パプリカ
(2006年 日本 90分)
2007年6月23日から6月29日まで上映
■監督 今敏
■アニメーション製作 マッドハウス
■原作 筒井康隆 『パプリカ』
■脚本 水上清資/今敏
■声の出演 林原めぐみ/古谷徹/江守徹/堀勝之祐/田中秀幸/大塚明夫/山寺宏一/筒井康隆
<第四の男>
ジャパニメーションの世界には三人の巨匠がいる。日本人なら誰もがその名を知る宮崎駿、世界中にセンセーションを巻き起こした伝説的作品『AKIRA』の大友克洋、そして『マトリックス』を始めとした多くのSF映画に影響を与えた『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の押井守。
そんな三人に最も近い位置にいるとされている人物それが今敏(こん さとし)。
今敏の代表作は前々作『千年女優』。かつて一世を風靡した女優がその半生を語る一代記…のはずが、その思い出は出演した映画のエピソードと渾然一体となり、インタビュアー達は幻想と現実が混ざり合った世界に迷い込んでいく。実写では実現不可能な不可思議な世界をアニメーションで表現した『千年女優』は様々な映画際で賞を受賞、ドリームワークスが世界配給も行ない、その名は世界に広まった。
前述した『千年女優』、デビュー作『パーフェクト・ブルー』、TVシリーズ『妄想代理人』、そして最新作『パプリカ』。この四作には一貫して共通のテーマがある。それはイメージ(妄想)の暴走である。リアルな人物描写、風景描写、心理描写で日常を描くことにより、イメージが暴走したときの現実世界の破壊が際立つ演出。
また現実がドンドン狂っていく様子は、アニメーションであるからこそできる様々な視覚的トリックと鮮やかな映像で、観客を惑わしていく。そこに今敏作品では欠かすことのできない平沢進の無国籍な音楽が加わることにより、氾濫するイメージをより一層引き立てていく。今敏の妄想が暴走する映像世界に足を踏み入れたら、迷子になること間違いなし!
<「アニメ」と「映画」>
「アニメ」と聞くと子供かオタクが楽しむものと思いこみ、遠慮してしまう人も多いみたいだが、そうやって食わず嫌いをしている人にこそ『パプリカ』『鉄コン筋クリート』を見てもらいたい。「アニメ」ではなく、「映画」として。
そもそも元をたどれば「映画」は全て「アニメーション」である。「映画」とは、一秒間に24コマの静止画を見せることによって人や物が動いてるように錯覚させるものである。「アニメーション」とは、複数の静止画により動きを作る技術である。そう「アニメーション」と呼ばれる技術で「映画」は作られている。
是非この機会に「アニメーション」というツールで作られた「映画」を体験して下さい。
(縞馬)
鉄コン筋クリート
(2006年 日本 111分)
2007年6月23日から6月29日まで上映
■監督 マイケル・アリアス
■アニメーション製作 STUDIO4℃
■原作 松本大洋 『鉄コン筋クリート』
■脚本 アンソニー・ワイントラーブ
■主題歌 ASIAN KUNG-FU GENERATION
■声の出演 二宮和也/蒼井優/伊勢谷友介/宮藤官九郎
■オフィシャルサイト http://tekkon.net/
○あらすじ
義理と人情が残る宝町には“ネコ"と呼ばれる少年シロとクロが住み着いている。親のいない二人は、カツアゲなどの不良行為をしながら生活し、その悪評は隣町にも響くほど。
ある日、旧知のヤクザ・ねずみが町に戻ってくる。彼らの目的はレジャーランドの開発だった。宝町を大きく変化させる地上げ行為に、誰よりも町を愛するクロは牙を剥く。やがて、ヤクザの背後にいた謎の外国人・ヘビと3人組の殺し屋もが動き始め、暴力の影が宝町を覆いはじめた。ついにはシロにも危険が訪れ…。
○解説
全3巻が100万部を突破した松本大洋の原作コミックがついに映画化。『青い春』『ピンポン』に続いて松本作品が初めてアニメーションとなってスクリーンに登場する。
監督はハリウッドVFXの第一人者マイケル・アリアス。日本アニメ界の最高峰・スタジオ4℃とのコラボレーションで、原作との出会いから凡そ10年を経て念願のプロジェクトを成功させた。原作の「鉄コン」に思い入れのあるスタッフたちが結集し、最新の3DCG技術と従来の手書きアニメが融合した独特の世界を作り上げている。
細部に渡って質の高い映像に命を吹き込むのは『硫黄島からの手紙』『フラガール』での熱演が記憶に新しい二宮和成と蒼井優。特に、個性的で無垢な魂を持った少年・シロの声を務めた蒼井の演技の幅広さには驚きだ。他にも田中泯(『メゾン・ド・ヒミコ』)や伊勢谷友介(『雪に願うこと』)、本木雅弘(『双生児』)といった豪華な役者陣が声優を務め、ファンタジックでありながら人間味溢れるキャラクターを熱演している。
劇中の子供による暴力描写が、映画化にいたるまでのハードルになったという。その点だけをみれば、確かにショッキングではある。ただし、アニメならではの表現とファンタジックでカラフルな街並みの中で繰り広げられるクロとシロのサバイバルは、真に切実な痛みを感じさせる。そして、そこに込められた希望。幾分クセは強いが、宮崎アニメとはまた違った普遍性を持った作品であると言えるだろう。
純粋に力を信じるクロと、純粋な心を信じるシロ。町、友達、そして自分。守るべきものと闘うべき相手。子供も大人も、ヤクザも刑事も、それぞれの思惑を抱いて、肉体と感情が疾走し、やがて物語は大きな感動へとたどり着く。
同時上映の『パプリカ』と合わせて、アニメーションに馴染みの薄い方にも是非観ていただきたい作品です!!
(Sicky)