2018.09.06

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。

第3回 金魚の赤とワンピース

お祭りや花火、浴衣にリンゴ飴と膨らむ妄想は多々あれども、夏らしいことができないまま秋を迎えそうなしかまる。です。

私は私服ではモノトーンが多いのですが、唯一派手な洋服があります。それは、真っ赤なノースリーブのワンピース。ヒラヒラとしたプリーツと発色の良い赤い色に、夏らしく涼やかなシフォンの素材。夏にしか着られないので、ここぞとばかりに出動させていたのですが、もうクローゼットに仕舞わなければならないのかと思うと、季節の変わり目を感じます。そして一目ぼれして衝動買いしてしまったほど、お気に入りのワンピースはある映画の登場人物の服装に似ているのです。

その映画とは、『蜜のあわれ』。「人を好くということは、愉しいことでございます。」というセリフで有名な室生犀星の同名小説を実写化したもの。物語のほとんどは犀星の分身のような“おじさま”と赤い金魚“あたい”の会話で構成されています。金魚の“あたい”は少女に化け、赤井赤子と名乗り人間界に溶け込もうとしますが、お転婆で小悪魔的な性格はおじさまを困らせてばかり(というのも老作家が作り出した幻想なのですが)。その不思議で耽美な世界観と映像美は何度観ても画面に引きこまれる魅力があります。

二階堂ふみ演じる赤子の衣装はどれもヒラヒラと揺れ動く尾ひれを意識したデザインになっていて、思わず目を奪われてしまいます。映画にはダンスシーンがいくつかあるのですが、その赤い衣装を着て本物の金魚のように可愛らしく、かつ妖艶に踊る姿は必見です。また、スカートや袖の丈、布の色などが赤子の成長に合わせて変化していく様など衣装へのこだわりが随所に散りばめられているのでその変化に注目してみるとより一層映画の世界観に浸れるような気がします。
(衣装デザイナー澤田石和寛氏のコメントはこちらの記事で読むことが出来ます↓
参考記事:https://www.cinemacafe.net/article/2016/02/23/38090.html

余談ですが、この映画を観た後に、赤いワンピースと運命の出会いをした私はある事を思いついてしまいました。このワンピースを着て金魚を見に行ったらなんて充実した日になるのだろうと…。そう、ただの自己満足なのですが、こうして映画の登場人物や雰囲気に想いを馳せながら服を選んで出かけるのは何とも趣があり、愉しいものなのです。

(しかまる。)