景に明らかに英語では書かれていない作者名とタイトル。中央にはうつ伏せの女性を膝に抱え、お尻を叩こうとする男の古ぼけたモノクロ写真が大きく配置されています。片隅に置かれていたこのCD、全く情報を読み取ることができないということと、ジャケットのインパクトに興味を惹かれ、面白半分で購入してみることにしました。

Szoke Szabolcs – Jeles Andrasの連名に『Kedves ismerosok』のタイトル。弦楽器のシンプルな曲が流れたかと思うと、オペラのような発声で女性が歌いだしたりもします。東欧っぽい民族音楽のメロディと、ゆったりとしながらもどこか緊張感あふれる音楽で、聴けば聴くほど癖になります。演劇のサウンドトラックらしく、インナースリーブにある写真には、うっすらと暗い舞台にピンポイントの照明が当たり、独特の雰囲気を作っています。役者の顔や衣装から考えると前衛的な演劇のようです。Szoke Szabolcsが作曲、Jeles Andrasが作詞と演出とのこと。

これ以上何もわからないのでとりあえず文明の力、インターネットで検索してみることにします。Szoke Szabolcs(セーケ・サボルチか?)はハンガリーのミュージシャンらしくブルガリアの伝統的な弦楽器ガドゥルカの達人らしいのです。ゆったりとした弦楽器はこれか! そしてもう一人、Jeles Andras(イェレシュ・アンドラーシュ)はなんと映画監督だったのです! さらに何より驚いたのは去年のカンヌ映画祭グランプリとアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、当館で上映もした『サウルの息子』の監督、ネメシュ・ラースローの父親だったのです! ネメシュ監督の正式名称はNemes Jeles Laszlo。ハンガリー語での名前表記は英語の名・氏の順ではなく、日本語と同じで氏・名の順とのこと。なので国際表記的にはお父様の表記はAndras Jeles(アンドラーシュ・イェレシュ)ですね。

どうやらアンドラーシュ・イェレシュ監督の作品はまだ日本で公開されていないようです。これも何かの出会い。いつの日か、日本でも上映されることを楽しみにしています。

(ジャック)