2022.09.01

【スタッフコラム】シネマと生き物たち byミ・ナミ

突然ですが、皆さん、セミはお好きでしょうか? 私は昆虫の中で結構上位に入るほど好きなのですが、大人になってからというもの、周囲にセミが苦手な人が多くなったような気がします。特に、早稲田松竹にはセミの鳴き声を聞くのも無理というスタッフもいて、好みは実に人それぞれだと感じたものです。

自分の大好きな季節である夏を象徴するから、ミンミンゼミという種類のセミと私の名前が似ていて親しみがあるから…などなど、セミを好む理由はいろいろあるのですが、最大の魅力は何と言っても細工物のような抜け殻や、羽化の瞬間の美しさではないでしょうか。以前住んでいた家の周りにはセミが大量に生息していて、夏になれば虫かごいっぱいに抜け殻を集めてはほくそ笑んでいたのですが、ある夜の帰り道、ふと木の幹に目をやると、今まさに羽化したばかりというセミが静かにぶら下がっていました。その薄い緑がかった水晶のような色合いと言ったら…! 思いがけない夏の宝石に、しばし見とれてしまったことをよく覚えています。

しかし、こんなセミに対する抒情を大いに吹き飛ばす映画をみつけてしまいました。タイトルは何と『セミマゲドン』。薬の影響で突如凶暴化した巨大セミたちが人間を襲撃し、落ちぶれてしまったメジャーリーガーたちがセミ退治に挑んでいくという、最近ネットで配信が始まったばかりのアニマル・パニックムービーです。注目すべきはセミの描写。人間の首を狙って攻撃してくる邪悪さはあるものの、作りもの感満載の何とも味わい深いセミで、そこが不気味さを醸し出しているため、抒情も何もあったものではないところにパニック映画らしい面白さがあります。本作のセミは何という種類なのか、フィクションとはいえ大いに気になったため少し調べてみたところ、近年アメリカでは、最終的に数十億匹に達するほどの膨大な数で大量発生する「ブルードX」という周期ゼミの害が問題となっているのだそうです(*)。画像を見る限り、目の赤さなどからこのセミが巨大化したのが『セミマゲドン』のセミたちなのかもしれません。

セミに好感しかなかった私としては、『セミマゲドン』を観て自分が抱くイメージと他者のそれとのギャップに改めて感慨深くなりました。考えてみれば、私が大の苦手なカエルを愛好する方々も多いのだから当然なのでしょう。人の好き好きの多様さを改めて知った、2022年の夏の終わりでした。

(*)
https://wired.jp/2021/05/26/we-hiked-along-with-cicada-biologists-so-you-dont-have-to/

(ミ・ナミ)