ベルリン・フィルと子どもたち
RHYTHM IS IT!
(2004年 ドイツ 105分)
2005年12月10日から12月16日まで上映
■監督 トマス・グルベ / エンリケ・サンチェス・ランチ
■音楽 イゴール・ストラヴィンスキー『春の祭典』
■出演 サイモン・ラトル(指揮) / ロイストン・マルドゥーム(ダンス・ユナイテッド振付師) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
■オフィシャルサイト http://www.cetera.co.jp/library/bp.html
(C)2004 BOOMTOWNMEDIA「芸術はぜいたく品ではなく必需品だ。空気や水と同じように生きるために必要だ」(サー・サイモン・ラトル)
ベルリンフィル・オーケストラ(以下BPO)の芸術監督サー・サイモン・ラトルの呼びかけで2003年に始まった「教育プログラム」。その一環として「音楽を通じて子ども達の持つ可能性を延ばす手助けを」する「ダンスプロジェクト」が始動した。ベルリン在住の、様々な文化的背景を持った、様々な人種の8歳から20歳代前半の子どもたち250人を集め、BPOの演奏で『春の祭典』を踊るという試みだ。本作は、このプロジェクトの6週間に及ぶ練習、リハーサル、そして本番を収めたドキュメンタリー・フィルムである。
「ここにいる中で誰一人としてダメな人間はいない。…君たちにはパワーがあるんだ」(ロイストン・マルドゥーム)
はじめはクラシックには何の興味もなかった子ども達を直接指導するのは、今回のために招聘された振付師のルイストン・マルドゥーム。長いキャリアの中でヨーロッパ内外の様々なプロジェクトを手掛けてきたマルドゥームが、厳しくも温かく、子ども達を尊重しながら彼らの力を引き出していく。子ども達もマルドゥームに応えるかのように徐々に自らを解放し、ダンスにも真剣に取り組み始め、最後には見違えるように生き生きと舞う。
原題の「RHYTHM IS IT」に現れているように、音楽への、ダンスへの、そして自己への既成概念を取り払い、ただひたすらに音に乗り、リズムを刻む姿は、観る者の心を打つ。そして、その鼓動の高鳴りは貴方の中で新たなリズムを刻むことになるに違いない。
※このプロジェクトは、その後も2004年は『ダフニスとクロエ』のバレエ、2005年はストラヴィンスキーの『火の鳥』を取り上げ、どちらも大成功を収めた。今後も一年に一回の予定で行なわれていくという。
(Sicky)
コーラス
LES CHORISTES
(2004年 フランス 97分)
2005年12月10日から12月16日まで上映
■監督・脚本 クリストフ・バラティエ(『リュミエールの子供たち』)
■製作・出演 ジャック・ペラン(『ニュー・シネマ・パラダイス』)
■脚本 フィリップ・ロペス=キュルヴァル
■音楽 ブリュノ・クーレ / クリストフ・バラティエ
■合唱 サン・マルク少年少女合唱団
■出演 ジェラール・ジュニョ/フランソワ・ベルレアン/ジャン=バティスト・モニエ/マリー・ビュネル/カド・メラッド
■2004年アカデミー賞外国語映画賞・歌曲賞ノミネート
■オフィシャルサイト http://www.herald.co.jp/official/chorus/index.shtml
1949年、戦後間もないフランスの片田舎。音楽教師のマチューは、ある寄宿学校に赴任する。“池の底”という名の、この寄宿学校には親をなくした子供、貧しさや、素行に問題があるために親元を離れた子供が集団生活をしていた。
「土曜日に迎えに行くわ」と言った、ママの言葉を信じて、寄宿学校の門の前で一日中待っている、小さなペピノ。学校一の問題児、ピエール。誰も会いに来てくれない面会日。帰る家のない夏休み。そんな子供たちを厳しくしばりつける校長先生。暗く、悲しい瞳をした子供たち。
第二次世界大戦直後であることから、人々がそれぞれの心に傷を持ち、大人たちも例外ではない。優先すべきことはたくさんあり、そのことから、子供たちに目を向けられないという時代背景が、この物語の中にはある。誰もが痛みの中にあり、それでも生きている。しかし、生きることは、絶望ではない。
マチューは赴任早々、子供たちのいたずらに手を焼くことになる。しかし、子供たちは、いたずらをすることでしか、淋しさを紛らわすことができなかったのだ。そんな、子供たちの心を理解し、マチューは彼らを叱ることをせず、「あること」を教えようと思いつく。それは彼らに、歌を教えることだった。
この作品で何よりも惹きつけられてしまうのは、ピエールを演じた、ジャン=バティスト・モニエの歌声だ。言葉にできない、たくさんの感情。その曖昧なはずのものがストレートに響いてくる。
行き場を失った、子どもたちの想い。しかし、表現することで、淋しさを上回る喜びを知ってゆく。心に染みわたる、その歌声は観ている者の心にも、しっかりと残ってゆくだろう。
(ロバ)