2017.01.12

【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック

私のロック原体験―「ザ・フォール」

マイケル・ウィンターボトム監督による、マンチェスターのインディーレーベル、ファクトリー・レコードの盛衰を描いた劇映画『24アワー・パーティ・ピープル』では、マンチェスターで行われたセックス・ピストルズのライブシーンがあります。わずか42人という観客の中には、ファクトリー・レコードのオーナー・トニー・ウィルソン、のちにジョイ・ディヴィジョンを結成するバーナード・サムナーとピーター・フック、バズコックスのハワード・ディヴォートなど、そうそうたる顔ぶれが集結していました。本編では語られていませんがその観客の中に、ザ・フォールのマーク・E・スミスもいたのです。

ザ・フォールは1976年に結成され、現在に至るまでなんと40年間も活動しているバンドです。40数人のメンバーチェンジを繰り返し、時期によっては音楽性も変化していますが、唯一のオリジナルメンバーのマーク・E・スミスのボーカルが常にザ・フォールのバンドとしての同一性を保っています。メロディを歌うでもなく、リズムに乗るわけでもない、がなるように言葉をまき散らすスタイルは唯一無二です。音楽に興味を持ち始めて間もないときに、雑誌で紹介されていたことからこのグループのことを知りました。荒削りでシンプルな音楽とマーク・E・スミスの反骨精神は、私にとってのロックというものの原体験になっています。ちなみ
に彼は『24アワー・パーティ・ピープル』に一瞬ですが本人役で出演しています。気難しそうで、近寄りがたい雰囲気をちらっと垣間見ることができます。

また、ジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』ではザ・フォールの曲が使われています。ジョディ・フォスター扮するクラリスがバッファロー・ビルの自宅に乗り込む、緊張感あふれるシーンの背後で「Hip Priest」という曲が流れています(確かバッファロー・ビルが自宅で聞いていたと思います)。この曲は『Hex Enduction Hour』というアルバムに収録されていて、個人的には初期の傑作アルバムだと思っています。ただ、現時点でスタジオアルバムだけで30枚ほどある多作なバンドです。駆け足でザ・フォールのことを知りたい場合は、エルヴィス・プレスリーのベストアルバム『50,000,000 Elvis Fans Can’t Be Wrong』をもじった『50,000 Fall Fans Can’t Be Wrong』というベストアルバムが結成から2003年までを俯瞰していておススメです。もちろん「Hip Priest」も収録!

(ジャック)