今週お届けする作品は、『ブリグズビー・ベア』と『ワンダー 君は太陽』。
優しさに溢れていて、とっても愛しい物語の二本立てです。
『ワンダー 君は太陽』の主人公、オギーは10歳。 普通の人とは違う顔で生まれたけれど、 優しい家族から愛情をたっぷり受けて育ちました。 意を決して踏み入れた外の世界は、茨の道。 心ない言葉や冷たい視線、時には裏切りを感じ、 逃げたくなるような現実がオギーを苦しめます。
周りの誰かとうまくいかないときって、 人はどうしてもネガティブに考えがちですよね。 「どうせ僕なんて」と卑屈なオギーですが、 自分がどれだけ悲しい思いをしているかということにばかり目がいって、 相手がどう思っているのかとまでは考えられません。 だけど、それってみんな同じ。 相手のことが分からなくて怖いから互いに壁をつくってしまうんですよね。 映画ではオギーだけではなく、周囲の人たちの心の動きも丁寧に描かれています。 傷ついて悩んでいるのは、自分だけじゃない。 勇気を出して向き合えば、人は分かり合えるのだと教えてくれます。
いっぽう『ブリグズビー・ベア』の主人公、ジェームスは25歳。 一見、歳相応の大人に見えるけれど、育った環境は普通じゃありません。 25年間ジェームスを育てたのは、偽の父母と、 その父が作った教育番組「ブリグズビー・ベア」でした。 わけのわからぬまま両親と引き離され、 “本当の家族”の元に戻ったジェームスは、一変した世界に混乱するばかり。 実の両親は「普通」の生活を取り戻させたいと願うけれど、 ジェームスは「ブリグズビー・ベア」に夢中のままなのです。
幼いジェームスを誘拐した偽の両親が作り、彼に毎日観せていた偽教育番組ですから、 はたから見れば「ブリグズビー・ベア」って、まるで洗脳教材です。 どれだけ「ブリグズビー・ベア」が面白くて、 ジェームスにとって大切な存在か、なかなか周囲の人には理解してもらえません。 現実世界には存在しない「ブリグズビー・ベア」の新作を見ることができないと知り 落胆したのも束の間。ジェームスは自ら物語の続きを求め、 劇場版「ブリグズビー・ベア」の制作に取り掛かります。 彼の熱心な姿、純粋な「ブリグズビー・ベア」愛にほだされた周囲の人たちも 一緒になって、撮影に没頭してゆきます。 なんだか終始おかしな話ですが、この物語を観ていると、 大人になればなるほど忘れがちな、自分の信念を貫くことの大切さに気づかされます。
内なる世界では自由に羽ばたけるのに、 「どうせ分かってくれないから」と、 自分の殻にこもってしまうのはよくあること。 オギーもジェームスも、そんな殻を破り、未知なる世界へと踏み出します。 その一歩は、きっとあなたの心に大きな感動を与えてくれるでしょう。
ブリグズビー・ベア
Brigsby Bear
(2017年 アメリカ
97分 シネスコ)
2018年12月22日から12月28日まで上映
■監督 デイヴ・マッカリー
■脚本 ケヴィン・コステロ/カイル・ムーニー
■撮影 クリスチャン・スプレンジャー
■編集 ジェイコブ・クレイクロフト
■音楽 デヴィッド・ウィンゴ
■出演 カイル・ムーニー/マーク・ハミル/ジェーン・アダムス/グレッグ・キニア/クレア・デインズ/マット・ウォルシュ
■2017年サンダンス映画祭グランプリノミネート/ナショナル・ボード・オブ・レビュー インディペンデント映画TOP10受賞
© 2017 Sony Pictures Classics. All Rights Reserved.
砂漠の中、隔離された空間で、両親と3人だけで暮らす25歳の青年ジェームス。子どもの頃から毎週ポストに届く教育ビデオ「ブリグズビー・ベア」を見て育った彼は、「ブリグズビー・ベア」がたった一人の友達であり、生きがいだった。ある日、突然現れた警察が、両親を連れて行ってしまうまでは――。
両親だと思っていた2人は、赤ん坊のジェームスを誘拐していたのだった。本当の両親や妹のもとに戻ったジェームスは、何もかも初めての出来事に困惑するが…。
監督・脚本・主演は、中学の同級生の幼馴染、デイヴ・マッカリー、ケヴィン・コステロ、カイル・ムーニーの3人。デイヴとカイルは「サタデー・ナイト・ライブ」で大活躍したコメディユニット<GOOD NEIGHBOR>のメンバーでもあり、他メンバーもプロデューサーとしてタッグを組んだ本作は、外の世界を知らない純粋な主人公に心を動かされた家族や友人、果ては彼を保護した警官が、熱い想いに打たれてひとつの目的に向かう、愛と友情、適応と再生の物語だ。サスペンスフルな入り口のストーリー展開からは予想できない、ハートウォーミングなエンディングが待っている。
脇を支える役者陣は、『スター・ウォーズ』シリーズの“ルーク・スカイウォーカー”ことマーク・ハミル、幾多の受賞暦を持つ海外ドラマ「HOMELAND」のクレア・デインズ、『リトル・ミス・サンシャイン』のグレッグ・キニアと実力派揃い。
傑作SF映画へのオマージュと古き良きVHS愛を感じる「ブリグズビー」の世界観にクスリとしながらも、胸にしっとりと残る温かいラストに心癒されるだろう。
ワンダー 君は太陽
Wonder
(2017年 アメリカ 113分 シネスコ)
2018年12月22日から12月28日まで上映
■監督 スティーヴン・チョボスキー
■脚本 スティーヴン・チョボスキー/スティーヴ・コンラッド/ジャック・ソーン
■原作 R・J・パラシオ「ワンダー」(ほるぷ出版)
■撮影 ドン・バージェス
■編集 マーク・リヴォルシー
■音楽 マーセロ・ザーヴォス
■出演 ジュリア・ロバーツ/ジェイコブ・トレンブレイ/オーウェン・ウィルソン/イザベラ・ヴィドヴィッチ/ダヴィード・ディグス/マンディ・パティンキン/ダニエル・ローズ・ラッセル/ナジ・ジーター/ノア・ジュプ
Motion Picture Artwork © 2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
「僕は普通の10歳の子じゃない」――オギーは遺伝子の疾患で、人とは異なる顔で生まれてきた。度重なる手術のために自宅学習を続けてきたオギ―だが、両親は息子を外の世界へ送り出そうと決意する。だが、5年生で入学した学校で、オギーはいじめや裏切りと出会ってしまう。それでも、ありったけの勇気と知恵で立ち向かうオギーの姿に、周囲の人々が変わり始める…。
全米で公開されるや絶賛の声が拡がって5週連続トップ5入りを果たし、全世界興収300億円超えの大ヒットとなった『ワンダー 君は太陽』。原作は、新人作家R・J・パラシオのデビュー作にして、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト第1位を獲得し800万部突破を成し遂げたベストセラー小説だ。
主人公オギーを演じるのは『ルーム』のジェイコブ・トレンブレイ。オギーの母には『エリン・ブロコビッチ』のジュリア・ロバーツ、父ネートには『ミッドナイト・イン・パリ』のオーウェン・ウィルソンが扮している。監督は『ウォールフラワー』で思春期の少年少女を瑞々しく描いたスティーブン・チョボスキー。正しさよりも優しさを選ぶ、ただそれだけで自分も世界もハッピーに変えられると教えてくれる感動の物語が誕生した。