木更津キャッツアイ 日本シリーズ
(2003年 日本 123分)
2005年7月9日から7月15日まで上映 ■監督 金子文紀
■脚本 宮藤官九郎
■出演 岡田准一/櫻井翔/酒井若菜/岡田義徳/佐藤隆太/塚本高史/安部サダヲ/山口智充/嶋大輔

余命半年を宣告されたぶっさんは死ぬほど元気だ。死の淵から突然甦って周囲の度肝を抜いてから半年後、21歳最後の夏をめいっぱい普通に生きようと、野球にビールに明け暮れるいつもと変わらない毎日。

そんなある日、木更津で大規模なロックフェスティバルが開催されることに。キャッツのメンバーもぶっさん作詞作曲のラブソングを新曲にひっさげ参加が決定。そんな中突然、みんなの前に死んだはずのオジーが現れ、キャッツたちは大騒ぎ。町中が盛り上がってきた頃、ぶっさんには人生最後の新しい恋が芽生えはじめ…。果してキャッツはロックフェスで新曲を披露することができるのか!?オジー復活の謎は!?そしてぶっさんの恋の行方は!?いったいどこに向かってスケールアップしていくのか、ぶっさん最後の夏はおだやかどころか、寿命を縮めるのに自信満々になれるほど、波乱万丈に満ちていた。

伝説のドラマ『木更津キャッツアイ』奇跡の映画化!である。ぶっさんを中心に、木更津の元高校野球部の仲間バンビ、アニ、マスター、うっちーの5人組が昼は野球とバンド、夜はなぜか謎の怪盗団<木更津キャッツアイ>を結成し、ドタバタ騒動が巻き起こる。

目の前に「ひとりの仲間の死」が現実としてあるけれど、決して暗く湿っぽくならず、残された人生を“普通”に楽しむ、真剣なんだか適当なんだかわからない、5人のスタンスが魅力的。そんなこのドラマ『木更津キャッツアイ』は、2002年にTBS系列で全国放送された。脚本家の宮藤官九郎が生み出すオリジナリティに満ちた設定と脱力しきった世界観の中で、主人公たちは友情や恋愛そして親子の絆を大切に、築いてゆく。

熱狂的なファンを獲得したドラマだったが、視聴率は決してずば抜けたものではなっかった。だが、放映終了後から視聴者の口コミが爆発。関係者の強い願いと、世の中の盛り上がりを受け、TVの枠をこえて一気にスクリーンへ!と、ぶっさん同様、まさに奇跡のカム・バックである。

(ロバ)


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恋の門
(2004年 日本 114分)
pic 2005年3月26日から4月1日まで上映 ■監督・脚本 松尾スズキ
■原作 羽生生純 『恋の門』
■アニメーション演出・メカニックデザイン 庵野秀明

■出演 松田龍平/酒井若菜/松尾スズキ/忌野清志郎/小島聖/塚本晋也/尾見としのり/田辺誠一/片桐はいり/市川染五郎

★本編はカラーです。

どこぞの芸能人がブラウン管の中で安売りしている、「恋」と「変」を書き間違えたなんていうエピソードは全く笑うに笑えないが、元来「恋」なんてものは「変」で当然なのであって、「変」でなければ「恋」でないとさえ言える。つまり何が言いたいのかいえば、「若者よただ狂え(by鈴木清順)」なのである。鈴木師の影響がどれ程かは知らないが、こちらのスズキ氏、つまり松尾氏もまた大いに「狂って」いることは世間に明らかなところである。そして氏の初監督作品もまたまた、我々の期待を裏切りっぱなしの「狂った」ジェットコースター恋愛映画となった。

pic石で漫画を書く自称「漫画芸術家」・蒼木門。貧乏で食えず、しかも童貞。そんな彼が偶然に(運命?)出逢った証恋乃。昼はOL、帰宅後はコスプレーヤーと化す恋乃は、「ノイコ」名義でこれまでに漫画の同人誌を17冊自費出版し、1千万円程の売上を誇る。漫画という共通項を持ち、互いに惹かれ合う二人。だが、「芸術」と「オタク」という相反する感性がぶつかりあい、惹かれあうと同時に反撥しあうことに。

互いを良く知るきっかけに、と恋乃の提案でアニメソング界の人気者・安部セイキ様のファンの集い一泊ツアーに参加することになった門。しかし貧乏な彼には先立つものがない。費用を稼ぐ為に、バイト募集の張り紙が貼られた漫画バーへ行く。オーナーの毬藻田はかつて少年誌の売れっ子の漫画家であった。

pic門にとっては念願の「一発ツアー」であったが、他の参加者達の異様なテンションにノレないで泥酔してしまう。それでもなんとかいい雰囲気には持ち込んだものの、肝心なところで恋乃の顔にゲロをかけてしまう。翌朝、恋乃が起きると「旅に出ます」と書かれた門の書きおきだけが残っていた。

原作は、雑誌連載が1999年にスタート、後に単行本化もされ各界に熱狂的なファンを作った羽生生純の『恋の門』。主役の蒼木門には、『御法度』でデビュー以来『青い春』『ナインソウルズ』と話題作に出演し次代の日本映画をしょってたつ松田龍平。証恋乃にはドラマやCM、映画『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』で注目を集める酒井若菜。映画化に際して膨らませた毬藻田を松尾スズキが熱演。

小島聖、塚本晋也、小日向文世、片桐はいりといった一癖も二癖もある実力派が脇を固める。さらに、メカニックデザインと映画中アニメーションを『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明。撮影は『きょうのできごと』の福本淳。テーマソングをアニメソング界の帝王・影山ヒロノブが叫べば、主題歌『月に咲く花のようになるの』をサンボマスターが男気たっぷりに唄いあげる。その他スタッフの隅々まで松尾人脈の大放出。

円覚寺の山門の前で右往左往していたのは漱石の『門』の主人公・宗助であったろうか。禅寺にて「父母未生以前本来の面目」とは何かを考えるのも一計。二時間弱を映画館で過ごすのもまた一計。

恋に狂って、愛に死ぬ?否、生き延びろ、サバイバル!『恋の門』は若者のみならず、愚かしくも切ない恋のバトルに生きる全ての者に必見の映画である。

(sicky)



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