ぼくの瞳の光
LUCE DEI MIEI OCCHI
(2001年 イタリア 120分)
2005年11月12日から11月18日まで上映
■監督・脚本 ジュゼッペ・ピッチョーニ
■脚本 ウンベルト・コンタレッロ/リンダ・フェッリ
■出演 ルイジ・ロ・カーショ/サンドラ・チェッカレッリ/シルヴィオ・オルランド/バルバラ・ヴァランテ
■2001年ヴェネチア国際映画祭男優賞・女優賞受賞
(C)樂舎2001年、「日本におけるイタリア年」をきっかけに有楽町朝日ホールで始まったイタリア映画祭は、年々観客の支持も増え、昨年は6日間で1万人を超えるという、恒例のゴールデンウィーク行事となりました。過去5回で上映された作品数は、52本。マルコ・ベロッキオやタヴィアーニ兄弟、プーピ・アヴァーティなどの巨匠の未公開作品から、いわゆる“ナンニ・モレッティ以降“の若手監督達の作品までもが紹介されてきました。
ユーロスペースでかけられていた『チャオ!チネマ・イタリアーノ イタリア映画祭傑作選』は、このイタリア映画祭の2001年から2003年までの上映作品から、とりわけレベルが高く、観客の評判が良かった作品を選んだ特集上映でした。早稲田松竹ではさらにその中から2本をセレクト。“イタリア映画祭傑作選”のさらなる傑作選。これはもう、ベストオブベストみたいなもんです。
──いちばん最後に観たイタリア映画は何ですか?今週の二本を観れば、確実にイタリア映画の現在がわかります。
ハイヤー運転手アントニオは、真面目で孤独な青年。責任感があり、時間に正確、多くは語らず、何も聞かず、よく働き、SF小説を愛する。ある晩、飛び出してきた少女リーザを轢きそうになったアントニオは、彼女の母マリアと知り合う。マリアは食料品店を経営しながら、女手一つで娘を育てていた。マリアに心惹かれたアントニオは、彼女に借金があることを知ると、彼女を助けようと、貸し主サヴェーリオの運転手を買ってでる。だがマリアはそんなことを知る由もなく、リーザとの生活を守ることに精一杯で、アントニオに心を開こうとしない。
ロマンティストで優しい、ひたすら尽くす男と「男は信じられない」とばかりにそれを邪険に扱う女(でもその一方で自分が好きな男は必死で追ったりするんだな)。各々が抱える孤独や愛、苦しみを丁寧に綴った大人のドラマ。
偶然にも今回上映の二本に主演のルイジ・ロ・カーショが、『ペッピーノの百歩』で演じた、理想と情熱に駆られて生き急ぐ主人公とはうって変わって、静かに愛を秘めた真面目で一途な青年を演じています。
(mana)
ペッピーノの百歩
I CENTO PASSI
(2000年 イタリア 104分)
2005年11月12日から11月18日まで上映
■監督・脚本 マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(『輝ける青春』)
■脚本 クラウディオ・ファーヴァ/モニカ・ザペッリ
■出演 ルイジ・ロ・カーショ/ルイジ・マリア・ブッルアーノ/ルチア・サルド/パオロ・ブリグリア/トニー・スペランデオ
■2000年ヴェネチア国際映画祭脚本賞受賞
(C)樂舎ペッピーノは、マフィアが支配するシチリアのチニシという小さな街に生まれ育つ。マフィアのボスであるターノ家は、彼らの家から百歩しか離れていないところにあった。マフィアの一員であるペッピーノの父親は賢い息子に対し、いつかはターノのようになってほしいと願っていた。
ペッピーノが青年となった1960年代、各地で同世代の若者たちが伝統的価値観を拒絶し、反体制運動が起こり始めた。ペッピーノも父親に逆らい、仲間たちと共に反マフィア運動を行う。そして、マフィアとの緊張は日に日に高まってゆく…。
主人公のジュゼッペ(=ペッピーノ)・インパスタートは実在の人物で1978年、30歳の若さで命を落としている。マフィアという存在は、シチリア島が発祥の地といわれていて、約200年の歴史をもっているそうだ。その影響力は絶大で、イタリアの政治、経済社会に深く関わっているのだという。地域に深く根づき、父親と叔父がその一員であったことで、ペッピーノ自身も幼少時代、意識することなく、マフィアという存在を受け入れていただろう。
監督のマルコ・トゥリオ・ジョルダーナは「“マフィアは株式会社ではなく、犯罪組織である”ということを明白にすることは、私にとってとても重要なことだった」と語っている。そしてまた、この映画はマフィアを非難するものですか?という問いに対し、「これは流れに逆らうものであって、誰かを非難するものではない」とも語っている。
この作品は、マフィア映画というものから連想されるような残忍さではなく、ペッピーノと父、家族に焦点をあてている。ドキュメンタリーのような質感の映像の中に、それが事実としてあったこと(ある程度の脚色はあると思うが)を、確認する。シチリアの小さな街で起こった出来事は、普段やり過ごしてしまいそうな、小さくて、でも大切なものを、おしえてくれるはずだ。
(ロバ)