組織犯罪や貧困の撲滅のために力を尽くした、アメリカの希望 ロバート・F・ケネディ=”ボビー”
独裁政権打倒のため戦い続けた、ラテンアメリカの英雄 チェ・ゲバラ。
主義・主張は違えども、ともに時代が求めた指導者である。
土地柄あるいは時勢によって、求められる指導者像や政治体制は異なるので、
単純に二人の残した足跡を並べてその是非を語ることは難しいが、
確かに言える点を挙げるならば、
苦しみの中にある人々を救おうとして立ち上がった二人の姿は、
思想・信条を越えて美しかった、ということになろう。
二人が優れた指導者として後世に名を残すこととなった所以は、
その献身的な姿勢のみならず、人を惹き付ける演説術によるところもまた大きい。
「I have a dream.」ではじまるキング牧師のあまりに有名な演説と同様に、
ボビーとゲバラの声も数多くの人々の心に響くものであったという。
両作品の劇中においてもその一端を垣間見ることができる。
今でいえば当たり前のように思えることがなかなか実現しない混迷の時代、
リーダーシップをとり現状を打破しようとする人間の言葉には、
それを必ず実現させようという強い意志がこもっていたように思う。
時は流れ21世紀。
さて、現代の指導者たちの言葉はどうだろうか。
モーターサイクル・ダイアリーズ
THE MORTORCYCLE DIARIES
(2003年 イギリス/アメリカ 127分)
2007年8月18日から8月24日まで上映
■監督 ウォルター・サレス
■原作 エルネスト・チェ・ゲバラ『モーターサイクル南米旅行日記』
■脚本 ホセ・リベーラ
■出演 ガエル・ガルシア・ベルナル/ロドリゴ・デ・ラ・セルナ/ミア・マエストロ/メルセデス・モラーン
■オフィシャル・サイト
http://www.kadokawa-pictures.co.jp/official/m_cycle_diaries/
南米放浪の旅は予想以上に僕を変えた。
少なくとも、もう昔の僕ではなくなった。
1952年。23歳の医学生エルネストは、7歳年上の友人アルベルトと共に南米大陸縦断の旅に出た。ブエノスアイレスを出発後、パタゴニアを抜けて6,000メートルのアンデスを越え、海岸線を北上し南米の北端へ。10,000キロにも及ぶ長く険しい旅路だ。旅の資金など無いに等しい。頼みの綱は、'39年式ノートン500・ポデローサ号のみ!
しかし困ったことに、ポデローサ号は道中甚大な損傷を受け、走行不能になってしまう。やむなくヒッチハイクや徒歩で旅を続けることになってしまった二人。二人は行く先々の人々との触れ合いを通じて、バイクで走っていては気付きえぬ南米社会の実態を目の当たりにしていくのだった。
目を背け、耳を塞ぎたくなる現実――格差。搾取。差別。
ガールフレンドのチチーナから「マイアミで水着を買ってきて」と握らされた大金15米ドル札の価値も、自らのために用意しておいた喘息の薬の存在さえも、苦しむ人々を前にしてはいつしか意味を失っていた…
キューバ革命の主導者、チェ・ゲバラ若き日の南米旅行日記。ラテンアメリカの英雄と呼ばれる人物を主人公にしながらも、当作品はあくまでエルネストという「一人の青年」の爽やかな成長譚に仕上がっている。ともすれば政治的意味合いを帯びるデリケートな題材なだけに、監督ウォルター・サレス、制作総指揮ロバート・レッドフォードの手腕は見事の一言だ。
主演は『天国の口、終りの楽園。』『アモーレス・ペロス』のガエル・ガルシア・ベルナル。ラテンアメリカの真実を真っ直ぐに見据える力強い眼差しに、時折見せる愛くるしい笑顔に、誰もが虜になるに違いない。
ボビー
BOBBY
(2006年 アメリカ 120分
)
2007年8月18日から8月24日まで上映
■監督・脚本 エミリオ・エステヴェス
■出演 アンソニー・ホプキンス/シャロン・ストーン/ジョイ・ブライアント/ヘレン・ハント/ウィリアム・H・メイシー/イライジャ・ウッド
1968年、アメリカ。1月21日、ベトナム戦争で最も熾烈を極めたケサン攻防戦が始まる。4月4日 、公民権運動指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニア暗殺。6月5日、アメリカの希望 ロバート・F・ケネディ=”ボビー” 暗殺。
貧困の撲滅や人権問題に積極的に取り組むと同時に、戦争の段階的拡大を阻止を提唱し、大統領選出馬を表明したボビーは、公民権運動と反戦気運が盛り上がりつつあるアメリカでひときわ輝く希望の光だった。
6月4日、カリフォルニア州の予備選挙で見事勝利し、民主党大統領候補に一番乗りをあげた彼は、翌5日、LAアンバサダーホテルの会場で勝利スピーチを行う。
世界の運命が、その時変わった。
事件当日、アンバサダーホテルに集った様々な人種、年齢、階層、境遇に属する人々。
ボビーという太陽が消える時、彼らは何を見たのか――
監督・脚本エミリオ・エステヴェスの熱意により22人のオールスター・キャストが集結。敢えてボビー役を立てることなく、本人の映像を効果的に使い、フィクションと融合させる演出は圧巻だ。
(タカ)