2018.02.01

【スタッフコラム】ごくごく私的偏愛女優たち by甘利類

その21 メッチェン・アミックと『ドレス』『スリープウォーカーズ』

新シリーズも話題のデヴィッド・リンチ製作のTVドラマ「ツイン・ピークス」にて、リンチ演じるFBI捜査官がひと目見るなり「まるで腕のない(ミロの)ヴィーナスのようだ!!」と絶叫してしまったほどの絶世の美人女優、それがアミックです。

とはいえその一挙手一投足に漂うどこか垢抜けない雰囲気のせいか、付きまとってくるのはDV亭主や不良青年などしようもない男たちばかりで、不幸そうな表情の方が印象に残る役でした。でもこんな、超美人+スキのある感じから生まれる絶妙な幸薄感溢れるキャラこそ、この人が最も輝く役なのだと他の出演作でも感じます。

例えば、昨年亡くなったホラーの巨匠トビ―・フーパーの隠れた傑作TVM『ドレス』(90)。身にまとった者のダークサイドを引き出してしまう、古代アステカ文明から伝わる魔性の真紅のケープを巡る本作で、彼女が演じる演劇部の真面目な女子大生は、それと知らずケープを演劇部の小道具のためのドレスに仕立ててしまいます。

試着した彼女は誰もが振り向くフェロモンむんむん美女に変身。そのせいでゲスな男たちと嫉妬にかられた女たちを呼び寄せてしまい、ドレスは奪われ、人々の間を行き交ってどんどん凄惨な事件を引き起こしてしまいます。ドレスを必死で追いかけるアミックは、己の美貌こそが引き金を引いてしまったと自責の念に駆られたかのような痛ましさを湛えていました(やっぱり印象に残るのは半泣きみたいな顔です)。

『スリープウォーカーズ』(92)の彼女もまた激マブかつ悲惨でした。ここではまじめな女子高生の彼女は、処女の精気を吸い取って永年生きながらえてきたヴァンパイア母子に目をつけられてしまいます。かなりB級なホラーながら、誰もいないと思ってバイト先の映画館のロビーで踊り狂う恥ずかしいシーンをはじめ、彼女の残念さを巧みに描くディテールが最高です。

しかもやっとできたはずのハンサムな彼氏は実際には人の顔を被ったバケモノ(二足歩行する白くて太ったトラみたいなもの)で、延々絶叫して逃げ惑うはめに。終盤でバケモノの家に引きずり込まれてしまう彼女は、バケモノの天敵である猫たちの活躍のおかげで間一髪のところを救かるのですが、結果的に両親を含む大量の死傷者を出してしまいます。「もう私にはあんたしかいないよ」と愛猫を抱きしめるアミックの寂しい表情で終わるラストは、彼女のファンでなおかつ猫好きの私にはたまらない名シーンです。

(甘利類)