2022.06.23

【スタッフコラム】シネマと生き物たち byミ・ナミ

コロナ禍もすでに二年目を過ぎた今日この頃、今までのように旅行もしてみたい…と考える方も多いと思われます。私はもちろん、第二のふるさと・釜山のことをずっと夢想しているのですが、先日観た映画のおかげで、とあるヨーロッパの国へ関心が高まっています。今日ご紹介する一本は、ハンガリー映画『プスタ(大平原)に生きる馬たち』です。

「プスタ」とは、「草原」を意味するハンガリー語で、中央ヨーロッパ西部から東ヨーロッパにかけての大平原のこと。ハンガリー東部のドナウ川とティサ川の流域にあるこの大平原は、畜産や農業も盛んである一方、国立公園として多種多様な野生生物の生息地にもなっているそうです。『プスタ(大平原)に生きる馬たち』の主人公は、ハンガリーのホルトバージ国立公園で生きる野生の希少種モウコノウマの雌の仔馬ドット。映画はドットが生まれてから成長していく姿を、数年かけて撮影しています。

モウコノウマとは、1879年に中央アジアで発見された野生の馬です。元々モンゴルに多く生息していたのですが、様々な理由により野性では絶滅の危機に瀕してしまいました。25年前、数頭がハンガリーに移され、今では世界最大の群れのひとつになっているそうです。モウコノウマは、スマートで洗練された印象のサラブレッドとはまた異なる持ち味があります。競走馬より小柄でありながらがっしりとした体つきや、ブーツを履いたような黒い脚元、短くて直立したたてがみには野生種ならではといった強さが感じられます。それでいて、本作のドットがそうであるように、仔馬のときは厚く白い体毛に覆われていて非常に愛くるしいのです。ドットが暮らす群れでは他にも仔馬が生まれていて、彼ら彼女らがお互いの歯を櫛のようにして毛づくろいするシーンには癒し効果抜群…! 抜けた毛が歯に挟まって糸ようじのようになってしまっているのも愛嬌たっぷりでした。

ちなみに日本では、東京・日野市にある多摩動物公園でモウコノウマに会えます。動物園もやっと予約なしで入園できるようになったので、まずは近いところで彼らに会いに行ってみようかなと思っています。

(ミ・ナミ)