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かつて幸せだった時間があった。
2人の子供、父親と母親。経済的にも不自由なく暮らせる家庭。
彼らは家を手に入れた。皆が静かに暮らせる大きな家だ。

しかし『それでも、愛してる』のウォルター・ブラック(メル・ギブソン)は悩まされていた。
いつからこうなってしまったのかはわからないが、まるでやる気が起きない。何も感じない。
あらゆる方法を試したが重度の鬱病だと診断された。
家族は心配しているし、かつてのように活気のある自分の姿を求めている。
しかし、求められている役割は今の自分にはまるで太刀打ちできないものに感じるのだ。

『ドリームハウス』のウィル(ダニエル・クレイグ)は家を買った。子供たちや妻と幸せな生活を送る家。
しかし引っ越してみると、過去にこの家で凄惨な一家虐殺事件が起こっていたことを知らされた。
さらに捕まっていた犯人は最近精神病院から出てきたらしい。
家族を守ることができるのは、自分だけ。

いま2人の父親たちが築いてきた大切なものが脅かされようとしている。
それは、自らが原因で招いてしまったことだ。
この状況を変えることができるのは自分しかいない。
だが、ある理由でそれができないとしたら?

彼らは恐れている。
人生にはいつか終わりがあるというのに、夢や理想には限りがない。
ウォルターの息子のポーター(アントン・イェルチン)は、
不甲斐ない父親と似ている自分の癖をメモに書き出して、
部屋の壁に貼り付けた。自分を変えるために。
しかし、困難な問題にぶつかるたびにメモは増えていく。

幸せだと思ったときに全て消えてなくなってしまえばいいのに。
自分が達成したいと思ったことを達成できた途端に、それがゴールであればいいのに。
その全てを通り過ぎながら、生き永らえて頭を悩ませる。
生きている限り、次から次へと難問が途切れることはない。
これではまるで拷問のようではないだろうか。

ウィルが、事件の真相を突き止めたとき、不安がる家族の目の前で、
彼はふいにこのままでは家族を守れないことを悟る。
彼が恐れを受け入れた瞬間。

そのとき止まっていた時間が融け、動き始める。
同じ時間に帰ることは二度とない。
しかし、彼らがたとえどんなに傷ついたとしても、
愛する家族は、父親たちの日常への帰還を待っているのだ。

(ぽっけ)

それでも、愛してる
THE BEAVER
(2009年 アメリカ 91分 シネスコ/SRD) pic
2013年2月23日から3月1日まで上映 ■監督 ジョディ・フォスター
■脚本 カイル・キレン
■撮影 ハーゲン・ボグダンスキー
■音楽 マーセロ・ザーヴォス

■出演 メル・ギブソン/ジョディ・フォスター/アントン・イェルチン/ライリー・トーマス・スチュワート/ジェニファー・ローレンス/チェリー・ジョーンズ

うつであっても、大丈夫。
夫婦と家族、
これからも ずっと 一緒に。

pic父親から継いだ玩具会社を経営し、結婚20年の妻と息子が2人。何不自由ない生活を送っていたウォルター・ブラックだが、ある日突然、 うつ病に。八方手を尽くしたものの効果なく、1日中寝ている毎日。そんな彼の状態に家族も影響され、妻メレディスにはもはや打つ手がない。今は一時的に別居するのが最善の道と、心を鬼にした。

ところが、翌日戻ってきたウォルターからは、うつ病がすっかり消えていた。ホテルのベランダから飛び降りようとした時、左手に持っていた“ビーバーのぬいぐるみ”が「おい!」と呼びかけてきたのだ。ビーバーの声はウォルターが出しているのだが、「お前の人生を救うためにやって来た」とビーバーは自信満々に言うのだった。家でも会社でも頼りがいある男になったウォルターは、大ヒット商品を思いついて会社も順調、再び幸福が舞い降りてきたはずだったが…。

ジョディ・フォスター監督第3作

picともに2度のアカデミー賞に輝き、良き友人同士でもある女優ジョディ・フォスターと名優メル・ギブソンがタッグを組んだ本作。16年ぶりにメガホンをとったフォスターの、女性らしい細やかで丁寧な描写が温かく映画を包み込む。うつ病になる夫ウォルターを演じるギブソンは、そのキャリアで初めて弱さをあわせもつ平凡な男性を、時にコミカルに時にシリアスに演じて、素晴らしい新境地を見せた。また、今ハリウッドで大活躍の若き女優ジェニファー・ローレンスが、一際華やかな存在感と安定した演技で脇を固める。崩壊の予兆の中、家族それぞれが葛藤し、時には絶望に陥りながらも進んだ先に、 真っ暗闇のトンネルの向こうに光が射してくる――感動の傑作ヒューマン・ドラマがここに誕生した。


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ドリームハウス
DREAM HOUSE
(2011年 アメリカ 92分 シネスコ/SRD) 2013年2月23日から3月1日まで上映 ■監督 ジム・シェリダン
■脚本 デヴィッド・ルーカ
■撮影 キャレブ・デシャネル
■音楽 ジョン・デブニー
■音楽監修 デイヴ・ジョーダン

■出演 ダニエル・クレイグ/ナオミ・ワッツ/レイチェル・ワイズ/マートン・ソーカス/イライアス・コティーズ/ジェーン・アレクサンダー/テイラー・ギア/クレア・アスティン・ギア/レイチェル・フォックス/サラ・ガドン/グレゴリー・スミス

巧妙に仕掛けられた罠のような展開。
衝撃の真実に辿り着いた後、
「涙」という裏切りが待っている

pic会社を辞めニューヨーク郊外に夢のマイホームを購入したウィル。仕事人間だった彼にとって愛する家族と過ごすための決断は、人生の新たなスタートだった。 ところが、怪しい男が周囲をうろついたり、娘が幽霊らしきものを見たとおびえたりと不可解な出来事が続く。そんな矢先、一人の少女から思いも寄らぬ事実を聞かされる。なんと、自身が購入したこの新居で、かつて一家が皆殺しにされるという壮絶な事件が起きていたのだ。犯人がまだ捕まっていないという事実を知ったウィルは、家族を守るため事件の調査に乗り出す。そこに待ち受けていたのは、想像を絶する衝撃の事実だった――。

最後にあなたを待ち受けるのは<恐怖>か、<切なさの涙>か?
予想外のラストに絶賛の声続々!
『マイ・ブラザー』のジム・シェリダン最新作

pic先の読めない展開、そして予想のはるか先をいく物語と想定外のラストが待ち受ける、緊迫感あふれるサスペンス・スリラー。そこに唯一無二のオリジナリティとドラマ性を加えているのが、3度のアカデミー賞監督賞ノミネートを誇るジム・シェリダンの才能だ。登場人物たちの繊細な心理や感情を丁寧にくみとり、「家族愛」という普遍的なテーマを強調することで、物語に一層の深みを加えることに成功している。

pic家族思いの主人公ウィルを演じるのは、最新作『007 スカイフォール』を含む『007』シリーズや、『ドラゴン・タトゥーの女』でその人気を不動のものとしているダニエル・クレイグ。妻リビーを演じるのは、『ナイロビの蜂』でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、実生活でもダニエル・クレイグの妻である演技派女優レイチェル・ワイズ。今作の共演をきっかけに結婚へと至った二人の、リアルな夫婦のケミストリーも見所のひとつ。また、『21グラム』でアカデミー賞主演女優賞にノミネート経験を持つナオミ・ワッツが、奇怪な出来事の全貌を知る隣人役を務める。恐怖と切なさが同居する、新ジャンル<ヒューマンサイコスリラー>。まさかのラストまで一瞬たりとも目が離せない!



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