2023.01.26
【スタッフコラム】わが職場の日常 by KANI-ZO
「映画で思い出がぽろぽろ」
只今上映中の『LAMB/ラム』『ザリガニの鳴くところ』。どちらも未見だったのですが、羊とザリガニが醸し出す印象から、癖が強そうな二本立てだなと思っていました。試写で観てみると、このプログラムは私の心にドンピシャに響きました。
『LAMB/ラム』では藁を敷き詰めた羊小屋の情景や、愛情をもって羊を育てる姿にノスタルジーを感じ、『ザリガニの鳴くところ』の主人公・カイアが湿地の中を裸足で土を踏みしめひとり生き抜く姿や、様々な動植物を見つめ続け大人になってゆくその光景が印象的でした。ふと思い出したのは、私の幼少期の出来事です。
幼稚園の年中の頃、私は引っ越しすることになり新しい幼稚園に行きたくないと母に懇願し、半年ほど妹と弟と家で過ごしていました。さすがに見かねた母は、年長になるタイミングで新しい幼稚園に転入させました。初日は今でも記憶に残っていますが、幼稚園の門で行きたくないと泣き叫ぶ私を先生が抱きかかえ、「お母さん!行っちゃってください!」と母を帰したのです。お迎えの時間になり、母が迎えに来ると、私は園庭の隅で友だちとダンゴムシをつついて遊んでいました。母を見つけた私は、朝とは打って変わってケロッとした顔で「みんなと同じカバンが欲しい」と言い幼稚園へ行く気満々になっていたそうです。
この幼稚園では、うさぎ・ヤギ・アヒル・モルモットがいて、みんなでお世話します。長期休暇の際は家でウサギを預かったりもしました。また、田植えや芋ほりでは、裸足で泥だらけになった感触や匂いを今も覚えています。お泊り保育は薪で沸かしたドラム缶風呂等、自然体験もいっぱいでした。普段遊ぶのもドッジボールや木コマ回し、そして園長先生が竹で作ってくれる輪ゴム鉄砲や竹とんぼなど昔ながらのおもちゃで遊びました。全力で遊んだ後の、ヤギのミルクを温めたコーヒーミルクは絶品です。そして何より、わんぱくな同級生たちの個性も強烈で毎日が刺激的だったのです。
一年間だけでしたが、私は今でもあの幼稚園に通えてよかったと思います。母が言うには、私を公園デビューさせた時には、そばで遊ぶ他の子のおもちゃを奪い、更には噛みついたというのです。そんな私はこの幼稚園に通うことで新しい事に出会い、自分の殻を破り大きく成長したと思います。
そんな蘇った記憶は、新しいことや環境へ挑戦する事に対し、腰が重くなっている今の私の背中を押してくれました。映画を観て蘇った記憶が思いがけず、今の自分へ響いてしまうことも映画の面白さのひとつですね。そんな映画と出逢えた今日この頃でした。
(KANI-ZO)