2019.05.02

【スタッフコラム】日々是好日(ときどき鉱石) byちゅんこ

この時期、今か今かと発売を楽しみにしているぶどうのお菓子があります。それは共楽堂さんの「ひとつぶのマスカット」です。朝摘みの新鮮な「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を熟練の職人さんがひとつずつ丁寧に求肥で包んだお菓子です。初めてこのお菓子を食べたときの衝撃はいまでも忘れられません。むちっとした薄い求肥を噛み締めたとたん、口の中いっぱいに瑞々しいマスカットの実が弾けます。果物そのままのおいしさを存分に楽しめるのですが、ただ果物を食べているだけとはまたちょっと違う、「贅沢なお菓子」なのです。販売期間は5月から9月中旬の間だけ。マスカットの他にはピオーネと紫苑(しえん)バージョンもあって、それぞれ期間限定ですがとてもおいしいです。

ぶどうといえば、イソップ寓話の「すっぱいぶどう」を思い出します。

お腹を空かせたきつねが歩いていると、おいしそうなぶどうが枝から垂れているところに通りかかりました。きつねはどうにかしてぶどうを取ろうと、爪先立ちしたり、飛び跳ねてみたりしたものの、どうしても取ることができません。しばらくして、じーっとぶどうを眺めていたきつねが言いました。「ふん、あんなぶどうおいしくないや。まだ、すっぱくて、食べられやしない」ぶどうを睨みつけると、そのままどこかへ行ってしまいました。(『イソップ童話』より)

自分のものにしたくてたまらないにもかかわらず、努力しても到底かなわない対象である場合、人はその対象を「価値の無いもの」「自分にふさわしくないもの」と見なそうとして、それをあきらめの理由として納得し、心の平安を得ようとする…。フロイトの心理学では、これを防衛機制および合理化の例とするそうです。この物語のことを思い出すたび、私はこのきつねは本当にぶどうを諦めることができたのかな、実は甘かったかもしれないぶどうのことをずっと考えていたんじゃないだろうかと想像してしまいます。そう考えてしまう私は、合理的でもなんでもなく、非常に諦めが悪いということなのかもしれませんね…。

(ちゅんこ)