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ジョエル&イーサン・コーエン

■コーエン兄弟

兄のジョエル・コーエン(1954年生まれ)と弟のイーサン・コーエン(1957年生まれ)の兄弟。米国ミネソタ州ミネアポリス出身。監督、脚本、製作、編集など、共同で映画製作に携わっている。

1984年に発表した処女作『ブラッド・シンプル』が低予算ながら好評を博し、インディペンデント・スピリット賞5部門ノミネート、監督賞と主演男優賞の2部門を受賞。一躍映画界の注目を浴びる存在となる。

1991年の『バートン・フィンク』はカンヌ国際映画祭でパルム・ドール、監督賞、男優賞をトリプル受賞。国際的に高い評価を受け、兄弟の名を世界に知らしめた。1996年の『ファーゴ』はカンヌ国際映画祭で2度目の監督賞に輝いたばかりでなく、兄弟にとって初となるアカデミー賞脚本賞をもたらした。

2007年の『ノーカントリー』ではアカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、助演男優賞の4部門を受賞。全世界で1億6000万ドルを上回る興行収入を挙げた。さらに次作の『バーン・アフター・リーディング』も全米初登場1位の大ヒットを記録。最新作『トゥルー・グリット』は、北米だけで興行収入1億6000万ドルを上回り、西部劇映画としては歴代2位を記録。コーエン兄弟最大のヒット作となった。今後ますます活躍が期待される、現代アメリカを代表する監督である。

フィルモグラフィ

・ブラッド・シンプル(1984)
・XYZマーダーズ(1985)
・赤ちゃん泥棒(1987)
・ミラーズ・クロッシング(1990)
・バートン・フィンク(1991)
未来は今(1994)  
・ファーゴ(1996)
・ビッグ・リボウスキ(1998)
・ブラッドシンプル ザ・スリラー(1999)
・オー・ブラザー!(2000)
・バーバー(2001)
・ディボース・ショウ(2003)
・バッドサンタ(2003/製作総指揮)
・レディ・キラーズ(2004)
パリ、ジュテーム(2006/監督作『チュイルリー』を収録したオムニバス作品)
・それぞれのシネマ 〜カンヌ国際映画祭60回記念製作映画〜
(オムニバス作品。コーエン兄弟監督作『ワールド・シネマ』は日本未公開)
ノーカントリー(2007)
・バーン・アフター・リーディング(2008)
シリアスマン(2009)
トゥルー・グリット(2010)

≪あなたの身に降りかかること全てをありのままに受け入れよ≫

牧場主として一生懸命働いてきた父親を、
ある日突然、雇い主に無残にも撃ち殺された少女。

大学教授としてひたすら平穏に暮らしてきたのに、長年連れ添った妻を友人に取られ、落第点をつけた生徒からワイロを渡され、さらにはモーテル暮らしを強いられる男。

これ、どちらも今週の映画の中のお話。
誰がどう見ても「不条理だ」と思う状況。そう、コーエン兄弟の映画の登場人物はいつも、何かに追われるか、窮地に立たされている。

84年の『ブラッド・シンプル』で鮮烈にデビューして以来、アメリカのみならず一躍世界中の映画マニアを虜にし、日本でも"ザ・単館系"の寵児となったジョエル&イーサン・コーエン。07年の『ノーカントリー』ではアカデミー賞で作品賞含む4冠を達成、新たな境地を開拓し、名実ともに確固たる地位を手にした。

けれどいくらアカデミー賞常連になっても、いまいち“巨匠”や“大御所”のような名が似合わない。『ノーカントリー』なんて、冷酷無比の殺人鬼(とゆうより殺人機?)が、なぜか正義にも感じるトンデモ映画。「作りたいものを作る」その単純明快でひょうひょうとしたスタンスが、毎回私たちを魅了するのだ。コメディ、サスペンス、犯罪もの、マフィアもの、逃走劇、そして西部劇。コーエン兄弟の映画は幅広い。幅広いけれど、どれもがまぎれもなく"コーエン兄弟の映画"になってしまうから不思議。

ただ、今回上映する二つの物語の主人公、“少女”と“男”はあまりに正反対である。
『トゥルー・グリット』の14歳の少女・マティは、たった一人で父親の仇を討つことを誓い、壮絶な追跡の旅へと繰り出す。一方『シリアスマン』の大学教授・ラリーは、半端なく押し寄せる不幸の連続に、奮起して立ち直ろうとするわけでもなく、ただただ「どうして自分がこんな目に?」と、ラビに助言を求める。

この真逆な二人の主人公に、
ひねくれ者のコーエンブラザーズはどんな未来を用意したのだろう?

「この世は何かをしたら代償を払わなきゃいけない」
『トゥルー・グリット』の中でマティが何度もつぶやく言葉。その本当の意味を、彼女は身をもって体験することになる。

「どうして真面目に生きてきた自分がこんな目に?」
『シリアスマン』のラリーはひたすら悩み続ける。けれどラビが語るオチのない歯科医の話は、ラリーに何も教えてはくれない。敬虔深いユダヤ教徒のラリーに、神様は皮肉にも彼自身の人生を使って教授しているかのようだ。

「オチ(答え)なんて人生にないんです」

今週の早稲田松竹は、満を持してのコーエン兄弟監督特集。
しかも贅沢に、最新の二本『トゥルーグリット』と『シリアスマン』をお届けします。コーエン印が初めての方も、もちろんデビュー作からのファンの方も、どっぷりと“コーエンワールド”を楽しめること間違いなし!

コーエン兄弟にしか語れない人生観、コーエン兄弟にしかありえない物語の結末を、とくとご覧あれ。そしてその際、この言葉、お忘れなく。

≪あなたの身に降りかかること全てをありのままに受け入れよ≫

(パズー)


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シリアスマン
A SERIOUS MAN
(2009年 アメリカ 106分 PG12 ビスタ・SRD) 2011年7月16日から7月22日まで上映 ■監督・製作・脚本 ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
■撮影 ロジャー・ディーキンス
■編集 ロデリック・ジェインズ
■音楽 カーター・バーウェル

■出演 マイケル・スタールバーグ/リチャード・カインド/フレッド・メラメッド/サリ・レニック/アーロン・ウルフ

■2010年アカデミー賞作品賞ノミネート/2009年ボストン映画批評家連盟賞最優秀脚本賞/2009年ナショナル・ボード・オブ・レビュー最優秀脚本賞

人間のおかしさが弾け、人生の不条理が暴走する
“世界一不幸な男”の想像を絶する運命とは?

pic時は1967年。アメリカ中西部郊外に住むユダヤ人の大学教授ラリー・ゴブニックは、ひたすら平凡な人生を歩んできたマイホーム・パパだ。それぞれ秘密を抱えた息子ダニー、娘サラ、兄アーサーと暮らす彼は、妻ジュディスから突然別れを突きつけられ、ハンマーで脳天を殴られたようなショックを受ける。

picさらに落第点をつけた学生からワイロを渡され、隣人トラブルにも頭を悩ますラリーはやがてモーテル暮らしを強いられ、こつこつ貯めた銀行預金も底をついてしまう。そんな相次ぐ不運を嘆くラリーは「なぜ自分だけがこんな悲惨な目に?」の答えを求めて、地元コミュニティーの指導者であるラビたちのもとを訪ねるのだが…。

コーエン兄弟がルーツをたどった、ユダヤ人コミュニティーの世界
ストレンジで刺激的な面白さに満ちた悲喜劇  

pic2006年のアカデミー賞で三冠を受賞した『ノーカントリー』で世界中のド肝を抜いて、今や巨匠と呼ぶにふさわしい存在となったジョエル&イーサンのコーエン兄弟。彼らが次の題材にしたのは、自分たちが少年時代をすごしたアメリカ中西部のユダヤ人コミュニティーの世界だ。何も罪のない主人公が“世界一不幸な男”になってしまうまでの怒涛の2週間を、コーエン兄弟独特のユニークな人間観と人生観で鮮烈に描き出した。荒唐無稽なホラ話のようで底なしに奥深く、アカデミー作品賞にもノミネートされた必見の話題作をぜひともご体験あれ!


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トゥルー・グリット
TRUE GRIT
(2010年 アメリカ 110分 PG12 シネスコ・SRD) pic 2011年7月16日から7月22日まで上映
■監督・製作・脚本 ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
■製作総指揮 スティーヴン・スピルバーグ
■撮影 ロジャー・ディーキンス
■音楽 カーター・バーウェル

■出演 ジェフ・ブリッジス/マット・デイモン/ヘイリー・スタインフェルド/ジョシュ・ブローリン/バリー・ペッパー

■第83回アカデミー賞10部門ノミネート/2010年度英国アカデミー賞8部門ノミネート・最優秀撮影賞(ロジャー・ディーキンス)/2010年度ブロードキャスト映画批評家協会賞11部門ノミネート・最優秀若手俳優賞(ヘイリー・スタインフェルド)他、全世界119部門ノミネート・32冠獲得

天罰なんか待ってられない――
父親を殺され復讐を誓った14歳の少女
壮絶な追跡の果てに待つ感動のドラマ

picマティ・ロスは牧場主の娘として産まれながらも、責任感が強く信念を貫く14歳の少女。雪の降る夜、父親が雇い主であるトム・チェイニーに無惨にも撃ち殺された。知らせを受けたマティは、父親の遺体を引き取りにオクラホマ州境のフォートスミスへとやってきて、犯人に罪を償わせることを誓う。

pic父の仇を討つため、彼女は“トゥルー・グリット(真の勇気)”があると言われる大酒飲みの連邦保安官ルースター・コグバーンに犯人追跡を依頼した。最初は相手にされないマティだったが、決してあきらめない執念と報酬の魅力に負け、コグバーンは依頼を引き受けることにする。そして別の容疑でチェイニーを追ってフォートスミスへと来ていたテキサス・レンジャーのラビーフも加わり、犯人追跡の過酷な旅が始まる…。

アカデミー賞10部門ノミネート!
コーエン兄弟×スピルバーグ
奇跡のコラボが創り上げた名作の誕生!

ジョン・ウェインが悲願のオスカーを手にした『勇気ある追跡』のオリジナル原作をコーエン兄弟ならではのタッチで映画化した今作。あのスティーヴン・スピルバーグが製作総指揮に名を連ね、原点回帰とも集大成ともとれる美しい映像とドラマチックな演出は、早くも最高傑作との呼び声が高い。

pic復讐を誓う少女マティ・ロス役に大抜擢されたのが、本作が映画初出演の新星ヘイリー・スタインフェルド。強い信念と繊細さを併せ持つこの難役を、鮮烈な存在感で演じ切った。マティに雇われる連邦保安官コグバーンを演じるのは、昨年の『クレイジー・ハート』でアカデミー賞主演男優賞を受賞した、名優ジェフ・ブリッジス。テキサス・レンジャーのラビーフ役には実力派マット・ディモン、さらに仇役となるトム・チェイニーには、『ノーカントリー』に続くコーエン作品出演となるジョシュ・ブローリン。個性が全く違う俳優たちが見事な競演を果たしている。


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