2023.07.06

【スタッフコラム】馬場・オブ・ザ・デッド by牛

小さい頃から暗闇が苦手です。はじめて一人部屋ができたとき、真っ暗闇の中で眠ることができず、明かりをつけていないと怖くて眠れませんでした。思い返せば、映画館の暗闇も苦手で、家族で映画を観に行くのも私だけ嫌々だったり。映画館が苦手だった私が、現在映画館で働いているのはなんともおかしな話ですが、大人になった今でも暗いところにいるとドキドキしてしまいます。

なぜ暗闇が怖いのかと考えてみた結果、先が見えないところに何があるのか分からない恐怖、見えないところから誰かに見られているのかも、という恐怖などなど…視界を奪われることで、不安や心細さといった感覚に意識が集中してしまうからかもしれません。7/29(土)から当館で上映するダリオ・アルジェント監督の10年ぶりとなる最新作『ダークグラス』は、まさにそんな見えない恐怖に焦点を当てた作品です。

舞台のイタリア・ローマでは、娼婦ばかりを狙った猟奇的な殺人事件が発生。コールガールのディアナもまた、不運なことに殺人犯の標的にされ、車の事故に巻き込まれてしまいます。なんとか一命を取り留めたものの、なんと両目の視力を失ってしまうのです。今まで見えてきたものが、途端に見えなくなってしまう絶望と恐怖。病院での痛々しい彼女の姿が目に焼き付きます。盲目となってしまったディアナは、同じ事故で孤児となってしまった少年チンと出会い、一緒に暮らすようになるのですが、その間にも殺人鬼は二人をつけ狙う…というお話です。以前当コラムでも紹介したリチャード・フライシャー監督の『見えない恐怖』だったり、当のアルジェント作品にも『サスペリア』や『シャドー』など、盲目の人物が登場するホラー映画はたびたび存在しますが、『ダークグラス』の恐怖は他の作品とはまた一味違ったもののように感じます。小さい頃に私が怖かったあの真っ暗闇を思い出すような、どこか懐かしい不安と心細さに包まれるのです。

少年と不思議な絆が芽生え、ともに殺人犯に立ち向かっていく二人の姿は、かつてのアルジェント作品にはない、勇気や感動…のようなものが感じ取れるかもしれません。とはいえ、今年で御年82歳のダリオ・アルジェント。殺しの美学はまだまだ衰えることはなく、今作も鮮血度はなかなかえげつないものなので、体調を整えてからのご鑑賞をおすすめします。暑い日が続きますので、ぜひ『ダークグラス』で納涼しに来てください!

(牛)

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