2022.04.07

【スタッフコラム】しかまる。の暮らしメモ byしかまる。

第22回「理想と現実のはざまで」

いまの季節、アパレルショップにはこれぞファッションの楽しみ! と思えるポップで明るい色とりどりの服が並び、ふらっとお店に寄るつもりが、あれもこれも…と楽しくなってついつい長居してしまうこの頃です。

さて、カラフルなファッションが特徴的な映画と言えば色々とありますが、私が真っ先に思い浮かぶのはジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督作品『ルビー・スパークス』です。大学生の頃、DVDのパッケージの可愛さに惹かれ鑑賞したのですが、そのハッピーなイメージからは想像できないほど狂気的な演出がいまでも印象に残っています。

この映画の主人公であるカルヴィン(ポール・ダノ)は、若くしてヒットに恵まれたものの、プレッシャーからスランプに陥っている小説家。かかりつけの精神科医の勧めもあり、彼は夢に出てきた女性にルビーと名づけ新しい小説を書き始めます。今までのスランプが嘘だったかのように寝食も忘れて文筆作業に没頭していると、ある日突然その女性ルビー・スパークス(ゾーイ・カザン)が現実に出現してしまったのです! カルヴィンの理想の女の子として現実世界に飛び出してきたルビーのファッションは「常に新しいことを探している」という設定が反映され、とてもカラフル。青いワンピースに紫のカラータイツ、ターコイズブルーのカーディガンに赤いデニムなどなど、観ているこちらも次はどんなファッションで出てくるのかワクワクさせられます。

そんな楽しい時間も束の間、自分の意志で現実世界を楽しみ始めたルビーは、カルヴィンに少し距離をおきたいと言い始めます。そこで彼は「ルビーはカルヴィンなしでは生きられない。」と文章に付け足し、実際にルビーは四六時中、何をするにも離れなくなる性格に変わってしまいます。そこから自分の思い通りにならない部分を見つける度に彼女を微調整していくカルヴィン。愛する人が離れてしまうかもしれないという不安から、相手を支配していく様はまさに狂気です。

この映画を見直してみて、自分も同じようなことをしてしまったなぁ…と思い出したことがあります。それは、主人公カルヴィンのようなアースカラーの服が多い恋人に鮮やかな赤や青の靴下をプレゼントした時のこと。その場では喜んでくれたけれど、結局使っているところは見たことがありません…。そう、私は少しでも色を使ったファッションを楽しんでほしい! という自分の理想を相手に勝手に押し付けていたのです。人との違いを受け入れる大切さを教えてくれる『ルビー・スパークス』は出会いが多くなるこれからの季節におススメの一本です。

(しかまる。)