2018.08.16
【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック
「ニック・ロウとにじみ出る人柄」
情報に疎い私は、最近よく聴いているミュージシャンのことを調べている中で「え、今年来日してたの!?」と勝手に驚くことが多々あります。今年の4月に来日したイギリスのミュージシャン、ニック・ロウ(Nick Lowe)の情報も残念ながら後から知りました。
パブロック・バンドのBrinsley Schwarzでの活動からソロとなり、シンプルかつポップ、リズミカルな音楽はいつ聴いても良い曲だなあと思います。何より彼の曲からにじみ出る優しさと、ユーモアを感じる人柄はニック・ロウならではなのです。彼には面白いエピソードがあります。1977年にリリースされたデヴィッド・ボウイ(David Bowie)のアルバム『Low』と同じ年に『Bowi』というミニアルバムを発表、それに味を占めたのか『Low』の2曲目「Breaking Glass」という曲に呼応するように「(I Love The Sound Of) Breaking Glass」なんて曲を作ってしまうあたり、私はニヤリとしてしまいます(曲調は4曲目「Sound and Vision」ぽい)。ジョークで誤魔化しながらも、なんだか物事が良くなるように思えてくるニック・ロウの素敵な曲。次は絶対にライブに行こうと決意しました。また来日して下さい!
さて、ニック・ロウはプロデューサーとしても有名でエルヴィス・コステロの初期の作品を手掛けています。どうやら友好関係は続いているようで、近年のニック・ロウのアルバムにもエルヴィス・コステロの作った曲が含まれています。そんなコステロがカヴァーしたニック・ロウの「(What’s So Funny ‘Bout) Peace, Love, and Understanding」という曲は、なんとソフィア・コッポラ監督の出世作『ロスト・イン・トランスレーション』に使われています。スカーレット・ヨハンソン、ビル・マーレイ、そして日本の友人たちとカラオケをするシーンでビル・マーレイが熱唱しているのがこの曲です。
劇中でのビル・マーレイの歌は、上手とはいえませんがなんともとぼけた味わいのある雰囲気があります。なんだかんだ、歌い方には人それぞれの人柄が出てしまうのかなあ、なんて思いました。そういえば、『ヴィンセントが教えてくれたこと』のエンディングでもボブ・ディランの曲を歌っています。私はビル・マーレイの歌も嫌いじゃないです。
『Quiet Please – The New Best Of Nick Lowe』 Nick Lowe (2009)
(ジャック)