2022.12.22
【スタッフコラム】早稲田松竹・トロピカル・ダンディー byジャック
『まだまだ紹介したい! 私の好きな映画音楽 2022番外編』
今年も残すところ数えるくらいの日数となってきました。このコラムでは毎回、当館で上映した映画の中で使われていた音楽をご紹介してきましたが、今年の作品で紹介し切れなかっ
た印象的なものがまだまだあります。なので、突然なのですが、今年のうちにざっくりとピックアップしてみたいと思います。
以前このコラムでも取り上げた『コレクティブ 国家の嘘』。そのときはEliane Radigueというミュージシャンについて紹介したのですが、実はもう一人気になった人物がいました。Thomas Könerというミュージシャンで、「Nuuk」という曲の一部が使われています。こちらの曲はグリーンランドの都市ヌークをテーマに作られており、寒々とした空気、凍てつく風を想像させるようなアンビエントミュージックとなっています。Eliane Radigue同様、抽象度の高いとても素晴らしい音楽です。
『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』のエンドロールで使われていた曲も印象的です。かなり際どいジョークや皮肉にあふれていた映画なのですが、
エンドロールで流れる「In Order to Tell」という曲の、からかわれているかのような雰囲気と脱力感に、はしごを外される感覚というか、なんだか肩透かしを食らったのを覚えて
います。こちらはM.A. Numminenというフィンランドのミュージシャンの曲で、音楽だけでなく、様々なジャンルで活躍するアンダーグラウンドシーンの重要人物のようです。
シャンタル・アケルマン監督特集のときに上映した『オルメイヤーの阿房宮』。劇中とエンドロールで「Sway」という曲が流れていました。もともとはラテン音楽のスタンダードナンバーであり、スペイン語で歌われていた「Quién será」という曲の英語カバー版です。歌っているのはジェリー・ルイスとのコメディコンビ、フランク・シナトラのグループへの参加、そして『リオ・ブラボー』などで俳優としても活躍したディーン・マーティン。エキゾチックな魅力はもちろん、薄明かりの照明とグラスの中で鳴る氷を連想してしまうほど、ムード満点でかなり好みでした。
さて、年末だけに慌ただしく紹介していまいましたが、勝手にスッキリ(?)しています。知っている曲も知らない曲も、気になったものは映画の鑑賞後、なんだか聞きたくなってし
まいます。来年もそんな素敵な音楽を探していきたいです。
Thomas Köner『Nuuk』(2004)
M.A. Numminen『Sings Wittgenstein』(2003)
Dean Martin『The Essential Dean Martin』(2014)
(ジャック)