ロード・オブ・ザ・リング
スペシャル・エクステンデッド・エディション
THE LORD OF THE RINGS: THE FELLOWSHIP OF THE RING
(2001年 アメリカ/ニュージーランド 209分)
2005年9月17日から9月23日まで上映
■監督・製作・脚本 ピーター・ジャクソン
■原作 J・R・R・トールキン
■脚本 フラン・ウォルシュ/フィリッパ・ボウエン
■出演 イライジャ・ウッド/イアン・マッケラン/ヴィゴ・モーテンセン/ショーン・アスティン/ケイト・ブランシェット/ジョン・リス=デイヴィス/ビリー・ボイド/ドミニク・モナハン/オーランド・ブルーム/クリストファー・リー/ヒューゴ・ウィーヴィング/ショーン・ビーン/アンディ・サーキス/イアン・ホルム
■2001年アカデミー賞4部門受賞(撮影賞・作曲賞・メイクアップ賞・視覚効果賞)・作品賞ほか9部門ノミネート
★9/17-9/23は『ロード・オブ・ザ・リング』一本のみの上映です。ラスト一本割引はありません。
(C)松竹株式会社ときは中つ国第3紀のことです。ホビットたちは、食べることが大好きで、いつも陽気な小さい人たち。その日はビルボ・バギンズの111歳の誕生日だったので、ホビット庄のホビットたちは、誕生日を祝うため大騒ぎでした。ところがビルボは、お誕生日のスピーチの最中、「今日でお別れです」という言葉を残して、ホビットたちの目の前で文字通り突然姿を消してしまったのです。
実はビルボは、指にはめると姿が見えなくなる魔法の指輪を持っていました。その指輪はビルボが50年以上前、ドワーフたちと一緒に旅に出たときに、偶然手に入れたものでした。
指輪を受け継いだ、ビルボの年下のいとこで養子のフロドは、灰色の魔法使ガンダルフから恐ろしい話を聞かされました。ビルボが冒険から持ち帰った金の指輪は、冥王サウロンによって作られたものだというのです。それは指にはめると姿が見えなくなるだけでなく、はめた者の心を支配し、世界を破滅に導く力を秘めた恐ろしい指輪でした。かつて滅びたはずのサウロンの魂は指輪とともにまだ生き続けていて、全世界を再び闇の支配下に置こうと、今も指輪を捜し求めていたのです。指輪がホビット庄にあることを嗅ぎつけられたと聞いたフロドは、ガンダルフの助言を受け、フロドの家の庭師サムと、縁者で親友でもあるメリー、ピピンとともに、指輪を見つけられないようにホビット庄から旅立つことになりました。
約20年かけて原作の『指輪物語』を執筆したJ・R・Rトールキンは、オックスフォード大学の古英語・英語・英文学の教授であり、約15の人工言語を発明した、言語学の権威でした。トールキン自身は当初、『指輪物語』を児童書にしようと考えていましたが、書き進めるにつれ次第に難解で重々しい物語となっていったため、より成熟した読者を対象とするようになり、「ファンタジーは子供の読み物」というそれまでの概念を覆しました。刊行されるやいなや学生や知識人層に熱狂的に支持され、当時学生運動がさかんだったアメリカでは「ガンダルフを大統領に!」というデモまで起こったほどです。
その『指輪物語』がついに映画化、という話を初めて聞いたときは、観たいような観たくないような、複雑な気持ちでした(だってあの『指輪』が映画化なんて無理に決まってんじゃん!と思ったからです)。いやまぁそれが、実際観てみたらとにかくびっくり。偉いよピーター・ジャクソン。さすがオタクは違うね!とそのこだわり方に感動しました。
スペシャル・エクステンデッド・エディションでは、新たに加わったシーンが重要な伏線となっているので、原作を未読な方にはより理解しやすい流れになっています。もちろん原作ファンはさらに濃く楽しめること間違いなし。端折りすぎ、とか、辻褄あわせが苦しいとか、そういう箇所は勿論あるものの、そんなところには喜んで目をつぶってあげたくなって、なおかつ「すごい!」と単純に思える出来。唯一の問題は戸田なっちの字幕くらいでしょうか。
ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
スペシャル・エクステンデッド・エディション
THE LORD OF THE RINGS: THE TWO TOWERS
(2002年 アメリカ/ニュージーランド 225分)
2005年9月24日から9月30日まで上映
■監督・製作・脚本 ピーター・ジャクソン
■原作 J・R・R・トールキン
■脚本 フラン・ウォルシュ/フィリッパ・ボウエン/スティーヴン・シンクレア
■コンセプチュアルデザイン アラン・リー/ジョン・ハウ
■出演 イライジャ・ウッド/イアン・マッケラン/リヴ・タイラー/ヴィゴ・モーテンセン/ショーン・アスティン/ケイト・ブランシェット/ジョン・リス=デイヴィス/バーナード・ヒル/クリストファー・リー/ビリー・ボイド/ドミニク・モナハン/オーランド・ブルーム/ヒューゴ・ウィーヴィング/ミランダ・オットー/デヴィッド・ウェンハム/アンディ・サーキス
■2002年アカデミー賞2部門受賞(特殊効果賞・音響効果賞)・作品賞ほか4部門ノミネート
★9/24-9/30は『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』一本のみの上映です。ラスト一本割引はありません。
(C)日本ヘラルド映画サウロンが造った「一つの指輪」は、この世の全てを統べる恐ろしい力を持っていました。それは、使えば指輪のとりことなって指輪に支配されてしまい、使ってみたいという考えを抱くだけでその人を堕落させ、また指輪自体が人を権力へ誘惑する力を持っていました。何物にも支配されず、自由な民の平和を守るためには指輪を葬るしかありません。しかし指輪を空無に帰せしめるには、当の敵の君臨するモルドールの、滅びの山の亀裂に指輪を投げ込むしかすべはないのです。
第一部『旅の仲間』では、フロドを指輪所持者に、そして中つ国の自由な民の種族を代表して同行者8人が選ばれ、9人の旅の仲間がモルドールを目指して望みなき旅に出ることが語られました。しかし旅の途中、指輪の魔力が一行を徐々に滅ぼしていくことを恐れたフロドは、仲間から離れ、サムと二人だけで旅立つことを決意します。すでにボロミアが、指輪の魔力に取り憑かれ、力ずくでフロドから指輪を奪おうとした後でした。ボロミアはすぐ正気に戻り、悔悛したものの、遅すぎました。そのときオーク軍に奇襲され、メリーとピピンが連れ去られてしまったのです。第一部は一行の離散で結ばれました。
第二部では、離散後の一行全員の行動にわたって語られます。隙を縫ってファンゴルンの森に逃げ込んだメリーとピピン、彼らの行方を追うアラゴルン・レゴラス・ギムリ、そしてモルドールを目指すフロドとサム。一行はばらばらになりながらも、それぞれに置かれた状況下で指輪を滅ぼすという使命を達成しようとし、また指輪を手に入れようと襲い掛かる勢力と戦っていくのです。
山場は、なんと言ってもヘルム峡谷の戦い。二部は戦争映画と言っても過言ではありません。撮影に3ヵ月半かけた、そのスケールにはひたすら圧倒されます。全員が原作を熟知していたという美術スタッフによって製作された武器・甲冑類は、それぞれの種族ごとの文化や歴史を考慮して、一つ一つ手作業で(!)作られています。その数や過程を思うと想像するだけで気が遠くなりますが、このようなディテールの素晴らしさあってこそ、全体の雰囲気にリアリティが生まれるのです。
数にして300対10,000という絶望的な戦時状況で、人は何を思うでしょうか。いや増す悲愴感の中、単なる強さだけでなく弱さや苦悩をも併せ持ったローハン王セオデンの、「私は何物だ?」と呟くシーンが印象的。それにしても(はじめはよぼよぼ爺だった)セオデンが、しゃきっと背を伸ばして反撃に馬を進めるシーンは何度観ても格好良すぎ!
さて、セオデンももちろんですが、二部の主役と言えばやっぱりゴラム。デジタルクリーチャーがここまで豊かに感情表現できるなんて。「気味悪い」を通り越して、可愛らしくさえ見えてくるから不思議です。第二部SEE版は回想シーンでのボロミアの活躍をはじめ、エント水のシーンなど、約200ショット、40分が追加されました。映像だけでなく、音楽も新たに作曲・録音しなおされています。原作に対する監督やスタッフの愛情が目一杯盛り込まれたこの作品、鑑賞後は本当にお腹いっぱいになります。もちろんいい意味で!
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
スペシャル・エクステンデッド・エディション
THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING
(2003年 ニュージーランド/アメリカ 255分)
2005年10月1日から10月7日まで上映
■監督・製作・脚本 ピーター・ジャクソン
■原作 J・R・R・トールキン
■脚本 フラン・ウォルシュ/フィリッパ・ボウエン
■コンセプチュアルデザイン アラン・リー/ジョン・ハウ
■出演 イライジャ・ウッド/イアン・マッケラン/ヴィゴ・モーテンセン/ショーン・アスティン/ビリー・ボイド/ドミニク・モナハン/オーランド・ブルーム/ジョン・リス=デイヴィス/ケイト・ブランシェット/バーナード・ヒル/ミランダ・オットー/デヴィッド・ウェンハム/ヒューゴ・ウィーヴィング/イアン・ホルム/ショーン・ビーン/アンディ・サーキス
■2003年アカデミー賞11部門受賞(作品賞/監督賞/脚色賞/作曲賞/歌曲賞/美術賞/衣装デザイン賞/メイクアップ賞/特殊効果賞/音響賞/編集賞)
★10/1-10/7は『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』一本のみの上映です。ラスト一本割引はありません。
(C)松竹株式会社「一番撮りたかったのは三本目。三本目を撮るために前二作を撮ったようなもの」
これは監督ピーター・ジャクソンの言葉。とはいえ、前二作がやっつけ仕事などではなかったのは、ご覧になった方なら誰もが知ってる周知の事実。かつて、あのキューブリックも映画化の可能性を調べたものの、あまりにも壮大すぎるためにあきらめたと言われる『指輪物語』。製作期間8年、その三部作を閉めくくるに相応しい完結編です。
ゴラムを手なずけ、モルドールへの道案内をさせるフロドとサム。しかしゴラムはかつて所有していた指輪への渇望から、悪心に戻りつつありました。そしてモルドールから出た暗黒は中つ国全体を覆い、サウロンはナズグル率いる先発の大群をゴンドールに向けて送り出しました。ついに指輪戦争が始まったのです。
「世界を支配する一つの指輪」は、原爆の寓意であるとする推論が時々見受けられます。トールキン自身は自分の作品にはいかなる寓意も含まれないと繰り返し主張していました。しかし何かを得るための旅、勝利を勝ち取るための戦いではなく、失くすための旅、そして勝利ではなく敵の目を反らすために命をかける戦い。自己犠牲、死、人間性と欲望の戦いなど、重く見ようと思えばいくらでも重く見られるテーマ。でもまぁそんなことを考えなくとも、単純に楽しめる映画なんですけどね。
SEE版は255分!サルマンの最期、セオデンに忠誠を誓うメリー、レゴラスとギムリの一気飲み対決、ピーター・ジャクソンのカメオ出演など、合計約50分の未公開シーンが追加されています。追加シーンが入ったことによって、若干もたついているように感じる箇所もありますが、それでもまだ足りない、もっと観たいと思ってしまうのはなんなんでしょうか。正直、このシーンを撮るんだったらアレとかも入れてよ!と思ってしまいます。いっそのこと6部作くらいにしてもっと原作に忠実にしてもらいたいくらい(アルウェンの扱いもぜひ原作どおりに)。
思い返してみれば、撮影はとっくに終わってるのに、一年ごとに三年連続公開なんていうまどろっこしいやり方で、公開時は待つ身としてじりじりやきもきしていましたが、そんな「来年の楽しみ」ももうないと思うと寂しい。DVDもとっくに出てますけど、これから先この映画をスクリーンで観れることなんて滅多にありません。この機会を逃さず、ぜひ劇場へ!
text by mana