2021.04.14

【スタッフコラム】この推しスター! byパズー

今月の推し「フランシス・マクドーマンド」

2018年の米アカデミー賞は記憶に残るものでした。なかでも今回ご紹介するフランシス・マクドーマンドのスピーチは忘れられません。『スリー・ビルボード』で二度目の主演女優賞を受賞した彼女は、ベリーショートのヘアスタイルにノーメイクで登壇し、各賞にノミネートされた女性たちに立ち上がるよう求め、拍手を送りました。「私たちは伝えたい物語があり、資金が必要なプロジェクトがある。でも今夜のパーティーではそのことで話しかけないで。近いうちにオフィスでね。」というような言葉を添えて。2017年にはじまった#MeToo運動の渦中での授賞式で、堂々と女性たちをエンパワーする姿に感動しました(彼女の言葉に飛び跳ねるほど興奮していた最前列のメリル・ストリープにも)。

世間的には長らく“コーエン兄弟作品のミューズ”、もしくは“ジョルジュ・コーエンの妻”として知られていたフランシス・マクドーマンド。かくいう私も、身重で殺人事件を追う警察署長を演じ、初めてアカデミー賞主演女優賞を獲得したコーエン兄弟の代表作『ファーゴ』(96)で彼女の名前を覚えました。コーエン兄弟作品でのフランシスは、作品のユニークさもあっていつも輝いているし、『あの頃ペニー・レインと』(00)の過保護なママや、『スタンドアップ』(05)の男前な同僚など、印象的な脇役を数々演じています。けれど、最新のロングインタビューを読むと(インタビュー嫌いのフランシスにとってかなりレアだといえます)、『ファーゴ』の役の印象がずっと抜けないことや、長年バイプレーヤーであることへの葛藤があったようです。マイペースで充実した俳優人生を送っているのかと思っていたので少し驚きましたが、主演女優賞を総なめにした『スリー・ビルボード』や、企画から参加しエミー賞に輝いたテレビドラマ『オリーヴ・キタリッジ』(14)の栄光を掴むまでには、長い戦いがあったのです。確かに、往々にしてルックスや若さばかりが女優に求められてきたハリウッドにおいて、名脇役のイメージが定着していたフランシスが50歳を超えてキャリア最盛期を迎えることはすごいこと。やっと本当の意味で変わりつつある映画業界を体現しているのが、フランシス・マクドーマンドという存在なのかもしれません。

そして現在63歳になる彼女の新たな代表作が、日本でも公開が始まったばかりの『ノマドランド』。アメリカで社会問題となっている、車上生活を送る高齢の季節労働者たちを題材にしたロードムービーです。本作でも自ら企画に関わり、中国系アメリカ人女性の新鋭クロエ・ジャオに監督をオファー。いろいろな面で型破りな作品ですが、今年のアカデミー賞では作品賞本命といわれています。

次回作は古巣(というかいつも傍にいるはずですが)コーエン兄弟の監督作品で、なんとシェイクスピアの「マクベス」の映画化。マクベス夫婦をフランシスとデンゼル・ワシントンの最強タッグが演じ、戯曲に忠実なままスリラー映画になるそうです。その情報だけでもうワクワクが止まりません♪

(パズー)