2022.12.01

【スタッフコラム】うどん粉デザインばなし byうどん粉くん

どんなに好きなモノでも、モチベーションが下がってしまうことってありますよね。僕にとってのデザインもそうです。思っていたようにカタチにできなかったり、手ぐせみたいにこなして退屈な出来になったり、そもそもアイデアが全然浮かんでこなかったり。そんな自分にガッカリして「ダメダメじゃん俺〜」と、つい心の中でツッコんでしまいます。気持ちが地の底まで落っこちてしまったとき、いつも観る作品があります。スタジオジブリの映画『もののけ姫』の制作の舞台裏に密着したドキュメンタリー作品『「もののけ姫」はこうして生まれた。』です。

ジブリ作品が制作されるたび、テレビのドキュメンタリー番組で密着されるイメージがありますが、ここまで最初から最後までを丁寧かつ真摯に追ったドキュメンタリーはなかったように思います。映画の企画立ち上げから映画の完成(アニメーション・音楽・アフレコに至る)、そのあとの宣伝戦略まで、映画製作のすべてが詰まっています。尺は驚異の6時間40分! でも一度観始めたら最後、進むにつれてこちらの気持ちと集中力はどんどん高まっていき(幾度と観ているのに…)、つい完遂してしまうんですよね。どのパートも本当に面白いのですが、特に好きなのはアフレコのシーンです。キャストが声を吹き込むと「〇〇ってキャラクターはこんな人だったんですね~」と、自分が描いたキャラクターと出会えたように喜ぶ宮崎監督がとても可愛らしい。また森繁久彌さんや美輪明宏さんという国宝レベルの俳優と、宮崎監督とのやりとりが最高に面白いんです。

この作品の中で宮崎監督がこんなことを言います。「創りたい作品へ創る人たちが可能な限りの到達点へとにじりよっていく、その全過程が作品を創るということなのだ。」僕はこのにじりよっていくという表現が大好きです。じわじわと根気強く創りたいモノへ近づいていく途方もない忍耐力みたいなものを、このドキュメンタリーの中のすべての人たちから感じるからです。

デザインの仕事を始めて、その感覚が少しだけほんとに少しだけ分かってきたのかもしれません。この作品を観終わったころには、僕もそのにじりよる過程を味わいたいと願ってしまうのです。

(うどん粉くん)