toppic

どついたるねん
(1989年 日本 110分)
2007年5月26日から6月1日まで上映 ■監督・脚本 阪本順治
■製作 荒戸源次郎
■出演 赤井英和/相楽晴子/麿赤兒/大和武士/笑福亭松之助

☆本編はカラーです。

かつて「浪速のロッキー」と呼ばれ、日本中の少年や格闘技ファンを熱狂させたボクサーがいた。特に関西での盛り上がりぶりは凄まじく、試合がテレビ中継された翌日の子供たちの話題は「浪速のロッキー」一色だったという。男も女も子供も、彼の試合を観て一緒に笑い、興奮し、そして泣いた。

彼の名は、赤井英和。

pic今でこそ彼は、数多くのドラマや映画に出演しバラエティでも良い味で親しまれている。だがその目の奥は昔どおりの浪速のロッキーだ。今もちっとも変わっていない。もちろん良い意味で。

この映画は、赤井英和のボクサーとしての現役時代をモデルにしたフィクションである。そして主人公、安達英志をモデルとなった赤井本人が演じる。

安達英志。大阪生まれ、27歳。どついてどついてどつきまくるパワフルなスタイルと、観客を惹きつけるパフォーマンスでボクシング界を盛り上げていた。だが、世界タイトルマッチの前哨戦となるはずだったこの試合。イーグル友田との一戦が安達の運命を大きく変える。安達はイーグル友田のパンチに倒れ、意識不明の状態となり生死をさまよう。奇跡的に回復したものの、待っていたのは「リングには二度と立てない」という厳しい言葉だった。俺にはこれしかないのにともがき苦しむ安達。そんな安達が次に目指したのは自分のジムを持つことだった。だがそれも思うようには行かず…。

pic赤井英和はどついたるねん出演にあたって、ボクサー時代と同じ減量をして、ウエイトをキープしつつ撮影に望んだ。減量で苦しむ安達の姿はリアルな赤井の苦しみである。汗も血もゲロも、すべての苦しみはかつての赤井が体験してきたこと。(全部本物です!)

映画の冒頭で安達はイーグル友田に敗れて意識を失うが、なんとイーグル友田役で出演しているのが実際に赤井を倒した大和田正春!もう現実に見ることは叶わなかった試合です。震えます。

赤井は映画『どついたるねん』の中で俳優としての新しいスタートを切った。過去の自分と身を削って対面し、この映画で「ボクサー、赤井英和」をもっともっと大きくして、新しい場所へ向かった。かっこよすぎます。

(リンナ)



このページのトップへ

魂萌え!
(2006年 日本 125分)
pic 2007年5月26日から6月1日まで上映 ■監督・脚本 阪本順治
■原作 桐野夏生 『魂萌え!』(毎日新聞社刊)
■出演 風吹ジュン/田中哲司/常盤貴子/加藤治子/豊川悦司

あなたの妻でいて、幸せでした。
今、私のもうひとつの人生が、始まります。

定年を迎えた夫・隆之と妻・敏子は穏やかな日々を暮らしていたが、夫は心臓発作により急死してしまう。定年からわずか3年後のことだった。葬儀の夜、ふと背広に入ったままになっていた夫の携帯が鳴った。それは敏子の知らない女性からの着信だった。この夜を境に敏子の人生は急激に動きはじめる…。

pic最高傑作との呼び声も高い桐野夏生原作同名小説の映画化。世間という荒波に揉まれることなく平穏に暮らしてきた専業主婦が、夫の裏切りやワガママばかりの息子に翻弄されながらも、強く自らの道を切り開こうというその姿に数多くの共感を集めた。

監督・脚本は『亡国のイージス』の阪本順治。原作の世界を美しく繊細に、ときに力強く描き出した。主演・敏子役には風吹ジュン。夫の愛人役は三田佳子。その他脇を固める加藤治子、常盤貴子ら女性陣、寺尾聰、豊川悦司ら男性陣ともに実力派揃いで見ごたえ十分のキャスティングだ。

考えてみると、少年少女の成長を描いた作品は数多く思い浮かべることができるが、本作品のように熟年の成長を追った物語はそれほど思い当たる節はない。年月を重ねてきた人間は、それに伴ない十分に成長していて当然だろう、といった一般認識によるものだろうか。亀の甲よりなんとやら、という諺もあるように、確かにそのような認識はあるに違いない。

picだが敏子はこう言う。「年齢を経れば経るほど成熟し、迷いのない人生を送ることができる、と漠然と信じていたが、今が最も思い惑っている気がする。人生は、ままならない。」(原作より)

年齢を重ねただけ成熟していけるかというと、そうも簡単にはいかないのが現実だ。そう、人生はままならないものなのだ。

なお、本作品のラストは当劇場・早稲田松竹にて撮影が行われている。
様々な体験を経て、敏子はどのような境地にたどり着いたのか。
彼女が紡ぎ出した人生の真実を、当劇場の客席で追体験してみてはどうだろうか?

(緒本)




このページのトップへ