2021.10.13

【スタッフコラム】わが職場の日常 byKANI-ZO

「倉庫のポスターでタイムスリップ」

猛暑も過ぎ去り、早稲田通りを歩く人々の装いも秋めいてきた日も多くなりました。早稲田松竹の奥には、夏場は暑くて誰も寄り付かない倉庫があります。そこにあるのはパンフレットや資料用の本、書類や映写機材のストック、取り換え用座席。またどこからやってきたのかギターや撮影用の照明、隙間にはオギノアートもありにぎやかです。

中でも、スタッフがなるべく触れないようにしていたものがあります。それは、あいうえお順に積み重ねられたポスターです。20年分という長い年月平積みされ続け、高さ1メートルにも達し、断面はまるで地層のようです。当館では、一度上映された作品も再上映されることがあり、その山から取り出します。新人スタッフはグニャグニャと扱いにくいポスターをヒーヒー言いながら掘り返します。紙ですが、何枚も重なるとかなりの重さ。最下層の“わ行”の作品を取り出すとなると、誰もが苦い顔で渋々作業に向かうような嫌な作業なのです。

この度、涼しくなってきたのでついに私は重い腰を上げ、総数約4000枚ものポスターの整理に着手しました。整理方法は平積みしていたものを取り出しやすいように小分けにして、ポスターケースに収納していきます。

気が付けば5日が経過。100を優に超えるナンバリングされたポスターケースに囲まれ、倉庫で作業をしていると、とあるスタッフが私の作業姿を見て声をかけてきました。

「KANI-ZOさん!探検家みたいですね!」

床に広げられたナンバーシートと、黙々と作品名を用紙に記入する光景に、私が、ミステリーコードに挑むトレジャーハンターに見えたそうです。

ポスターをめくるたび、色々と思い出します。新人の時、初めての長尺作品の試写を一人で行い自信をつけ、アンゲロプロスの凄さを知った『旅芸人の記録』。沢山のお客様で賑わい、案内に右往左往しながらもコスプレまでやった『キック・アス』。ポスターをめくるたびに当時の記憶や気持ちがよみがえり様々な時代にタイムスリップしてしまいます。

「そうだ…私は地層を掘り、記憶を探る探検家なのだ。」

今週上映の『スプリング・ブレイカーズ』も倉庫から出したポスターを掲示しています。ポスターを見るとオープニング曲「Scary Monsters and Nice Sprites 」のイントロが頭によぎります。そして、フジロックで雷が光り雨が降る中Skrillexを間近でみた、あの夏の記憶がよみがえりました。

ポスターの整理は大変だったけれど、ちょっとしたタイムスリップ体験ができたポスター整理でした。

(KANI-ZO)