監督■パク・チャヌク
1963年、韓国、ソウル生まれ。映画監督、脚本家、プロデューサー。現代の映画界に欠かせない逸材の一人として高く評価されている。
ソガン大学哲学科在学中に映画クラブを設立、映画評論に取り組む。2000年、『JSA』で当時の韓国歴代最高の興行成績を記録する。 2003年には、『オールド・ボーイ』でカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞、世界にその名を知られる。 続く『親切なクムジャさん』(05)では、ヴェネツィア映画祭のコンペ部門で受賞、ヨーロッパ映画賞にノミネートされる。
2009年、『渇き』でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞する。 2011年、全編をアップルのアイフォンで撮影した短編『Night Fishing』(原題:Paranmanjang)で、ベルリン国際映画祭金熊賞(短編部門)を受賞する。 その他の監督作は、『復讐者に憐れみを』(02)、オムニバス映画『もし、あなたなら 〜6つの視線』(03)の『N.E.P.A.L. 平和と愛は終わらない』、オムニバス映画『美しい夜、残酷な朝』(04)の『cut』、『サイボーグでも大丈夫』(06)など。
・JSA(2000)監督/脚本
・アナーキスト(2000)<未>脚本
・ヒューマニスト(2001)<未>脚本
・復讐者に憐れみを(2002)監督
・オールド・ボーイ(2003)監督/脚本
・もし、あなたなら 〜6つの視線(2003)監督/脚本
・美しい夜、残酷な朝(2004)監督
・親切なクムジャさん(2005)監督/脚本
・天国までの60日(2005)<未>脚本
・サイボーグでも大丈夫(2006)監督/脚本
・ミスにんじん(2008)<未>脚本/出演/製作
・渇き(2009)監督/脚本/製作
・イノセント・ガーデン(2013)監督
抱えきれない喪失。埋めきれない空虚。死にも似た、静寂の時。
そんな言い知れぬ想いを溜め込んだ密室を、突き破ろうとする時、
身体を裂くように、人の心が溶け出すように、おぞましくも美しい鮮血が舞う。
理性の及び届かない、感情の最も先鋭な部分をえぐり出し、
耽美で苛烈な映像表現で世界を驚愕させたパク・チャヌク。
彼が描き出すのは、もはや“日常”に耐えきれなくなってしまった人々だ。
“復讐三部作”(『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャンさん』)では
失ったことを忘れないための、怒りと憎しみが、復讐者の道理を越えた追撃が、
その過剰さのみが、彼らに生の実感をもたらした。
『渇き』では、無力感に苛まれていた神父がヴァンパイアとなり、信仰と衝動の間で揺れながらも
生きる為に血を啜り、ついには愛(最高の生!)を発見した。
欲望こそが、人を突き動かす。たとえその欲望が、相手を打ちのめす復讐であっても、
最愛の人と愛し合うことでも、人が生きる動機とは、世界そのものだ。
そして『イノセント・ガーデン』は、
少女インディア・ストーカーの、欲望の目覚めの物語だ。
“私じゃないものが私をつくる”
“花が色を選べないように―。人は自分を選べない”
“それに気付けば自由になれる”
鋭利に黒光りする鉛筆の先端。這いまわる蜘蛛。無機質に割られる卵。
風に凪いだ植物。ヒールの甲高い響き。官能的なピアノの音色…。
突如現れた叔父のチャーリーによって、花開き覚醒するインディアの感覚。
彼女の全身で感じる世界の、なんと艶やかなことだろう。
あまりに身勝手で深き欲望の渦。だが一度でも欲望の側から世界を覗いたならば、
私たちの理性に一体何の意味があるのだろうか。
(ミスター)
オールド・ボーイ
OLDBOY
(2003年 韓国 120分 シネスコ/SRD)
2013年9月7日から9月13日まで上映
■監督・脚本 パク・チャヌク
■原作 土屋ガロン(作)/嶺岸信明(画) 『オールド・ボーイ』(双葉社・アクションコミックス刊)
■脚本 ファン・ジョユン/イム・ジョンヒョン
■撮影 チョン・ジョンフン
■音楽プロデューサー チョ・ヨンウク
■出演 チェ・ミンシク/ユ・ジテ/カン・ヘジョン/チ・デハン/キム・ビョンオク/オ・ダルス/ユン・ジンソ
■2004年カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ受賞・パルムドールノミネート/ヨーロッパ映画賞インターナショナル(非ヨーロッパ)作品賞ノミネート/放送映画批評家協会賞外国語映画賞ノミネート ほか多数受賞・ノミネート
ごく平凡な人生を送っていた男オ・デスはある日誘拐され、意識を取り戻すと狭い監禁部屋にいた。理由が全く分からない彼だったが、ある日テレビのニュースで妻が惨殺されたことを知る。しかも容疑者は自分。半狂乱に陥りつつも、監禁部屋で肉体を鍛え、テレビで情報収集しているうちに15年が経過し、突然解放された。いったい誰が? 何の目的で? 復讐を誓うデスだったが、そこには想像を絶する恐るべき策略がめぐらされていた…。
原作は土屋ガロン(作)嶺岸信明(画)による同名の漫画。96〜98年に「漫画アクション」で連載され、独創的な設定と痛烈な劇画タッチで大きな話題となった。『JSA』で韓国映画新時代を切り開いたパク・チャヌクは、「理由もなく長期監禁された男」という題材に独自の動機・展開を加え、「壮絶な復讐」と「究極の愛」を増幅させた驚愕の傑作を創り上げた。誰の想像をも超える衝撃の結末に、観る者はみなノックアウトされるに違いない。
2004年カンヌ国際映画祭では、上映中にもかかわらずクライマックスシーンで場内にどよめきが起き、終映後には高揚した観客のスタンディング・オベーションが10分以上続く異例の事態となった。審査委員長を務めたクエンティン・タランティーノは「グレイト!最高に素晴らしい!」と最大級の賛辞を贈り、見事グランプリを獲得。一方、ハリウッドではスパイク・リー監督、ジョシュ・ブローリン主演でリメイク版が製作され、いよいよ今年11月に北米公開が決定している( http://www.oldboyfilm.com/)。
イノセント・ガーデン
STOKER
(2013年 アメリカ 99分 シネスコ)
2013年9月7日から9月13日まで上映
■監督 パク・チャヌク
■製作 リドリー・スコット/トニー・スコット/マイケル・コスティガン
■脚本 ウェントワース・ミラー
■撮影 チョン・ジョンフン
■編集 ニコラス・デ・トス
■音楽 クリント・マンセル
■出演 ミア・ワシコウスカ/ニコール・キッドマン/マシュー・グード/ダーモット・マローニー/ジャッキー・ウィーヴァー/フィリス・サマーヴィル/オールデン・エアエンライク/ルーカス・ティル/ラルフ・ブラウン
鋭すぎる感覚を持つ少女、インディア・ストーカー。彼女が18歳になったその日、謎めいた鍵が届き、ただ一人心を開いていた最愛の父が急死する。共に残された美しい母エヴィとは何ひとつ分かり合えない。葬儀の日、行方不明だった叔父チャーリーが突然現れる。その日から始まったいくつもの不可思議な出来事。次々と姿を消していく周囲の人々。すべてが完璧なチャーリーに惹かれていくインディア。果たして、あの鍵が開けてしまうものは、なに──?
それは、作者の名前が伏せられた一冊の脚本から始まった。執筆に8年の歳月がかけられた驚愕の物語に業界は騒然とし、一流監督たちが自身の手による映画化を熱望。だが、ハリウッドが求めたのは『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』のパク・チャヌク監督。破滅と激情をエレガントに奏で上げ、既存のアートを挑発してきたアジアの奇才。彼が一読で幻惑された脚本家の意外な名は、「プリズン・ブレイク」の主演俳優ウェントワース・ミラーだった。
製作は映像派の第一人者リドリー&故トニー・スコット、美術と音楽に『ブラック・スワン』のスタッフが名を連ね、重要なシーンで演奏されるピアノ曲を巨匠フィリップ・グラスが作曲した。撮影監督はパク・チャヌク作品に天賦の才を捧げ続けるチョン・ジョンフン。美と恐怖のスペシャリストたちが、唯一無二のミステリーを創り上げた。ヒロインのインディアには、『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ、チャーリーに『シングルマン』のマシュー・グード、エヴィには『めぐりあう時間たち』でアカデミー賞に輝いたニコール・キッドマン。その他、『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたジャッキー・ウィーヴァーが、物語の伏線となる重要な役で出演している。 幾重にも仕掛けられた謎が、一つずつ明かされるたびに駆け抜ける衝撃──やがて導かれる戦慄と陶酔の結末──魂を迷わす極上のエンターテインメントがここに完成した。