2018.01.11

【スタッフコラム】日々是好日(ときどき鉱石) byちゅんこ

あなたにとって一番好きな映画は何ですか?

私にとって、クシシュトフ・キェシロフスキ監督の作品はちょっと特別なものです。初めて出会ったのは中学一年生のとき。当時仲のよかった友だち五人と家で映画を見ることになったのですが、そのうちの一人が見たいと言ったのが、『トリコロール/青の愛』でした。正直その時の感想は「…?」。まだ幼かった私にとって、ヨーロッパの映画って重いなあ…なんていう感想しか持つことができなかったのですが、数年後に見かえしたときに、まさか自分にとってこんなに大好きな作品になるとは思いもよりませんでした。

好きな映画や小説について個人的な感想を言うのはあまり得意ではないのですが(どちらかといえば心の中でひっそりと大切にしていたい…)、キェシロフスキの映画を見ると、いつもとても些細で小さなものが、まるで沁み込むように胸に入ってきます。『デカローグ』の第一話で、グラスの中でゆっくりとミルクがコーヒーに交じり合うようすや、『ふたりのベロニカ』の主人公ベロニカが持つ星の入ったスーパーボールの向こう側に写り込む車窓の景色。そして、『トリコロール/赤の愛』で忘れられない印象的なシーンがあります。それは、主人公のヴァランティーヌが車で犬をはねてしまったときに、飼い主である元判事と出会うのですが、彼は他人の会話を盗聴しているのです。その行為を責める主人公に、元判事は会話を止めるのですが、「なぜ?」たずねる主人公に対して、彼は「美しい光線が」と答えます。そのとき窓から差し込む光のなんて美しいこと。光はゆっくりと傾き、消えてゆきます。

どれもほんの些細な場面ですが、なぜかいつまでも忘れられず胸に残っています。当館では1/20~1/26まで、クシシュトフ・キェシロフスキ監督作『ふたりのベロニカ』『トリコロール/青の愛』/『トリコロール/赤の愛』『トリコロール/白の愛』を上映致します。この機会にぜひいかがですか?

http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/kieslowski2018.html

(ちゅんこ)