2022.11.10

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。

第25回『運命の出会いは突然に…』

私はもともと視力が良い方だったのですが、メガネをかけている人に憧れ過ぎて自分の視力が悪くなればいいのに…と願ってしまうほどのメガネフェチ。そんな思いが通じたのか、または照明が暗めの机で勉学に勤しんだ影響か、今ではもうすっかりメガネなしでの生活は考えられないほど視力が落ちてしまいました。それにも関わらず、ケースに入れずに持ち歩いたり、床に置いたままうっかり踏んづけてしまったりと散々
な扱いをしてしまい、これまでに何度もメガネを買い替えています。

今年の4月、そんな私に最大のピンチが訪れました。ヒューマントラストシネマ渋谷で開催されていたジャック・リヴェット映画祭へ足しげく通っていた時のこと。まさにこれから映画を観るぞ! という時にネジが緩くなってしまい、少しでも触れようものならバラバラになりそうなほど。そんな緊張感のなか鑑賞したのは忘れもしない『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(当館では2022年9月に上映)です。

ジャック・リヴェット作品は上映時間が長く、心も(メガネも)折れかけていました。そんな気持ちを吹き飛ばすほど私が夢中になったのは、なんといってもセリーヌとジュリー二人のファッション。映画は公園のベンチで司書のジュリーが魔術書を読みながら呪文をブツブツとつぶやくシーンから始まります。上品なブラウンとホワイトのステッチが印象的なホルターネックのワンピースに、太くて高いヒールつきのレザーサンダルは夏のワントーンコーデのお手本にしたくなります。そして忘れてはならないのが、ジュリーがかけていたメガネです。全体の上品な印象に合わせるなら、今流行っているような細い金属のフレームにしてしまいそうなところですが、ジュリーはプラスチックのクリアフレームを合わせ涼やかな夏のコーデを完成させているのです。そんな遊び心に序盤からキュンとしてしまった私は、次のメガネは絶対にクリアフレームにするぞ! と心に決めて映画館を後にしました。

そうして手に入れたピカピカなメガネは夏の間、私のファッションの軸として活躍し今では良き相棒となりました。よく、高いものを買えばおのずと丁寧にモノを扱うようになると聞きますが、私にとって一番効くのは金額ではなく、こうした運命的な出会いなのだ! と思う、しかまる。なのでした。

(しかまる。)

©1974 Les Films du Losange