2017.08.10
【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック
「エンドロールまで楽しい」
早稲田松竹の仕事で、エンドロール(以下ER)前にスタッフが場内に入り、終映とともに扉を開くという作業があります。そのため何度もERを見るのですが、それでも飽きることなく、聞き入ってしまう音楽と出会うことが多々あります。ERで初めて知ったミュージシャンのことを調べていくなんてことも、映画好きの人たちには心当たりがあるのではないでしょうか。
最近の上映ではウェイン・ワン監督の『スモーク』が印象に残っています。重要なシーンであるにもかかわらず、クレジットがゆっくりと出てくるという贅沢な使い方が、トム・ウェイツの「Innocent When You Dream」と相まって映画の余韻をじわじわと感じることができます。その後のグレイトフル・デッドのギタリストでもあるジェリー・ガルシアが歌うプラターズのカバー曲「Smoke Gets In Your Eyes」もとても良い曲です。実はこちらの曲は『スモーク』の予告編を見た時から目をつけていました。映画の終わりに聞くとやはり素敵です。
グレン・フィカーラ&ジョン・レクア監督のコメディ映画『ラブ・アゲイン』のERもよく覚えています。本編がそろそろ終わるのかなと思っているところから音楽が鳴り始め、なんとその曲が一番盛り上がるところでERになるのです。使われているオーストラリアのバンドThe Middle Eastの「Blood」という曲の効果もあり、滑稽でありながらも苦労や努力を重ねた登場人物たちのことを思い、ERに入ってからも感動してしまいます。こんな曲の使い方があったんだ、と思った瞬間でした。
抜群に素晴らしいERといえば、やはりクエンティン・タランティーノ監督の『デス・プルーフ in グラインドハウス』を取り上げないわけにはいきません。タランティーノ監督お得意のマニアックでダラダラした会話でバネをため、一気に解放するかのようにカーチェイスが繰り広げられる本作。ERで流れるApril Marchの「Chick Habit」がその勢いをますます加速させ、今までにないくらい心が躍るのです。ちなみにERの要所要所で謎の女性たちの写真が挟まれるのですが、これは色味やスキントーンなどを確認するためにフィルムの冒頭につけられているものです。あえてこのテストフィルムの断片をERに入れているタランティーノ監督のフィルムへのこだわりを感じられます。上映の際には取り外してしまうのですが、編集作業のときにはこの映画のことを思い出し、謎の女性たちがいるかどうかを確認するという楽しみが増えました。
・「Innocent When You Dream (Barroom)」Tom Waits(『Smoke』サウンドトラック収録)
・「Smoke Gets In Your Eyes」The Jerry Garcia Band(同上)
・「Blood」The Middle East(アルバム『The Recordings Of The Middle East』収録)
・「Chick Habit」April March(アルバム『Paris In April』収録)
(ジャック)
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