フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白
THE FOG OF WAR: ELEVEN LESSONS FROM THE LIFE OF ROBERT S.MCNAMARA
(2003年アメリカ 107分)
2005年2月12日から2月18日まで上映
■監督・製作 エロール・モリス
■出演 ロバート・ストレンジ・マクナマラ/ジョン・F・ケネディ/フィデル・カストロ
■2003年アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞/2003年LA批評家協会賞ドキュメンタリー賞受賞ほか
(C)2003 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC.「アメリカは全能なのか?そんなはずはない」
ロバート・S(ストレンジ)・マクナマラ。ハーバード大学院卒、フォード自動車会社社長、ケネディとジョンソン政権下で国防長官、そして世界銀行総裁をつとめ、20世紀アメリカ屈指のエリートとして、政界、経済界を牛耳った「切れ者」だ。『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』は、マクナマラのインタビューを中心に、「戦争の世紀」と呼ばれた20世紀を総決算する、ドキュメンタリーである。
「私は生涯を通じ、戦争の一部だった」
マクナマラの華麗なキャリア、それは東京大空襲、キューバ・ミサイル危機、ベトナム戦争と、20世紀に起きた多くの戦争に支えられていた。マクナマラは自分の体験を“フォッグ・オブ・ウォー=戦争の霧”だと語る。一度戦争の危機が起こると、賢明な政治家であっても、霧につつまれたように混乱してゆくというのだ。「アメリカは全能ではない」「人類は殺戮や紛争についてもっと真剣に考えなければならない。21世紀にも、同じことを繰り返したいのか?」マクナマラは「11の教訓」=レッスンと共に、自らの半生を語り始める…。
監督、エロール・モリスは、自分の作品について語る。マクナマラが話していることは、多くがいま現在起こっている事柄と関連している。問題は何も変わっていない。そこにはシュールな感覚、我々が過去から何も学んでいないという感覚が生まれる。つまりこの作品では、40年、50年、60年と、時が経つにつれ過去となってしまう歴史的出来事、しかも実は「現在」とつながっている出来事について、映画を作れるのだと証明できたと思う。そのことが私にはうれしい。
戦争は戦争を終わらせはしない。解決されない争いを残すだけ、すでに存在する未解決の争いを助長するだけだ。戦争は次なる戦争を導くだけである。
(ロバ)
華氏911
FAHRENHEIT 9/11
(2004年 アメリカ 112分)
2005年2月12日から2月18日まで上映
■監督・製作・脚本・出演 マイケル・ムーア
■出演 ジョージ・W・ブッシュ
■2004年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞/2004年NY批評家協会賞ドキュメンタリー賞受賞/2004年ラジー賞ワースト主演男優賞受賞(ジョージ・W・ブッシュ)ほか
(C)ギャガ・コミュニケーションズ2003年3月、『ボウリング・フォー・コロンバイン』がアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞した際、授賞式においてマイケル・ムーア監督は「私たちは戦争に反対です。ブッシュ、恥を知れ!」とコメントし大ブーイングを浴びた。それから一年、ムーアはそのコメントが嘘偽りない本心からのものであることを本作にて証明した。
ブッシュが大統領に当選した大統領選の、フロリダでの選挙疑惑、9.11の悲劇、ブッシュ家とビンラディン一族との密接な関係、そしてイラク戦争。この作品は、この数年間に起こったセンセーショナルな出来事に対する、ブッシュ政権関係者の言動をもとに、現在のアメリカに警鐘を鳴らしながら展開していく。
全体を通してのテーマはブッシュ批判。これを「偏りすぎている」と判断する声も多く聞かれたが、本作はあくまでドキュメンタリー作品。そもそもドキュメンタリーとは作家の信じる答を描くもの。M・ムーア自身はこのような答を出したが、それをどのように感じ取るかは観客に委ねられている。そのための情報提供も怠らない。巧みな構成で、監督の意見と共に観客へ判断材料も与えてくれる。良くも悪くも、今までとは違ったアメリカが見えてくるかもしれない。そういった意味でも一見の価値があるだろう。
監督マイケル・ムーアVS主演第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュ。世紀の戦いの判定を下すのは我々である。
(マコト)