『はじまりへの旅』のベン・キャッシュは6人の子供たちと森で暮らしています。
ベンの子育てはかなり独特で、子供たちはサバイバルライフを送り運動神経抜群、
哲学者チョムスキーの本や権利章典を読み語学堪能、“ある意味”英才教育を受けています。
だけど世間との関わりは殆どなく、子供たちはコカ・コーラすら知りません。
『スウィート17モンスター』のネイディーンは母と兄と暮らす17歳。
イケメンで明るい兄とは対照的に、皮肉屋であまのじゃく、いわゆるこじらせ女子のネイディーン。
友達はたったひとりの親友クリスタだけ。
兄を見かければ悪口ばかり、担任の先生にも悪態をつく毎日です。
そう、今週の上映作品はどちらも普通とはちょっと違う「変わり者」が主人公です。
「変わり者」というより、「ひねくれ者」といえるでしょうか。
人と違う道を進むこと、“みんな”の輪の中に入らないことは、ラクなことじゃぁありません。
周りからはタフで強情に思われるかもしれないけれど、意外と本人が一番葛藤しているのかも?
二本の映画は、そんな「ひねくれ者」たちに訪れる試練と成長を描いています。
自分の考え、自分の理想のなかで生きてきた今までの毎日からの変化を迫られるベンとネイディーン。
もちろんそれはなかなか簡単ではありませんが、時にカッコ悪く失敗して悩みながらも、
一歩踏み出す不器用な彼らの姿に、いつの間にか共感し応援してしまうはずです。
はじまりへの旅
Captain Fantastic
(2016年 アメリカ 119分 シネスコ)
2017年9月23日から9月29日まで上映
■監督・脚本 マット・ロス
■撮影 ステファーヌ・フォンテーヌ
■編集 ジョセフ・クリングズ
■音楽 アレックス・ソマーズ
■出演 ヴィゴ・モーテンセン/フランク・ランジェラ/ジョージ・マッケイ/サマンサ・アイラー/アナリス・バッソ/ニコラス・ハミルトン/シュリー・クルックス/チャーリー・ショットウェル
■第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」監督賞受賞/シアトル国際映画祭観客賞受賞/2016年アカデミー賞主演男優賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞男優賞ノミネート ほか多数受賞ノミネート
©2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
ベン・キャッシュと6人の子供たちは、現代社会に触れることなくアメリカ北西部の森深くで暮らしていた。父仕込みの訓練と教育で子供たちの体力はアスリート並み。みな6ヶ国語を操り、18歳の長男は名立たる大学すべてに合格。しかしある日入院していた母・レスリーが亡くなり、一家は葬儀のため、そして母の最期のある“願い”を叶えるために旅に出るのだが…。
監督は俳優としても活躍し、これが2本目の長編監督作となるマット・ロス。本作ではカンヌをはじめ、世界中の映画祭で数々の賞を受賞した。意外性に富んだアイデアと、バイタリティ豊かな語り口で家族の絆という普遍的なテーマを探求し、全編が破格のサプライズとユーモアに満ちあふれている。
奇想天外な一家の家長・ベンを演じるのは、『ロード・オブ・ザ・リング』『イースタンプロミス』のヴィゴ・モーテンセン。本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。また、若手注目株のジョージ・マッケイが悩める長男・ボウドヴァンに扮するほか、オーディションで発掘された子役たちが抜群の愛くるしさと驚異の演技力を披露する。
みな風変りで個性的なキャラクターばかりだが、旅に出た彼らが世の中とのギャップに戸惑いながらも自分らしさを失わずに生きようとする姿には、誰もが共感できるはず。ヘンテコ一家の不器用な生き方に、笑いと勇気をもらえる感動のロードムービー!
スウィート17モンスター
THE EDGE OF SEVENTEEN
(2016年 アメリカ 104分 ビスタ)
2017年9月23日から9月29日まで上映
■監督・脚本 ケリー・フレモン・クレイグ
■製作 ジェームズ・L・ブルックス/リチャード・サカイ/ジュリー・アンセル
■編集 トレイシー・ワドモア=スミス
■音楽 アトリ・オーヴァーソン
■出演 ヘイリー・スタインフェルド/ウディ・ハレルソン/キーラ・セジウィック/ブレイク・ジェナー/ヘイリー・ルー・リチャードソン
■2016年NY批評家協会賞第一回監督賞受賞/ゴールデン・グローブ賞主演女優賞ノミネート/全米監督協会(DGA)賞作品賞ノミネート ほか多数受賞ノミネート
©MMXVI STX Productions, LLC. All Rights Reserved.
ネイディーンは17歳の高校生。キスさえ未経験の、イケてない毎日。恋に恋する妄想だけがいつも空まわりして、教師のブルーナーや母親を困らせてばかり。たった一人の親友クリスタだけが自分のすべてだと思っていたのに、何をしてもかなわないとコンプレックスを抱いていたイケメン人気者の兄ダリアンとその親友クリスタが恋に落ちてしまう。疎外感からまるで世界にたった一人取り残されたような気持になったネイディーンは、とんでもない行動に出るのだが…。
映画批評No.1サイトロッテントマトでフレッシュ95%という数値を叩きだした『スウィート17モンスター』。いつもは辛辣な批評家たちがこぞって、“あの頃”のリアルな痛さを思い出して悶絶してしまう、めったに出会えない宝物のような青春映画だと大絶賛した。
監督は、ウェス・アンダーソンやキャメロン・クロウの才能を発掘した名プロデューサー、ジェームズ・L・ブルックスに抜擢されたケリー・フレモン・クレイグ。自身の脚本を初監督し、権威あるNY映画批評家協会賞第一回作品賞を受賞した他、全米監督協会初監督賞にノミネートされるなど新たな才能の登場と注目を集め、賞レース4受賞18部門ノミネートの快挙を達成した。
主人公のネイディーン役は『トゥルー・グリッド』で14歳のときにオスカーにノミネートされ、歌手としても人気のヘイリー・スタンインフェルド。教師役には個性派俳優ウディ・ハレルソン、母親役に『クローザー』のキーラ・セジウィック、兄ダリアン役に『glee/グリー』シリーズのブレイク・ジェナーが扮し、主人公に寄り添い彼女を見守る「大人になりきれない大人」たちを見事に演じている。