2022.03.17
【スタッフコラム】馬場・オブ・ザ・デッド by牛
第6回 「恐怖のドライブ」
恐怖映画の定番「殺人鬼に追われる」という体験は非日常でありながら、どこか「自分にも起きてしまうのではないか?」という身近な恐怖心を煽られます。たとえば『悪魔のいけにえ』(74)では、平凡な若者たちが突如殺人鬼と対峙する羽目になります。殺人鬼ことレザー・フェイスとの追いかけっこはホラー映画史に残る名シーンですよね。そんな恐怖の醍醐味である“追いかけっこ”が印象的な作品を1本をご紹介いたします。「絶対にこんな目に遭いたくない!」と私が心の底から恐れ戦いたロバート・ハーモン監督『ヒッチャー』(86)です。
ストーリーはというと、至ってシンプル。嵐の中のハイウェイを走行中の若者が、1人のヒッチハイカーを車に乗せると、それはめちゃめちゃヤバい殺人鬼だった! というお話です。この映画のすごいところは、映画がはじまった瞬間に恐怖のどん底に陥れられるスピード感。冒頭数分ほどでルトガー・ハウアー演じる殺人鬼ジョン・ライダーのサイコパスっぷりが露わになり、車に乗せるや否や、主人公はいきなりピンチに陥ってしまいます。一瞬の隙をついて、何とか彼を車から追い出すことに成功しますが、安心するのも束の間。その後ひたすらに追われ続けるというわけです。
とにかく、主人公の行く先々に現れる神出鬼没なジョン・ライダー。ある時はすれ違った車の車窓から。ある時は泊まったモーテルに。また、ある時は食べていたポテトが…(ポテトがどうなったのかは是非映画でご確認ください。)しかし、これだけ執着されてもなぜだか殺されない。目的のわからない彼の不気味な行動、「いつ奴が出てくるのか?」という主人公の恐怖と絶望をド派手なアクションを交えながら描いた傑作です。追われ続けた1人の不運な青年の運命やいかに。殺人鬼との死闘の行く末は必見です!
それにしても、シカゴからサンディエゴという長~い道のりを殺人鬼に追いかけられた彼。こんな長距離を追いかけっこした主人公は彼の他にはおそらくいないでしょう。もし、ドライブする際は、怪しいヒッチハイカーの男を迂闊に乗せないように心掛けたいですね。
(牛)